先日、「別離」を観てきました。
ストーリーは、
イランのテヘランで暮らすシミン(レイラ・ハタミ)とナデル(ペイマン・モアディ)には11歳になる娘がいた。妻シミンは娘の教育のために外国へ移住するつもりだったが、夫ナデルは老いた父のために残ると言う。ある日、ナデルが不在の間に父が意識を失い、介護人のラジエー(サレー・バヤト)を追い出してしまう。その夜、ラジエーが入院し流産したとの知らせが入り……。
というお話です。
イラン映画にしては、結構、捌けているというか、ちょっと、ヨーロッパ系の映画っぽい気がしました。主人公夫妻は、結構、イランでも裕福な家なのではないかと思います。
妻シミンは、イスラム世界でも珍しく、自立した女性で、外国へ移住したいと考えています。自分だけで生活していけるだけの収入もあるのだろうと思いました。イスラム世界というと、どうしても男性優位の世界という感じがして、とても珍しいなって思いました。一方、夫ナデルは、結構、弱腰に見えて、父親の面倒を見なければいけないから外国への移住は出来ないと言うんです。妻に強く言われて、ダメだとは言えず、逃げに徹している状態なんです。イスラム世界にしては、珍しいでしょ。
まず、先に要点を書いちゃおうかな。この映画、色々な内容が出てくるのですが、全ては、最後の娘たちの表情に見て取れます。ナデル夫婦の娘とラジエー夫婦の娘です。大人たちは、色々な出来事に対して、問題を回避する為に、沢山の嘘をつきます。それが娘たちには解っているんです。子供は、嘘をついてはいけないと教えられているのに、大人になると、大きな嘘、小さな嘘、たくさんの嘘で身を守ろうとする。そんな事、子供には理解出来ませんよね。
そして、ナデルとシミン夫婦は、お互いの言い分を正当化するために、娘のために移民する、父親の為にイランに残ると言って、あたかも自分達の為ではなく、誰かのためにやるのだと言って、お互いを納得させようとします。でも、どう見ても、自分の都合なんですよね。シミンは、自分がイランでは、これ以上成功することは出来ないというのが判って、自分のために移住したいのだろうと推測出来るんです。そしてナデルは、移住しても、自分の今以上の仕事が見つかる事は無いと判っていて、妻に見下されるのがイヤでイランに残りたいというのが推測出来るんです。二人とも、自分の為の選択なのに、娘や父親の為だと嘘をついている。
そんな二人の姿に、娘はどうしても納得が出来ません。彼女は、まだ心が汚れていなくて、大人のそういう取り引きが汚いものに見えるんです。確かに、子供の頃って、納得出来ない大人の行動って、沢山ありましたよね。私も、随分、不思議に思いました。自分はダメなのに、大人は良いの?って・・・。大人は、子供には解んないだろうって思ってやっているんだろうけど、全部、子供には解っているんですよ。子供、バカにすんなよって感じです。自分の子供の頃を思い出してください。覚えているでしょ。そういうもんなんです。
子供の目線が一番辛い問題だけど、その他に、この映画には、介護の問題や、宗教の問題、も描かれています。イランという地域だけの問題ではなくて、どの国でも、どの家庭でも起こるような問題を描いていて、随分、考えさせられました。自分も、家族の為と思ってやっているようで、実は、自分の自己満足の為にやっていたりすることもあるのではないか、人には解らないだろうと思っていることが、全部、人に解られてしまっているのではないかと・・・。自分の事ばかりで、周りの事に目が行ってなかったのではないか・・・。目から鱗が落ちたような気がしました。
この映画、ぜひ、お薦めしたいと思います。ぜひ観て、色々考えてみて欲しいと思いました。自分が気がついていないことを、教えてくれるかも知れませんよ。ぜひ、観てみてくださいね。