イタリア映画祭3作目は、「はじめての大切なもの」です。
ストーリーは、
ミラノでイタリア語教師をしているブルーノは、恋人とも上手くいかず、ドラックに頼る無気力な日々を送っていた。家族と疎遠になっていた彼の元に、妹のヴァレリアから母親が末期ガンだと告げられる。母親の見舞いに行き、子供の頃からの人生を振り返るブルーノ。両親の離婚、父親の所から母親の所への逃走。そして、奔放な母親の姿を、恥ずかしく疎ましく、でも愛しく思っていた子供の頃のブルーノは、どこか素直になれない青年へと成長していく。
というお話です。
この映画、良かったなぁ。今のところ、映画祭の中ではイチオシです。母親に対しての息子の気持ちの動き方って、すごく複雑ですよね。きっと、娘が母親に抱く想いとは全く違った、なんと言うか、母親だけど”女”というものを感じて、イヤらしく不潔に感じたり、でもとても愛しているという気持ちと、色々混ざって、複雑なんだろうなと思います。そんな気持ちを、とても良く描いていて、男の人って、かわいいよなって思いました。こういう男性たちだからこそ、女性は愛しく感じるのではないでしょうか。コメディタッチで笑えて泣けますよ。
ブルーノとヴァレリアの母親アンナは、とても美しい女性で、ミスコンで、”ミスママ”として優勝してしまいます。そんな妻の姿を見て、夫のニコルは嫉妬にかられ、アンナに暴力を振るい、追い出してしまいます。子供たちは、母親と出て行くのですが連れ戻され、また母親の元に逃亡したりと、大変な幼少期を過ごします。そして、母親の元で、学校に通い始めるのですが、どこへ行っても美しい母親に群がる男の話が耳に入り、苦しみます。そんなブルーノを尻目に、母親アンナは、子供を育てる為に、何事にも挫けずに働きます。
母親のアンナは、子供を育てる為に、なりふり構わずに色々な事をやるのですが、それは子供を愛しているからこそだと思うんです。もちろん、性格も奔放なんですけど、でも、家族一緒に生きていくためにはお金がいるし、必死だったと思います。でも、息子には、その気持ちが伝わらず、何度もすれ違い、疎遠になってしまったんです。
思春期って、難しいですよね。たとえば、発表会で親が応援してくれたり、すごいお祝いをしてくれたりしても、なんだか恥ずかしくて、素直に喜べない・・・。街中で、友達と遊んでいる時に、親の姿が見えると、隠れたり、逃げたり・・・。自分は、親離れして独立したんだって、一人の人間なんだって、示したくて、親とは近づきたくなくなる時期がだれでもあると思います。でも、こういう時期って、親にとっては、とっても寂しい時期なんでしょうね。とても愛している子供に拒絶されてしまうんですから。でも、一時は拒絶するけど、ちゃんと親を愛していますから、安心してください。親子なんですもん。
最近、ニュースなどで、孤独老人の話などを見ますが、ハッキリ言って、親が子供をすごく愛してあげない限り、子供は、愛を覚えませんから、決別するのは当たり前です。自分が愛してあげなかったのに、子供に愛してくれというなんて、都合が良すぎます。子供は無垢なので、愛も教えてあげなければ解りません。親が拒絶されても、何があっても、愛してあげれば、子供に伝わるんです。自分が与えなかったものを、子供に貰おうと思うのは間違っていますよ。
この映画を見ると、親の愛をすごく感じます。ここに出てくる母親は、子供の為に全てを奉げた女性で、別れた父親も、とても子供たちを愛しています。すべて愛しているが故に起きてしまう事件だったり、苦しみだったり、別れだったり、するんです。その愛を、信じられていなかったブルーノが、母親との再会で、愛を取り戻すお話です。
私、この映画、すごく気持ちが温かく、柔らかくなりました。ぜひ、日本公開して欲しいなぁ。この家族の話は、今の日本人にも、とっても理解出来る話だと思うし、こういう家族、結構、いると思うんです。気持ちを楽にしてくれる映画って必要だし、映画の中の話だけど、自分に置き換えて、気持ちを柔らかくして欲しいと思います。面白くて、たくさん笑って、感動をする映画です。お勧め映画よ~。