今日は、舞台「下谷万年町物語」を観てきました。
この舞台は、31年ぶりに上演されたそうです。すごいですね。
ストーリーは、
昭和23年11月、上野公園を視察していた警視総監が、女装した「夜の娼夫」たちに襲われ、大切な総監の帽子を盗まれてしまった。犯人はどうやら、”不忍池の雷魚”こと、オカマのお春率いる一派らしい。帽子はお春のイロだった洋一が持って逃げてしまい、お春は、この1件で、米の配給を受けるのに必要な移動証明を差し押さえられてしまい、万年町のオカマたちは、食うものが無い状態。帽子を返さなければ、移動証明を渡してもらえない。そこでお春は中学生の文ちゃんに洋一の行方を追わせ、万年町のボスお市は、ヤクの売人、白井に洋一を追わせていた。一方、洋一は、浅草の劇団に身を潜めていた。
そして、瓢箪池の前で、洋一、文ちゃん、お春たちが、一堂に会した時、池の底から男装の麗人”キティ瓢田”が現れる。戦後の混乱の中、下町の不思議な人間達は、どうなっていくのか。そしてキティ瓢田とは、何者なのか・・・。
というお話です。
戦後の混乱期、今の新宿2丁目のように、上野近くの下谷万年町にオカマの町があったそうです。現代は、随分、考え方も変わり、ゲイ、オカマ、女装家、オナベ、オネエなどなど、受け入れられているけど、その頃は、異端のように思われて、一箇所に集まっていたというか、集められていたように思えたなぁ。だって、警察が視察に来るなんて、不思議よね。そんな町に中学生の男の子が一人住んでいるっていうのも、すごく不思議でした。お母さんに捨てられちゃったのかしら。観ている時は、不思議に感じなかったんだけど、後から、どうしてあそこに一人だったのかなって思っちゃいました。
その中学生”文ちゃん”が、大人になってから回想している感じなんですけど、回想と言いながらも、昔の自分と交差したりして、不思議な感じなんです。彼の思いは、時空を超えて語られるんです。
主人公は、この回想して話を語る文ちゃん(青年と中年の時代)と、帽子を持って逃げた洋一、女優?のキティ瓢田の3人。不思議な絆で結ばれた3人は、時代の波に翻弄されて、瓢箪池から離れては戻り、結末に行き着きます。文ちゃんの西島くん、「愛のむきだし」でも、とっても上手かったのですが、舞台でも上手いですね。驚きました。男性なのに、とっても綺麗で、彼こそ、女装してもイケるんじゃないかと思いましたよ。洋一の藤原さんは、安心して観ていられます。全てを引っ張っている感がありました。そしてキティ瓢田の宮沢さん。美しいです。細くて、手が長くて、肌も美しく、ステキでした~!!いやいや、演技もステキでした。歌を歌うのですが、途中、ちょっと声がカスれた場面がありましたが、あれだけ動きながら歌うのだから、体力使うんだろうなぁ。凄いの一言です。
これが31年前の舞台の写真です。
私、蜷川さんの舞台は始めてだったのですが、面白いですね。群像劇というか、たくさんの人が舞台を動き回って、それが、一人ひとり、ちゃんと絵になっているのが凄いと思いました。舞台自体が、あのブリューゲルの絵のようになっていました。舞台の端から端まで、人がたくさん居て、その一人ひとりの息使いが聞えてきそうなほど、活き活きしていて、ああ、面白いなって、最初から最後まで、とっても楽しめました。
ストーリーとしては悲劇となりますが、その時代の活き活きとした人間の姿と、強く強く生きていこうという力が描かれていました。大変な時代だったけど、その時代に必死で抗い生きていた、普通ではない人々がたくさん居たことを教えてくれます。主人公3人は、元々、6本指だったという設定で、普通ではないことを表していました。
舞台の良さは、言葉ではあまり伝わりません。やっぱり観て欲しい。生で観る舞台は、本当に素晴らしいです。映画とは違い、その息づかいが聞えるというのは、なんて贅沢なんでしょう。値段は高いから、そんなに観に行けないけど、でも、たまには、良いものを味わいたいですよね。
この舞台、すごいお薦めです。と言っても、完売なので、これから観に行くのは難しいのかな。でも、最前列に座って観る席とか、周りに立見席などがありましたよ。舞台が3部に分かれているので、立ち見でも、それほど辛くはないと思います。
そうそう、前の席の3列くらいは、舞台に瓢箪池が作られているので、水しぶきが飛んできます。とっても面白いですよ。保護ビニールを貸してくれるので、問題ありませんから心配しないでね。