東京国際映画祭のコンペティションで、「シージャック」を観ました。
ストーリーは、
インド洋沖でデンマークの商船がアフリカ系の海賊にジャックされる。本社は、遠く離れた海賊の心理を探りながら困難な交渉を始めるが、船員は徐々に疲弊していく…。多発する海賊事件を息の詰まるリアリズムで再現した、交渉術と人間心理を巡るサスペンスドラマ。
という内容です。
後少しで、港に着くという時に、海賊に乗り込まれ、人質になってしまった船員たち。そして、人質を救出する為に奮闘する会社役員たち。この対比がとても上手く描かれていて、手に汗握る内容でした。ソマリアの海賊がインド洋で暴れているようですが、その犠牲者たちのお話です。
まず、海賊に乗り込まれ、人質になってしまった船の料理人ミケルは、”沈黙シリーズ”のセガールのような最強の料理人ではなく、普通のコックさん。家族もあり、しあわせな暮らしをしていました。もうすぐ家族に会えると思ったら人質になり、いつ殺されるのか解らない毎日を過ごします。
コックという職業のため、隔離されずに、海賊の為に料理を作らされ、いつ帰れるのか、不安に思う日々。会社との交渉を海賊たちがしていることは知っているが、進展が無いことに苛立ちを覚えて、交渉人役に提案をしたり、懇願したりするのですが、海賊たちもプロなので、どうにも進みません。
そんな人質たちとは別に、会社の方でも、海賊との交渉のために、プロを呼び、どうしたら人質が早く帰ってくるのかを模索します。交渉のプロに、交渉役はその道のプロに頼んだほうが良いと言われても、社員の命の交渉は自分がすると言い、社長自ら、海賊との交渉を始めます。
船の方も、会社の方も、緊迫した状況で、閉鎖された空間なので、その心の動きがとても良く描かれています。脅される毎日を送る人質が、どうなっていくのか、会社側は、命は助けたいけど、お金はたくさん出したくない、色々な思惑が交錯して、本当にすごい攻防でした。
内容としては、シージャックされた船と、海賊と交渉する会社の姿をずーっと追っていくものなので、それほどすごい展開が続く訳ではありませんが、その心理戦がすごいんです。アクションや、戦いなどは全く無いので、派手な内容とは思わないで下さいね。
それにしても、海賊に入られて、人質になっちゃったら、どうしようもないですよね。従うしか無いし、自分達では、どうしようもない。海の上では、直ぐにSWATが来てくれることはないし、そもそも、その領域がどの国なのか、誰の管轄なのか、まったくわかりませんよね。もしもの時は、軍とかに頼むのかしら。プロデューサーの話では、最近は、船に武装したセキュリティーを配置することが許されているので、随分、昔よりは安全になったようです。もちろん、パトロールもあるようですよ。
会社側も、社長だったら、やっぱり社員の命に責任を持たなくちゃいけないし、かといって、海賊の言うとおりにしても、人質が帰ってくるかは解らない。もう、八方塞ですよね。本当に、責任者というのは、何故、たくさんの給料を貰っているのか、良く理解しなければ。東電の幹部なんて、お金は貰うけど責任取らないなんて、トンでもない泥棒です。経営者としては居てはいけない人たちですね。
最後まで頑張る船員たち、そして、交渉を何とか成功させて人質を助けようとする責任者たち、どちらも、本当にすごかったです。良く描かれていたなぁ。良かったです。
この映画、日本公開は解りませんが、男っぽい骨太な映画です。結構、男性の方に好まれるんじゃないかな。単館系で公開して欲しいな。デンマーク映画って、珍しいもんね。もし、機会があったら、ぜひ、観てみてくださいね。
http://2012.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=13