先日、「恋の罪」の試写会に行ってきました。実は、8日の試写だったのですが、感想を書くのに時間がかかりました。普通は、30分から1時間ほどで書いてしまうのですが、この映画だけは、時間が経てはたつほど、思いが溢れてきてしまい、まとまらなかったの。久々に、ショックを受けた作品です。
ストーリーは、
ある大雨の日、ラブホテル街にぽつんと建っているアパートで女性の死体が発見される。その事件を追う刑事の和子(水野美紀)は、幸せな家庭を持ちながらもずるずると愛人との関係を続けていた。彼女は捜査を進めるうちに、大学のエリート助教授美津子(冨樫真)や、売れっ子小説家の妻いずみ(神楽坂恵)の秘密を知ることになる。というお話です。

観ていて、段々と恐ろしくなりました。自分の中にも、映画に描かれている女性と同じものが流れていると思うと、ゾッとします。でも、捨てるわけにも行かないし、女の業は、ずっと背負って生きていかなければならないもの。こんなドロドロしたものが、自分の中でくすぶっていて、それが爆発してしまったら、いったいどうなってしまうのか、そんな恐怖と哀しみを描いた、すごい作品でした。
渋谷円山町の東電OL事件って覚えていますか?その事件は、とっても不思議な事件で、高学歴エリート会社員だった女性が、何故か、夜は売春をしていたというもので、その女性が殺されたという事件でした。もう、15年近く前の事件です。今も、裁判は続いていて、解決はしていません。
そんな事件をモチーフにして作られた映画なのですが、とにかく、女って、感情がとてもグロテスクなのだということが判ります。どこまでも、人を、そして自分を痛めつけることが出来るんです。それは、精神的にも身体的にも。グロテスクというのは、見えるものだけではなく、目に見えない、何か、言葉が血を流しているような、そう、血を流す言葉が女の口からこぼれ出てきて、とてもグロテスクなんです。この”言葉”が重要なキーになります。詩人・田村隆一の「言葉のない世界」が使われていて、とても印象的です。

俗に言う優等生って、本当に無理していると思うんです。間違ったことをしなくて、頭が良くて、非の打ち所が無いように周りに見せていると、本当の自分が解らなくなるんじゃないかな。自分の欲望を抑えて、良く見せていると、私ってナンなんだって事になりますよね。だから、その抑圧された気持ちが爆発すると、とっても恐ろしい事になるのでしょう。美津子という女性は、そういう感じでした。このキャラクターが東電OLのモチーフなんですが、すごく痩せているんです。事件の記事を読むと、ストレスで拒食症になっていたから、とても痩せていたという話もあって、実際の話に近づけてありました。
この映画の中には、男女の愛の色々な形が描かれています。幸せな結婚をしていても、相手の事が解らない。夫を愛しているけど、身体は他の男を求めてしまう。自分の身体を痛めつければ痛めつけるほど、抑圧された欲望が浄化され、自分が開放されていく。開放され、気持ちが軽くなると、夫をもっと愛せるようになる。という、グルグル回る愛のスパイラル状態なんです。まるで螺旋階段のように、どこまでも欲望の階段が続いていて、それを登りきると、後は、地に落ちるだけ。真っ逆様に地面に落ちるだけなんです。
女は、月に一度、血を流します。命の火を、毎月、消しているんです。グロテスクで無い訳ないですよね。たくさんの宗教でも、女は不浄なものとして扱われ、悪として描かれますが、男は女から産まれる訳だし、キリストだって、釈迦だって、女から産まれている。男は女の染色体から1本欠落して男となるっていう説もあるし、もう既に、科学的には、女だけでも子孫を残していけるという証明もされていると聞きます。そんな女は、強くて、恐ろしくて、グロテスクで、哀しい生き物です。
女性は、白い羽と黒い羽を背中に背負っているのではないかと思うんです。男性は、白、黒、灰色、色々な羽を持っていると思うのですが、左右同じ色だと思うんですよね。女性は、極端な白と黒を左右に背負っていて、そのバランス良く羽ばたかないと飛べないんです。だから、とても不安定なもので、白だけでもダメ、黒だけでもダメなんです。どちらも上手く使って、同じ力で羽ばたけるようにしない限り、飛ぶことは出来ません。不安定な生き物です。だからこそ、弱く、不浄なものとして、昔から男性社会では弾かれてきたのだと思います。現代では、随分、女性もバランスよく飛べるようになって来ました。自分の不安定なところも理解しながら、上手く飛ぶ力を持ってくださいね。でも、この映画で描かれる女性達は、不安定で、地上に落ちてしまいますけど・・・。
この映画、すごく考えさせられました。私は、お奨めしたいです。
本当は、いくらでも感想が書けてしまうんですけど、あまりに長くなるので、途中で止めました。後から後から、色々な考えが頭の中から溢れてきてしまう、そんな映画です。

私は、大人の男性女性なら、この映画の凄さを理解出来ると思います。子供には、止めて下さいね。あまりにも衝撃的なので。でも、大人の女性は、自分を知るために、そして、男性は、女の恐さを知るために観て欲しい。男性は、自分達の欲望のはけ口として女性を観ているかも知れませんが、この映画を観て、実は、男性が女性に利用されているだけなのだという事を知ったほうが良いのでは?
もしかして、貴方の隣の女性は、貴方をタダの道具くらいにしか思っていないかも知れません。道具に意思は要らないんです。怖いでしょ。”インモータルズ”じゃないけど、戦略の神はアテナ、女性です。前線で戦うアレスは男だけど、戦略を練るのは女性。これで立ち居地がわかるでしょ。(笑)人間って、面白い。
スミマセン。本当に、すごいショックを受ける作品で、素晴らしかったので、感想も長くなってしまいました。私は、この作品、好きです。好きというと、ちょっと違和感があるけど、衝撃的で忘れられない作品です。