先日、「SOME WHERE」を観てきました。
ストーリーは、
ハリウッドの人気俳優、ジョニー・マルコは、かつて伝説のスターたちも暮らしていたホテル“シャトー・マーモント”で暮らしている。享楽的で華やかだが、空虚な日々だ。腕を骨折し、ギプスを余儀なくされたジョニーのところに、11歳の娘・クレオがやって来た。前妻・レイラが「しばらく家を空ける」と出て行ったため、彼女を預かる事になったのだ。ジョニーとクレオはシャトー・マーモントで穏やかな親子らしい日々を過ごす…。
というお話です。
これと言って、何か出来事が起きるわけでもなく、静かに日常を過ごしている映画なんですけど、深いんですよ。主人公のジョニーは、有名俳優で、いつもパパラッチに追いかけられるような生活をしています。オーディションを受けて、必死で頑張って、トップに上ってきた彼は、目標まで登り詰めて、先が見えなくなってしまった典型の人間です。そんな彼が、何の目標も無く、自分の存在さえ見失い、不安と寂しさに押しつぶされそうになって、どうするのかという話です。

ハッキリ言って、この作品は、目標までがむしゃらに頑張って、目的地にたどり着いてしまった人間でないと、虚しさが解らないかも知れません。今、頑張っている人は、どうしてそんな無駄な時間を過ごしているの?って思うと思います。でもね、必ず、一瞬はこうなるんですよ。私も、建築士試験に受かる事を目標としていて、受かってしまった時、目標が無くなって、どうしようって思ったことがありました。その目標が第一段階だって気が付くのに、少し時間が掛かるんです。すべて上手く行ってしまい、何不自由無くなると、思いっきり不安になるんですよ。だって、周りの人間は、輝いているんですもん。自分だけ、時間が止まって、ぼんやり過ごしているように、何もしていないように思えるんです。
きっと、ハリウッドの俳優たちも、こんな時期があるのだと思います。だからこそ、アンジーとブラピも、子供をたくさん育てて、慈善事業に熱心になったのだろうし、ほかの俳優たちも、監督をやったり、色々やってみるんじゃないかと思います。やっぱり、人間は、何か目標とか目的が無いと、生きていけないのかも知れません。自分の存在を確認出来なくなるんじゃないかな。
主人公のジョニーは、いきなり、今まで離れて暮らしていた娘と、しばらく生活を共にすることになるのですが、娘との生活の中で、自分を頼っている娘を見て、自分が必要とされているということを認識します。それまでは、自分だけで、好き勝手に暮らしていたのに、自分を必要とする娘が居ると、不自由はあるけど、父親としての愛が生まれ、自分がキチンと地に足をつけている感覚を味わいます。そうすると、いつもフワフワしている自分の人生が虚しくなってくるんです。
ソフィア・コッポラさんの作品って、ロスト・イン・トランスレーションもそうだったけど、人間の心が静かに変わっていく情景を、細かくじっくり描きますよね。確かに、アクションやサスペンスと違い、展開は遅いし、何も起きなかったりするけど、本当は、静かに、ゆっくり、心の中で変化が起きているんです。それを描いているので、こういう映画に慣れていない人には、眠くなると思います。
でもね、自分の事を思い出してください。受験に受かって入学するまでのどうして良いか判らない時期とか、有名大学は卒業はしたけど仕事が決まっていない時期とか、大手企業に入社はしたけどお茶酌みやコピーばかりで落ち込んだ時とか、目標は叶えたけど、でも、何か物足りないっていう、そういう気持ちです。
私は、とってもステキな映画だと思いました。こういう静かな映画が大丈夫な方には、超お薦めです。アクションやサスペンスが専門の方は、ちょっと難しいかも・・・。でも、自分の不安な時期に重ね合わせて観てみれば、感動出来ると思いますよ。
・SOMEWHERE@ぴあ映画生活
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