ラテンビート映画祭で、「Estudiante (エストゥディアンテ)」を観ました。この"Estudiante”というスペイン語は、”ある学生”という意味だそうです。
ストーリーは、
ブエノスアイレスの大学へ入学した地方出身のロケは、大学の勉強や友人関係に物足りなさを感じ、町をブラついてはナンパをする日々を送っていた。教師助手のパウラに魅かれたロケは、彼女に近づくため、ある政治団体の集会に顔を出すようになる。やがてロケは、元政治家アルベルトの思想に、強く影響を受けるようになる。
というお話です。

先日観た「ホワイト・エレファント」の脚本家が監督を務めた作品。アルゼンチンの大学内で起こっていた勢力争い=政治に翻弄される大学生について描いています。
はっきり言って、アルゼンチンという国を良く知らないと、アルゼンチンの人々がどれほど政治に対して真剣なのかとか、たくさんの政党の性質などがわからないので、難しいと思います。私は、政党の特性や、アルゼンチンの政治のことなど、一切知らなかったので、深く考えずに、日本でも昔起こっていた学生運動と、政治家たちの私利私欲にまみれた私腹を肥やす為の政治のことについて描かれているのかなと解釈しました。

難しく考えずに、入ってみると、面白いことを描いているなと思いました。学生時代に女の子を引っ掛ける為に、ちょっと偉そうに政治について語ったりしている内に、段々と政治について考えるのが楽しくなっていって、その思想は間違っているとか、あの制度は違っているとか論じていくことが、なんとなく、自分は人と違うんだという間違ったプライドに繋がって行ったのではないかと思いました。
田舎から首都ブエノスアイレス大学に出てきて、政治を語り、政治を動かす中枢にまで片足突っ込んで、いい気になっているロケ。だけど、まだ、政治の汚さなどには、一切気がついていなかったのだと思います。どの国でもそうですが、政治というものは汚いものです。誰もが、名誉と地位を手に入れると、今度は利権を求める。

日本でも派閥というものがありましたよね。一時、派閥解体のような話も出ていましたが、結局、派閥から離れられない。寄り集まってみんなでやるのが安心なんでしょう。それと同じように、大学内の勢力争いも、派閥のようなものがあり、もちろん、その取り引きのようなものも横行していました。
そんな汚いことを知らないロケは、ただ利用されるだけ。どんなに粋がってみても、タダの学生だし、操りやすい子供に美味しい餌を与えて上手く使ってやるくらいにしか、本当の政治家たちからは思われていないんです。若い頃って、こういうことが良く有りがちです。必死で背伸びして、他の人間と並ぼうとするけど、いかんせん、経験が足りない。若さ故の過ちですね。
ロケが、アホなヤリチン大学生から、段々と顔つきが変わり、政治に関わっていく変わり様が良く描かれていました。そして、色々な事を知った後に、彼が下した決断はなんだったのか、映画を観て確認してくださいね。

この映画を観て、ちょっと驚いたのと疑問だったのは、先日観た「ホワイト・エレファント」はブエノスアイレス郊外という設定で、この映画はブエノスアイレス中心にある大学での出来事。街が出てくるのですが、同じ首都なのに、全然、街の雰囲気が違うんです。ブエノスアイレスの中心は、酔っ払って歩いていても大丈夫だし、タクシーは捕まるし、みんな、ステキなレストランで食事をしています。でも、ブエノスアイレスの郊外は、悲惨な状況で、道を歩いていると、いつ銃撃戦に出会うか判らないし、泥棒もたくさんいて、家の無いような人もたくさん居るんです。山手線内と線外の違いで、これほどに違うなんてこと、日本では考えられないでしょ。驚きでした。
アルゼンチンという国は、今、どういう状況なのかな。中国や韓国のように、政府が情報操作までして人民を動かすような事をする国なのかしら。それとも、日本の昭和中期のような、ある程度は自由だけど、政治に対して不満があって改革をしたいと思っているのか、どうなんだろう。映画を観る限り、ちょっと昔の日本のように見えたんですけどね。映画を観て、アルゼンチンという国に興味を持ちました。ちょっと本でも探して、読んでみようかな。

私は、この映画、政治などに興味がある方にはお薦めしたいと思います。そういうことは難しいと思ってしまう方には、ちょっと退屈かも。日本公開は判りませんが、この作品、海外でいくつか賞を貰っているようです。もし、気になったら、観てみてくださいね。
「ラテンビート映画祭」 「Estudiante エストゥディアンテ」http://www.hispanicbeatfilmfestival.com/lbff2012/el-estudiante.html