「塀の中のジュリアス・シーザー」を観てきました。
ストーリーは、
イタリアのローマ郊外にあるレビッビア刑務所の重警備棟では、服役囚たちによる演劇実習が行われている。所内にある劇場に一般の観客を招いて行う今年の出し物は、シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」に決定。そしてオーディションが始まり、麻薬売買で服役中のアルクーリや所内のベテラン俳優のレーガらが続々と集まって来る。
というお話です。
これって、ドキュメンタリーと言ってはいけないのかな。一応、監督が居て、色々指示しているのかも知れないけど、演じているのは、本当の服役囚達だし、結構、自由にならないという不具合というか、ストレスのようなものが、態度に表れていて、なんとも、暗いというか、既に、服役している時点で、シーザーの支配下にに居るという雰囲気になっているんでしょうね。

ジュリアス・シーザーは、統率力に優れていて、ローマを統一するほどの人だったのですが、有名なセリフ「ブルータス、お前もか!!」というので解るように、自分の部下に裏切られ、殺されるんです。でも、これ、シーザーの側から言えば、裏切られたということなんですけど、部下側から見れば、シーザーが無理な政治を強行したせいで、人民が苦しんでいるからということでの反逆なんです。シーザーは良かれと思ってやっていたのかもしれないけど、人民から見れば、受け入れられない事だったんですね。
でも、ブルータスたちは、シーザーを尊敬していて、裏切った自分達に対して、嫌悪を抱くというか、自分が許せないんです。尊敬していたシーザーを裏切るなんて、とんでもないことをしてしまったけど、でも、人民の為には仕方が無かった。でも、自分を許せないということなんです。
この話って、色々な罪を犯してしまった服役囚たちには、重なってくると思うんですよね。自分が生きるためには、仕方なく行ってしまった罪かも知れないけど、でも、罪は罪。人としての道を外してしまった自分を、自分でどう裁くのかということだと思うんです。とても深いことを心に抱きながら、彼らは、演劇に没頭して行きます。
観ていて、はっきりいって、退屈な場面が続くというか、ドキュメンタリータッチだし、同じことの繰り返しが多いので、眠くなりますが、彼等の演劇に対する気持ちが大きくなって、のめり込んで、自分の罪を悲しむ姿が、とてもグッとくるんです。それって、演劇の中の役だからなの?それとも、自分の罪に対しての懺悔なの?って思ってしまう。

単館系の、映像としては単調な映画ですが、その囚人の心の中を思うと、2時間の映画の中に、深い思いが詰まっているんだということがわかります。これからの彼等の人生に、この演劇が、大きな影響を与えて行くのであろうことが、映像を観ていれば解ってくると思うんです。

私は、この映画、単館系の単調な映画でも大丈夫な方にお薦めいたします。普通のシネコンとかの、全国ロードショー的な映画とは違うので、気をつけてください。でも、観てみると、服役囚とひと括りにして言ってしまうけど、それぞれに、思うところは違うし、誰もが、束縛されるのはイヤだと思っているんだなっていうことが伝わってきます。私は、個性的な映画が好きな方にのみお薦めしますので、もし、お時間があったら、観てみて下さいね。ぜひ、楽しんできてください。
・塀の中のジュリアス・シーザー@ぴあ映画生活
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