今日は、「みなさん、さようなら」の完成披露試写会に行ってきました。今年初めての試写会です。
ストーリーは、
団地で暮らす12歳の少年・悟は“ある出来事“がきっかけで、一生、団地の中だけで暮らしていくことを決意する。彼は団地の中で目覚め、眠り、恋をして、友達を作り、働く。しかし、かつての友達は少しずつ減っていき、恋人までもが彼の前を去ろうとし……。
というお話です。
悟は、ある事件がきっかけで、団地の敷地から出て行くことが出来ません。出て行きたいと思っても、どうしても身体が動かないんです。精神的な傷を負ってしまって、団地の中に居れば問題が無いのですが、それ以外は無理になってしまいました。この映画は、そんな悟の20年近くを描いています。
悟は、とても素直で、まるで子供のまま大人になってしまったような人です。彼と一緒にいると、母性本能をくすぐられるというか、かまってあげないとかわいそうっていう感じなんですよ。本当にかわいいの。でもね、最初の頃は良いけど、女性って、どうしても最終的に依存出来る人が楽になってしまうんですよね。まとわり付いてくる男より、先を歩いてくれる人の方に惹かれてしまう、そんな女性って多いんです。だから、悟くんは、ステキだけど、最終的に疲れるんです。

団地から出れないので、小学校の同級生で団地に住んでいる人のみが、悟の友達で、彼女も同級生から探して、付き合い始めるんです。私なんて、小学校の同級生の顔なんて、ひとりも覚えていないけど、そういう人も居るんですね。悟の彼女になるのは子供の頃から良く知っている女性なんだけど・・・。展開が面白いですよ。ここは、観てのお楽しみです。子供のままの男と、どんどん成長して大人になっていく女との違いを楽しんでくださいね。

悟の友達で、一人、中学校でいじめに合い、同じように、段々と壊れて言ってしまう少年が居ます。永山くんが演じているのですが、いじめって、本当に一人の人間を壊してしまう、すごい暴力なんです。観ていて解かるのですが、自分では、必死で軌道修正して、普通にしようと思っていると思うんですが、周りの眼や、ちょっとした言葉で、恐怖を覚えてしまうんですね。虐めている方にとっては、中学でのちょっとした出来事なんだけど、虐められている方にとっては、傷口が塞がる事が無い、深い傷を負ってしまっているのです。もし、ちょっと虐めてしまったら、こっそり近寄って、”ごめんね。”と一言誤りましょう。その一言で、少しは傷が塞がるかも知れません。ごめんなさいって言う言葉は、ステキな薬になります。この言葉を素直に言えるのは、日本人くらいなんですよ。そんな素晴らしい文化を持ったことを喜びましょう。

悟の話に戻りますが、悟の母親(大塚さん)は、悟が団地から出れなくなってしまった時、もちろん悩んだのだと思いますが、いつも”大丈夫。団地でも生きていけるわ。”と明るく話します。悟という人間は、普通に”学校に行け!”とか、”病院に入れ。”という親だったら、出来上がらなかったと思います。彼女のような、深い愛で息子を見守るという母親だったからこそ、こんなに情が厚くて、人を守りたいという、まるでヒーローのような人間が出来上がったのではないかと思いました。

濱田くんが、13歳から30歳まで演じたというところばかりが注目されていますが、この映画は、誰でも当てはまるんじゃないかな。悟は、団地という所から出れないんだけど、私たちは、自分の中にこもっていて、心を許して人と交わるということが少なくなっているでしょ。みんな、自分という団地の中で、自分の中の友達を相手に暮らしている感じですよね。でも、いつの日か、そこから出て、外の世界と交わることが楽しい事だと確認出来たら、また新しい道が開けるのだと思います。みんな、団地から出て行かなくちゃね。

この映画、噛めば噛むほど楽しめる映画だと思います。考えれば考えるほど、深いし、楽しいし、人間って、愛おしいなって思える作品だと思いました。私は、すごくお薦めしたい作品です。この冬、ぜひ、観て欲しい1本かな。団地という箱の中、自分という殻の中、どこに居ても、自分は自分だし、一歩踏み出せば、新しい道が見えてくる。その一歩は、恐くて恐くて辛いけど、もし、踏み出せれば、新しい自分が見つかります。急ぐ必要はありません。時期を待って、出来る時にすれば良いんです。そんな事を教えてくれる、ステキな温かい映画です。ぜひ、楽しんでくださいね。
