ラテンビート映画祭で「ホワイト・エレファント」を観てきました。
ストーリーは、
神父のフリアンは、心に傷を抱えた若い外国人神父ニコラスを連れて、ブエノスアイレス郊外のスラム地区に赴任する。人々の悲惨な生活環境を目の当たりにした二人は、ソーシャルワーカーとして働くルシアナと共に、町の人々の声に耳を傾ける。まもなく社会への怒りを爆発させた住民が暴徒化。教会や警察は、彼らの弾圧に動き出す。
というお話です。
アルゼンチンのブエノスアイレス郊外にカトリックの神父が赴任し、悲惨な生活をしている人々の為に、建物を建てて普通の生活をさせてあげようという企画を教会が立てて、その工事にかかろうという時に、色々な問題が起きるということなんですけど、とにかく、アルゼンチンのブエノスアイレスという街の特殊性というものに翻弄されていくんです。あまりに荒れていて、私には想像もつかないような事ばかりでした。
宗教も信じられないし、警察も信用出来ない、もちろん女子供だって、とんでもなく極悪な事をしているんですけど、それが普通なんですね。どうして麻薬なんて売ってるのとか、簡単に人を殺すのって思っても、彼らにとっては、日常茶飯事なんです。子供まで銃を持って、殺人を犯す。酷い世の中です。
そんな酷い街に神父が赴任して、それまで居た幸せな街と同じように信じるものが貫けると思っていると、トンでもないんです。助けてあげて話し合えば改心すると思っているんですが、そんなもの1日たてば忘れて、元の犯罪者に戻ってしまう。信仰なんて、信じている場合じゃないんです。生きる事で必死なの。
生きる事と、すぐ隣に在る死と、いつも向き合いながら走りつづけなければならない、息苦しいような内容で辛かったです。胸が締め付けられるような、息苦しさというか、衝撃でした。日本の反対側では、こんなことがいつも起きていて、悲しむ人がたくさんいるのだということが解りました。
そんな辛い事がたくさん起きても、それでも、生きる力を持って走り続ける人々の姿を、激しい銃撃戦などを交えながら描いていきます。どんなに辛くても、死に出会っても、それでも未来を夢見て、歩き続ける神父とブエノスアイレス郊外の住民たち。とても考えさせられました。
これほどに荒廃してしまったら、どこから手を付けて改善していったら良いのか、解らないと思います。建物を建てようが、食料を与えようが、何も変わらない。ただ一つ出来るかも知れないのは、子供への教育なのかなと思います。親は仕方がないけど、子供には、善悪の正しい教育をして、親を反面教師として教えていくしか、手が無いような気がしました。子供が大人になる頃に、少しづつ変わっていくかも知れない。常識を変えていくしかないですもんね。
この原題は、「エレファンテ・ブランコ」をいうのですが、意味が”無用の長物”ということらしいんです。建物など建てても、人々を変えない限り、変わらないのだということかなと思いました。
この映画、私は、とてもお薦めしたい映画です。素晴らしい社会派映画だと思いました。でも、日本公開が書いてないので、もし時間があったら、ラテンビート映画祭に観に行ってくださいね。
http://www.hispanicbeatfilmfestival.com/lbff2012/elefante_blanco.html