東京国際映画祭のプレイベントで「僕の心の奥の文法」を観てきました。去年のサクラグランプリだった作品です。私は、どうしても時間が合わず、この作品を観ていなかったので、観れて良かった。
ストーリーは、
1963年イスラエル。束の間の平和な時期を背景に、数年前から成長することをやめた少年アハロンの物語。バラバラな家族に反抗するため?それとも時代に抵抗するため?コミカルな要素も加えながら、思春期の心の揺れを寓話的に描く。原作者のデイビッド・グロスマンは長く平和運動に関わっている作家であり、成長を止めてしまった少年の心を通じて来るべき不穏な時代への抵抗感を描いている。
というお話です。
映画を観ていると、主人公の男の子が全然成長しないのに、周りの友達が成長していくので、なんか不思議な感じなのですが、これも、ちょっと理解が難しい映画でした。イスラエルが独立して、まだ情勢が安定していない時だと思うのですが、歴史的なことがわからないので、彼らがどんな不安を抱いているのかが良く解らず、充分な理解が出来ませんでした。
アハロンの家庭は、両親と姉と祖母の5人家族。祖母はアルツハイマー、両親は学が無いことを引け目に感じていて、姉は体型に劣等感を持っているんです。そんな中で、アハロンは窮屈な思いをしていて、学校に行って、友達と遊んでいる時は、子供として楽しんで遊んでいるんです。そして、時間が経つにつれて、友達も、国の情勢や政治のあり方などに興味を持ち、段々と大人になっていく。でも、アハロンだけは、周りに同調し、大勢の1人になる事を拒み、子供のままでいたいという思いで成長しなくなるんです。
アハロンが成長したくない理由は色々あるのですが、お父さんが同じマンションの家のリフォームを引き受けて、その家の美しくて教養のある女性との関係を疑い、母親が下品な態度を取ったりする、そういう人間としての汚い面を見て、大人への嫌悪感を抱いたというのもあったのだと思いました。
友達達も、いつまでも一緒にイタズラをしたり、ふざけあったりするだけの関係ではなくなって、政治の話や思想の話、イスラエルは徴兵があるので、その話など、戦争という文字がどんどん近づいてくるという不安感と、恐ろしいものに飲み込まれてしまうという恐怖感が、アハロンを押しつぶしそうになってきます。
で、結局、大人になりたくない子供の気持を描いただけなのか、何か他に言いたかったのかわかりません。内乱や戦争で、子供の心、大人の心も荒んで、段々と酷い方向に向かうという事なのかな。その理解でよいなら良かったんだけど・・・。
子供のまま、成長を止めるという内容を聞いて、「ブリキの太鼓」という映画を思い出しました。実は、全体を覚えていないのですが、すごい印象的で衝撃を受けた覚えがあって、怖い話だったような気がします。確か、大学の時に、映像学かなんかの授業で、観たような気がするんですよね。その映画でも、子供が成長を止めて、戦争で荒れていく状況を、その子の目で描いていくという映画で、凄かったです。その映画に内容が似ているかなって思いました。「ブリキの太鼓」は、賞も沢山取ったような素晴らしい作品なので、比べたら怒られちゃうけど。
この映画は、日本公開予定がないのですが、DVD化はあるかな?去年のサクラグランプリだけど、それほど印象に残るほどの内容とは思えなかったので、ま、興味があったら見てくださいって感じです。それより、「ブリキの太鼓」を借りて観た方が良いかも。私も、もう一度、「ブリキの太鼓」ちゃんと観てみたいな。
「東京国際映画祭」 http://www.tiff-jp.net/ja/