今日は、舞台を観に行ってきました。井上ひさしさんの生誕77フェスティバル作品の「日の浦姫物語」です。
ストーリーは、
薄汚い説教聖と赤子をおぶった三味線女が、「日の浦姫物語」なる説教を語り出す。
平安時代の奥州・米田庄。美しく仲の良い双子、稲若と日の浦姫は、十五才となった夏のある日に、禁忌を犯してしまう…。たった一度の交わりで子を身籠る日の浦。叔父の宗親は恐ろしい事実を知り、日の浦の身を引き取る。都に遣られた稲若は、道中の事故で死んでしまう。日の浦は美しい男の子を産んだが、赤子を小舟に乗せ、泣く泣く海に流した。手紙を持たせ、運命を神と仏に預けて…。

十八年の時が流れた。孤児・魚名は、両親を探す旅の途中、日の浦が棟梁となった米田庄に立ち寄った。そこで、庄と日の浦の危機を救った魚名は、日の浦に恋をする。稲若への思いから独身を貫いてきた日の浦も、魚名に惹かれ、二人は夫婦となり子を授かった。しかし…魚名が大事にする手紙を見つけた日の浦は、魚名が自分の子だったと知る。
混乱の中、自らの目を突く日の浦。自分の生まれを知った魚名も、母を母と見抜けず、妻とした己を罰して目を突く。二人は米田庄から別れ別れに出て行った。
そして日はめぐり、また十八年が経ち・・・。
というお話です。(長い説明でゴメンナサイ。)

このお話は、グレゴリウス聖歌の制定者・教皇グレゴリウス一世の一生から考えられたものだそうです。井上ひさしさんは、子供の頃、このグレゴリウスの一生の話を聞き、衝撃を受け、それを日の浦姫物語として書いたのだそうです。最初は間違いを起こし、その後も知らずに近親相姦を続けてしまう。そんな悲劇があるのだろうかと驚いたそうですが、考えて観ると、日本の歴史には、近親相姦が山ほどあり、それに気がつかなかった自分に、またも驚いたそうです。
日の浦姫は、双子の兄を愛してしまい、一度の過ちで、子供を宿してしまいます。自分たちでも、兄妹での交わりなど神に背く行為だとわかっていても、どうしようもなく惹かれてしまったふたり。その罪の重さから、二人は別れさせられ、その後、兄は死んでしまう。どうしようもなく惹かれたのは解るけど、行為をガマン出来なかったのも解るけど、子供を産んじゃダメだよね。遺伝子異常が起きる確立が極端に高いし、社会から近親相姦の子供というだけで疎外されてしまう。

近親相姦の子供ということを隠す為に、子供を捨てることになるのですが、またも運命のイタズラで、子供が日の浦姫の近くに現れてしまいます。神様は、どこまで惨酷なんでしょう。まぁ、子供を海に流しただけだから、たとえば汐留で流したらお台場で拾われちゃうよね。そりゃ、近いわ。(笑)
で、今度は、兄との間の子供と近親相姦して、子供を孕んでしまうんです。普通なら、この時点で、お腹の子は、遺伝子異常で流産するはずなんだけど。いくらなんでも、それだけ血が濃ければ、身体が拒否すると思うんですけどね。恐ろしい話だ。
私、ひとりっ子なので、兄妹や姉弟で、恋愛感情が生まれてしまうという事が理解出来ないのですが、そういうものなのでしょうか。母息子の近親相姦は、実は、仕事上で、何度か出会ったことがあります。どうも、エリート一族(学歴が高い一族)に多いような気がしたのですが・・・。セレブは成り上がりが多いので、エリートとは違います。(笑)息子を父親と同じようなエリートに育てるために、母親が過剰に世話を焼いていて、”全て”の面で世話を焼いてしまうのです。ちょっと驚きました。でも、日の浦姫は、親子と解っていた訳ではないから、この話とは違いますね。スミマセン。

井上ひさしさんの原作なので、内容はキツイことを描いていますが、とても面白くて笑ってしまうんです。どうして、こんなに笑わせてくれるのかしら。本当に楽しかったです。深く暗い血の交わりの話なのですが、真剣に話せば話すほど、面白くなっていってしまうんです。この楽しさは、観てもらわないと分からないと思う。
大竹さんと藤原さんが主演で、周りが、すごいベテランの方ばかりなので、安心して観ていられます。すべて舞台に任せ、自分は、ただ、舞台の中の世界を傍観していれば良い。脳に、直接取り入れていけば良いので、疲れないですね。スポンジが水を吸うように、舞台が自分に吸収されていきます。本当に楽しくて面白くて、感動でした。
やっぱり、良い役者さんや演出家、作家が関係している作品は、観ていて気持ちが良いです。内容に関係無く、何か、自分が吸収したという気持になれて、豊かになったような、そんな気分です。私、井上ひさしさんの作品は、結局、彼が生きている間には、観ることが出来なかったのですが、今、また再演され、観れることは、とても嬉しいです。これからも、ぜひ、井上先生の作品、観てみたいです。
日の浦姫物語、もし、チケットが手に入るようなら、ぜひ観てみてください。面白くて感動しますよ。
最後に、井上さんは、日本は近親相姦的社会だと言っています。島国でせまい国土に、大勢の人間、一つのことば、一つのぶんか、そして一つの象徴(天皇)、日本人は、それぞれが近親者のように似ていると感じていたようです。確かに、日本人の価値観は、似ていると思います。だからこそ、人から盗むとか、人を出し抜くとか、犯罪も少ないですよね。それは似ているから、相手の気持ちが理解出来る民族ということでしょ。人の事を思いやらない隣国とは大違い。身体の近親相姦はダメだけど、心の近親相姦は、良いのではないかと思う今日この頃です。
「日の浦姫物語」 シアターコクーン http://www.horipro.co.jp/usr/ticket/kouen.cgi?Detail=191
シアターガイドさんのサイトから、写真をお借りしてしまいました。もし、問題があるようでしたら、お知らせください。直ぐに消去させていただきます。m(__)m
演劇情報をいつも見ているサイトです。
シアターガイド http://www.theaterguide.co.jp/