東京国際映画祭、コンペティション部門の「転山」を観ました。
ストーリーは、
シューハオは台湾の大学を卒業した24歳。幼い頃から尊敬していた兄のシューウェイは、ラサへの自転車の旅で命を落とした。シューハオは兄の旅を完結させることを決意する。そしてこの困難な旅を通じて自分を試すことも。旅に不慣れなシューハオはある夜、崖から転落しそうになり、またチベタン・マスティフの群れの攻撃をかわしたかと思えば、今度は食中毒で危うく命を落としかける。そしてついにシューハオはポタラ宮のあるラサへたどり着いた。笑いと涙に包まれた彼の孤独な旅は、彼に新しい人生の目的をもたらすのだった。
というお話です。

この映画、良かったなぁ。今流行の自転車で、台湾人の男の子が自分探しの為に、亡くなったお兄さんの夢を引き継いで、中国に渡り、チベットのラサまで旅をします。一言で書くと、こんな感じなんだけど、その旅が、とっても良いんです。色々な人に出会い、危険な目に合い、助けてもらって、旅を完結させます。どんどん人間的に成長していく様が、見て取れて、感動して、嬉しくて、楽しくて、素晴らしい風景が、その旅を彩ってくれます。

お坊ちゃまの僕が、最初は何も知らなくて、中国のブローカーみたいな人に騙されたり、色々あるんですけど、一緒に旅をする人と知り合って、高地での走り方や、自転車の漕ぎ方、股連れの保護の仕方、休みの取り方など、たくさんの勉強をさせてもらい、成長します。知り合った男性は、自転車旅行を何度もしている人のようで、なれたものなんです。それでも、とても危険な旅なので、手を抜かずにという事を、いつも注意しているんです。

チベットのラサに行くには、すごい高低さを7~8回(だったと思う。)くらい走らないと着かないそうで、それはそれは、観ているこちらが疲れてしまうような、すごい山道を登ったり下りたり、危ない崖地を横目に、本当に危険な旅なんです。

シューハオは、途中で、何度も辞めてしまおうとか、自縛放棄になるのですが、たくさんの人に助けられ、時には、命が危険な状態のところを助けられたりして、旅を続けていくんです。その人の温かさというものが、すごく感じられて、観ている方も気持ちが柔らかくなりました。助けてくれる人達も、決して、裕福な暮らしをしている訳ではなく、自分の身を切り取って助けてくれるような、そんな状況なのに、なんの躊躇もなく、助けてくれるんです。

チベット地域は、中国に支配され、精神的に辛い状況だと思うのですが、本当に皆さん温かくて、素晴らしい地域なんだなって思いました。彼らの文化を壊すなんて、やってはいけないことなのに、酷いですよね。彼らは彼らの文化があるのに、他民族の文化を押し付けたりするのは間違っていると思います。この映画の中では、政治的なことは一切描かれていませんが、チベットの美しい風景と人々の暮らしを見ていて、とても感じました。
山の美しさなど、素晴らしい自然を充分に感じさせてくれるし、その中に人間が生きているのだっていうことを、とても強く感じる事の出来る作品でした。感動作です。

一つ、Q&Aで質問が出ていて、私も聞きたかったことなのですが、ある場所で、5色の色紙のようなものを貰って、ある場所で撒くのですが、この意味が判らなかったんです。監督からの答えは、チベットでは、5色の紙をその場所で撒くことは、今までの自分と別れて、新しい自分を手に入れるためにする儀式なのだそうです。これが判って観ると、すごく感動です。解らなくても感動的な場面なんですが、より一層、感動出来ますよ。
この映画、とても良い映画です。ぜひ、日本公開して欲しいと思いました。今、日本でも、自転車が趣味の人も増えていますよね。自転車というのは、町中でチマチマ走るより、大自然の中を、排気ガスを出さずに楽しむ事が出来る素晴らしい乗り物です。そんな事を教えてくれる作品なので、映画好きのみならず、自転車が趣味の方や、中国、チベットに興味のある方、ぜひ、観て欲しいです。ぜひぜひ、日本で観られるように、お願いしたいです。
P.S この映画が公開されると、チベットとかに自転車で登りに行きたいって言う人がとっても増えるかも~!
第24回東京国際映画祭 http://2011.tiff-jp.net/ja/