先日、「一命」の試写会に行ってきました。ヤフーのレビュアー試写会です。
ストーリーは、
江戸時代初頭。徳川の治世のもと、大名の御家取り潰しが相次ぎ、仕事も家も無くし生活に困った浪人たちが続出。困窮した彼らの間では、「狂言切腹」が流行していた。そんな中、名門・井伊家の門前に津雲半四郎(市川海老蔵)と名乗る浪人が現れる。家老・斎藤勘解由(役所広司)は、数ヶ月前にも同じように訪ねてきた若浪人・千々岩求女(ちぢいわ もとめ/瑛太)の起こした狂言切腹の顛末を話して聞かせる。すると半四郎は、自分が切腹に至るまでの驚くべき事実を語り始め…。
というお話です。
このお話は、「切腹」という、昔の映画のリメイクだそうです。その映画を知らないので、比べることは出来ないのですが、いや、とにかく、予想の出来ない展開で、何が正しくて、何が間違っているのか、判らなくなりました。
戦国の世が治まり、戦いがあったからこそ仕事があった武士達は、どんどん貧困になりました。今の日本と同じですね。仕事をバリバリやって成長させてきたのに、行政からの規制が色々出来て、自由にどんどん稼ぐことが出来なくなり、金融機関もお金を出さなくなって、会社が潰れ、仕事を失った人が溢れている現代。見た目は違っても、この映画に描かれている世界と同じです。
そんな貧しい中でも、正直に慎ましく生きていた、ある家族のお話です。あ、家族って書いちゃうとネタバレなのかな?ま、いいや。(^_^;) その家族に、これでもか、これでもかって、不幸が襲ってくるんです。どうして、清く正しく生きている人達に、不幸が訪れるのか、悔しくなります。嫌な奴が不幸になればいいのに・・・。でも、この世の中、必ずしも、悪い奴が不幸になるとは決まってないんですよね。本当に悔しいです。
本当に、ストーリーはシンプルなものなので、あまり詳しく書けないのですが、シンプルだからこそ、役者さんたちの演技に目が行くんです。セリフが多い訳ではないのですが、その仕草や目線などで、心情が伝わってきて、こちらも苦しくなるんですよ。特に、海老蔵さん、凄いです。年齢が若いのに、結構、年配の役なので、どうかなぁって思っていたのですが、いやいや、もう、その眼力に押されて、敵の武士が後ずさるようでした。私生活が何でも、やはり、仕事となると、凄いですね。驚きました。やさしい時の父親の顔と、怒りに燃えた父親の顔、まるで、人が変わったようで・・・。久々に、映画を観ていて、息苦しくなるようでした。
武士道とは何かという事なのですが、確かに、狂言切腹などをやるのは、武士ではないと言われるだろうと思います。人に迷惑をかけて、お金をたかるなんて、そんな恥ずかしいことをやるのは武士とは言えないけれど、でも、極限状態ってあると思うんです。もう、武士としてのプライドだけでは生きて行けないという、極限。町中で、そんな状態の武士が溢れてきている現状を、裕福な武家の方も解っていたはずなんです。それでも、武士としてのプライドを捨てるのは恥だと言うのは、人間としてどうなのでしょうか。

たとえば、今にも死にそうな人がいて、車で運んでいるのに、制限速度を守れって言っているようなものですよね。そりゃ、法律で決まっているから、制限速度を守るのは当たり前かも知れないけど、スピードを出して病院に連れて行けば助かるかもしれないですよね。人間としての心があれば、法律は二の次で、命を大切にするでしょ。人間ってそういうものですよ。法律は、人間が決めたこと。快適に生活が出来るように、人間が決めたのだから、それに不具合が出たら、訂正するのは当たり前じゃないですか。法律の使い方を間違えると、融通の利かない役立たずの人間として、相手にされなくなりますよ。
人間とは、武士としての道とは。こういう問題に、正解はあるのか。正しいとは、過ちとは・・・。本当に、なにが正義なのかをすごく考えさせられました。私、こういう時代劇を観ると、本当に、日本人に生まれて良かったと思うんです。この微妙な心の動きや、静と動のコントラスト、そして四季を映し出す映像、美しいです。その美しいという事が理解出来るって、幸せですね。
この映画、ぜひ、観るべきだと思います。超お薦めです。日本人なら、観て欲しい。外国人が感じたより、もっと、日本人として子供の頃から培われてきた経験が、映画に深みを持たせてくれると思いますよ。
そうそう、白猫が、貧困な家と裕福な家に飼われていて、色々な事の象徴として描かれています。この猫も、注目してくださいね。ちょっと、太めのねこちゃんです。かわいいにゃ。
・一命@ぴあ映画生活
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