東京フィルメックスにて、「サイの季節」を観ました。この作品は、今年のフィルメックスのクロージング作品です。
ストーリーは、
実在するクルド人詩人サデク・カマンガルをモデルとする作品。詩人サヘルはイスラム革命中に反革命的な詩を発表したという理由で逮捕され、監獄に送られる。サヘルの妻ミナは夫の釈放を待ち望むが、やがて夫は獄中で死んだと知らされ、新しい生活を始める。実際には生きていたサヘルは30年後に釈放され、ミナの行方を探すが。
というお話です。
イスラム革命の影響で、逮捕されてしまった詩人サヘル。それまでは、詩人として成功し、軍の有力者の娘のミナと恋愛し、しあわせな結婚をしていたのに、革命によって、すべてを奪われ、その生活が一変してしまう。今までは、支配する側だったのに、今度は支配される側。拘束され、妻まで奪われ、どん底に突き落とされます。
情勢が不安定な国だと、このように、立場の逆転が起きるなど、酷い話が結構あるのでしょうね。恐ろしいです。昨日まで使用人だったのに、今日から支配者になっていたりする訳でしょ。どんな立場でも、人間として接していれば、それほど恨まれる事は無いけど、恋愛感情が混ざったりしてしまうと、どうしても恨まれてしまいますよね。何故、これほどに嫌がらせを受けなければいけないのかと思ってしまうけど、相手にとっては恋敵だったりすれば、そりゃ、恨みつらみが山ほどありますよね。
まったく身に覚えが無いことで投獄され、長い時間、妻と引き離され、死んだも同然で外に出されても、何をして良いのか解りませんよね。30年という月日は、世界を変えてしまうのに、自分だけは、30年前のままの感覚で出てくるんですから、その世界に馴染めないし、30年前の思いを胸に抱いたまま、前にも後ろにも動く事が出来ない。
30年前に引き離された妻を捜して、見つけるのですが、彼女は、30年という時代を過ごしているし、夫は死んだと聞かされ、ある男に騙されて、新しい結婚をしているんです。革命の混乱の中、革命軍に関わった人間は、自分達の好きなように世論を動かし、望みを叶えていて、一般の人間にとっては、革命と言いながらも、ただ、上に立つ人間が変わっただけで、何も革命になっていないんですよね。酷い状態でした。
革命により、人生を狂わされてしまった詩人サヘルと妻のミナ。本当に、悲劇としか言いようのない内容でした。日本に居ると、革命とかって、まったくの未知の世界なので、理解しがたいですよね。その上、この映画、とっても抽象的な描き方がしてあるので、とても解りにくいと思いました。
ハッキリ、決着が付くとも付かないともなっていないので、あまり一般的な映画としては、受け入れられないのではないかと思います。結構、有名な俳優も出ているのですが、なんとも、難しくて、途中で、眠くなってしまいました。
この映画、日本で公開はされるのかなぁ。とても独特なので、大きく公開される事は無いかも知れません。モニカ・ベルッチは、とても美しいので、そこは観る価値があると思いますが、内容が、眠くなるような感じなので、なんとも、お薦めして良いのか、悩みます。まぁ、もし、DVDなどで観ることがあったら、革命と言いながらも、何もなっていないことを、確認してみてください。
【東京フィルメックス】「サイの季節」
http://filmex.net/2012/ss02.html