2012年イタリア映画祭、最後の作品は、「ジョルダーニ家の人々」です。
この作品は、6時間39分あり、映画鑑賞耐久レースのような状態かなって思って、一瞬躊躇したのですが、観ることにしました。
ストーリーは、
:技術者のピエトロ(エンニオ・ファンタスティキーニ)が家長である、ジョルダーニ家。長男アンドレア(クラウディオ・サンタマリア)は外務省にに勤務し、次男ニーノ(ロレンツォ・バルドゥッチ)は大学で建築を専攻し、心理カウンセラーの長女ノラ(パオラ・コルテッレージ)は妊娠中と、それぞれが順風満帆な毎日を過ごしていた。そんなある日、三男の高校生ロレンツォ(アレッサンドロ・スペルドゥーティ)が交通事故で命を落とし、そのショックで精神が疲弊した母親アニタ(ダニエラ・ジョルダーノ)がガス自殺未遂を起こしてしまう。
というお話です。

いやぁ、6時間半を超える作品を、良く上映することにしたなぁと思っていたのですが、この作品なら、公開を決めたのにも納得が行きますね。面白かったです。すごく良く出来ている作品でした。これ、元々はテレビドラマで、4話で構成されていたようなんですが、それを1作に纏めたものです。でも、構成しなおした訳ではなく、4話をそのままつなげたものなので、変なカット繋ぎとかはありません。納得の行く作品に仕上がっています。
ジョルダーニ家は、両親と長女、長男、次男、三男の6人家族。長女は、結婚して、近くに住んでいて、長男は、仕事で色々な場所を転々と、次男は大学、三男は高校へ通っています。表向きは、とても上手く行っている家族に見えていましたが、既に、夫婦の間にはヒビが入っており、子供達も、それぞれに悩みを抱えています。

そんな時、三男のロレンツォが交通事故により死亡し、家族がバラバラになります。ローマのジョルダーニの家には、誰も住まなくなり、家族は、それぞれに暮らし始めます。
長女ノラは、子供も産まれ、充実した生活を送っていましたが、記憶を無くした軍人の診察をする内に、段々と、その軍人に惹かれていき、今の夫との関係に疑問を生じ始めます。この長女の話は、どんな夫婦にも生じる問題で、とてもリアルだなと思いました。妻は悩みを抱えていても、夫は何も気がつかずに、のんきに別荘を買う話とかをしているし、こういうのって、結構、ありますよね。で、夫は何も解ってくれないって事になるんですよ。その心の動きを繊細に描いてありました。

長男アンドレアは、ゲイとしてカミングアウトしていて、愛するパートナーを見つけ、幸せに暮らしているのですが、その彼に隠し子がいる事が発覚し、その事が許せません。女は、自分も子供が産めるのに、ほかに隠し子が居たとなると許せませんが、男でしょ。男は子供が産めないんだから、隠し子が居たら、その行為はちょっと納得が出来ないかも知れないけど、子供は受け入れられるよね。そこら辺は、普通の男女よりも、上手く行くよなって思いました。そして、この二人には、悲しい結末が待っています。

次男ニーノは、大学で建築を専攻していて、主席で卒業後、建築を知るために、教授の紹介で、まず、工事現場で左官の仕事を始めます。その現場で、教授の妻と近づくこととなり、不倫関係になります。自分は、父親の不倫を許せなくて責めていたのに、自分も同じような事をしていることに苦しんでいます。一方、兄アンドレアと一緒に行ったシチリアで不法移民のシャーバと知り合います。彼女の娘を探す為に、兄と色々調査に動き、その間、彼女を、誰も居なくなった家族の家に住まわせます。

こんな3人の話を描きながら、移民問題や国際治安支援部隊に関わる軍事情、孤児院を亡くす為の取り組みなど、現在のイタリアが抱える問題を描いていて、政治情勢、経済情勢なども、触れるようにしてあります。ローマの美しい風景や名産品など、イタリアの魅力をふんだんに取り入れて撮影してあって、イタリアに旅行に行きたくなると思いますよ。

映画も長いので、記事も長くなってしまいましたが、6時間半を頑張って観る価値がある作品だと思います。観た後に、心にすごく残っています。感動でした。これ、映画でやるしか無かったのかしら。もちろん、DVDでも出してくれると思うけど、NHKとかで、連続大河ドラマ的に4話をやれば良いのに。これほど良い内容なら、大手のテレビも食いつきそうなんだけどなぁ。不思議です。くだらない韓国ドラマとかより、よっぽど、観る価値がある素晴らしい物だと思うんですけどね。

私は、超お薦め映画です。出来たら、ぜひ、観に行って欲しい作品です。但し、上映場所が今のところ、岩波ホールしか無いようなので、とても残念です。ぜひ、全国で公開して欲しい。上映場所を増やしていって欲しいです。ぜひぜひ、楽しんでください。