東京国際映画祭、コンペティション部門「ガザを飛ぶブタ」を観ました。
ストーリーは、
パレスチナ人の漁師ジャファールは網の中にベトナムの豚が絡まっているのを見つけびっくりする。当局に知られる前にこの不浄な動物をすぐに処分しなければと思うが、金が入る絶好のチャンスを逃したくはない。地元の国連職員に豚の買い取りを拒否されたとき、ジャファールは最もありえない場所で彼の新しい友だちの生殖能力を活用する方法をひらめくが…。
というお話です。
サイコーに面白かったです。面白い上に、パレスチナとイスラエルの問題を描いていて、二つの民族が手をつなぐことが出来たら、素晴らしいだろうってお話なんです。すごく笑ったし、楽しいし、そして、もし、その笑いで、人々が幸せになれたらと思うと、涙が出てきちゃいました。希望の映画です。
主演のジャファールの姿は、チャップリンを見本として作っていったそうです。彼の、惚けていながらも生きていこうという力が漲っている姿が、とってもかわいくて、憎めないんですよねぇ。ジャファールは、何故か、網にかかったブタを飼うのですが、ブタは不浄の物で、触るのもダメだし、イスラムの地に足を着けるのもダメっていうほど嫌っているんですね。でも、殺すことはしないの。面白いでしょ。
誰もが嫌っているブタを、仕方なく世話して、そのブタによって、ちょっとした稼ぎをし始めます。その稼ぎって、ブタさんにバイアグラを飲ませて、ブタさんの精子を取るんです。そしてその精子を、雌ブタを飼っている人に売るの。人工授精させるためらしいんです。なんだか、笑っちゃうでしょ。オスも飼えば良いのにね。大切なことを忘れてました。この商売の相手は、イスラエル側の人です。ジャファールは、パレスチナ人でガザに居ます。
ブタを飼っていることを、ある人達に知られて、何故か、テロリストに仕立て上げられてしまいます。ブタとジャファールに爆弾を撒いて、ジハードの名の元に、死んで来いっていうんですよ。許せないでしょ。ジャファールは、ある男の子と話すのですが、その男の子は、父親も神のために死んだんだって言うんです。それに対して、ジャファールは、”オレは子供が居たら死にに行かないよ。君は、父親を誇りに思っているのかい?”って言うと、子供は、”生きていて欲しかった。”って言うんです。ここに、問題の全てが詰まっていますよね。未来を担う子供の為にも、こんなジハードなんてことは辞めなければならないって。
他にも色々な出来事が起きて、その度に笑えるのですが、本当に良い映画でした。いつの日か、恨みつらみは忘れて、笑って肩を叩き合える世界になったら、どんなにしあわせなんでしょう。それは、出来ないことではありません。いつの日か、必ず出来ます。ブタちゃんも、イヤかも知れないけど、でも、飼ってみると、以外にかわいいってことが判ったでしょ。そんなもんなんです。知らないから怖い。怖いから敬遠する。敬遠するから諍いが起きるんです。まず、知り合ってみないと始まらないんだから、交流をもって欲しいですね。
素晴らしい映画でした。ぜひぜひ、日本公開して欲しいです。これも、どうして配給付いてないのかな。すごく笑えるし、単館系から面白さが広がっていくタイプの映画です。売れると思うけどなぁ。ブタちゃんのぬいぐるみも、グッズで売って欲しいな。
今回のコンペティションは、とても良い作品が多かったけど、この「ガザを飛ぶブタ」と「最強のふたり」が私は一番お奨めです。もう一度観たい作品です。ぜひ、公開を望みます。
そうそう、ブタちゃん情報なんですが、撮影では、5匹のブタちゃんから2匹を選んで使ったそうです。1匹は、シャルロットちゃんで、メス。この子がメインで撮影していました。もう1匹は、ベイブくん、オス。彼は、アクションなどのスタント担当だったそうです。ブタちゃんも、素晴らしい役者でしたよ。この映画、マジ、皆さんに観せたいなぁ。
第24回東京国際映画祭 http://2011.tiff-jp.net/ja/