東京国際映画祭、ナチュラルTIFFの「失われた大地」を観ました。
ストーリーは、
1986年4月26日。この日はアーニャとピョートルの結婚式。人生は美しく、平和な一日だった。すべては未来へ続いていた。しかしその幸せな一日に、悲劇は突然訪れる。隣町のチェルノブイリにある原子力発電所で事故が発生したのだ。ボランティアで消防士をしているピョートルはすぐさまチェルノブイリに急行する。やがて変色した雨が降り、街に溢れていた緑はいつしか褐色になってゆく。そして事故から長い月日が経ち、アーニャは被災地の観光ガイドとして働いていた。あの美しかった故郷の面影はいまだに戻ってこない…。『007/慰めの報酬』のオルガ・キュリレンコ主演。
というお話です。
チェルノブイリの事故が起こり、人々が、事故の事を何時知らされ、どういう状況で非難をし、その後、どうなったのかということを、描いています。もちろん、この映画は、フィクションで、脚本も練られたものですが、とても、現実に近いと思いました。事故当日、結婚式をしていたしあわせなアンナは、式途中で、夫を取られ、全てのしあわせな人生を奪われました。
夢も希望もあったのに、原子力発電所の事故により、灰になってしまった。黒い雨が降り、川の魚は死に、動物は、落ち着かなくなる。一見、何も変わってないようにも見えるのですが、そこは、もう、生き物が住める状況では無いんです。本当に死の街です。お年寄りなど、もう絶望して、そのままそこで死んでも良いって思ったりするんです。

感動作とかでは無いのに、自分の事のように思えて、涙がボロボロ出てきました。黒い雨が降り、動物は殺され、魚は死に、人間は雨に当たって、その身体を放射能で蝕まれていく。全てを隠して、大丈夫だっていう慰めは要らないんです。本当のことが知りたい。本当に、どれほどの影響が身体にあるのか知りたいんです。映画の中から、叫びが聞えてきました。
これ、本当に福島原発近くの方は、皆さん、思ったことだと思うんです。いきなり避難しろって言われて、詳しい説明も何もなく、危険だと言われ、何時変えれるのかも判らず、先も見えないし、自分にどんな影響があったのかも目では解らない。もう、この不安たるや、言葉では言い表せなかったと思いますが、ハッキリ言って、TVのワイドショーなどは、そういう人々の不安やストレスなどは、まったく伝えてないですよね。私、この映画を観るまで、福島の人の身に立って、真剣に考えられませんでしたもん。
この映画を観ると、原発事故が、身体だけではなく、どれほど人々の心を壊してしまったのか解ります。その地域に住んでいないと解らないことってあるでしょ。どんなにニュースで観ていても、人の心までは移せないんです。でも、映画なら、ストーリーや情景で、精神的な面も表現出来ているので、私達にも被害に合った方達の気持ちが、ある程度、伝わるんです。

こういう映画、今の日本には、必要だと思うんです。嫌なものには蓋をするっていう事ばかりで、事故から半年以上たった現在、段々と、そのニュースさえも消えていっています。これって、絶対にイケない事だと思うんです。忘れちゃいけないんです。もっとみんなで、原発のこと、東電のこと、国の対処のことを考えなくてはイケないと思います。

ぜひ、日本で公開して欲しい映画です。たとえ、どこかからの圧力で上映出来ないとかがあっても、NPOとかが、何とかして公民館とかでもなんでも、上映して欲しい。みんなに観せたいです。重要なことは、綺麗事だけで済ませちゃダメなんです。イヤな事でも、現実を観て、考えなければ・・・。
第24回東京国際映画祭 http://2011.tiff-jp.net/ja/