「東ベルリンから来た女」を観てきました。
ストーリーは、
1980年夏、医師のバルバラ(ニーナ・ホス)は東ベルリンの大病院からバルト海沿岸にある小さな町の病院に赴任する。西ドイツへの移住申請を却下され左遷された彼女は、上司のアンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)にも笑顔ひとつ見せず同僚とも打ち解けようとはしなかった。そんなある日、矯正収容所から逃げようとするも病気になってしまったステラ(ヤスナ・フリッツィー・バウアー)が運び込まれ……。
というお話です。
ドイツが、まだ、東と西に分かれていて、冷戦の時代だった頃のお話です。東側は、共産主義であり、西は資本主義ですね。東ドイツにいたバルバラは、西にいる恋人と暮らす為に、西ドイツへの移住を希望していて、申請を出したのですが却下され、西ドイツへ出て行こうとする裏切り者として警察からマークされる事となります。仕事も田舎町に左遷され、嫌がらせを受ける毎日。それでも、彼女は、西へなんとか出る手立てを探し続けます。
そんな彼女の前に、新しい職場でであった医師アンドレが現れます。彼は、根っからの医師であり、プロフェッショナルに徹しています。彼の腕が確実だということを認識した彼女は、アンドレに対してだけ、段々と心を開き始めます。
と、そんな風な話なのですが、全体的に、やっぱり硬い感じがありますね。その時代のドイツというものを表現する為に、なんとなく、人々の心が硬そうに見えるようにしているのかしら。光の捉え方など、とても美しいのに、どこかに暗さが残してあるような、そんな雰囲気の映画でした。
1980年というと、1989年にベルリンの壁崩壊だから、この9年後に自由になれたと思うんですよね。だから、きっと、この1980年頃から、住民たちの窮屈さというか、このままではイケないという気持ちが膨らんでいったのかも知れません。そんな事を思うと、彼女の決断は、正解だったのか、間違いだったのか、考えてしまいます。この後、しあわせになって欲しいな。
バルバラは、最初から最後まで、ほとんど笑わず、堅い表情で、あまり好感を持てる雰囲気ではないのですが、医者としての腕は素晴らしいもので、上司のアンドレに匹敵するほどの観察力を持ちます。腕は良くても、誰とも付き合おうとしないので、病院内でも、ちょっと孤立している感じなんです。
何人もの患者を診ていくうちに、段々と彼女の腕を病院の職員たちも認め始め、アンドレの助けも受けて、彼女は、少しづつ、その病院になじんで行きます。でも、心の中には、西への思いもあり、複雑な心の内を、彼女の色々な行動で、表現していました。
あまり派手な作品ではないので、ここら辺がすごく良いとか、面白いとか、感動したとか、騒いで観る映画ではなく、観た後に、思い出しながら、ああ、あそこの場面で心が変わったんだなとか、後から、フツフツと、その感動というか、思いが湧き上がってくるような作品でした。
私は、単館系の、暗いヨーロッパ作品も楽しめる方にはお薦めしますが、アクションやコメディーなど、キャッキャ楽しめる作品が好みの方には、ちょっと辛いかと思われます。眠くなっちゃうんじゃないかな。でも、ベルリンの壁の崩壊の少し前の状況が判るので、結構、歴史などを楽しむ方には良いかも知れません。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
・東ベルリンから来た女@ぴあ映画生活