3日目の4作目は、「一粒の麦」を観ました。
ストーリーは、
コソボで売春を強いられている娘を探すルーマニア人の父親と、ルーマニアで自動車事故を起こして遺体となった息子を探すセルビア人の父親。ふたりはドナウ川で出会い、船頭が、200年前の伝説を語り始める。それは、正教会の建設が禁止されていた時代に、古い木造の教会を村に移築しようと奮闘するが失敗し、教会は川を彷徨う幻になってしまったという、ルーマニア人農民の物語だった。
というお話です。
実は、最初、話が交錯して、誰が誰だか良く判らない感じでしたが、話が進むに連れて、すごい展開になって行きます。すごく引き込まれました。最後に、すごい結末が待っているので、観た後、直ぐに立ち上がれないほどでした。
キリスト教の彼らですが、キリスト教でも、カトリックとプロテスタントがあり、その中に、また、細かい宗派があるので、それぞれ聖書の解釈が違うし、あれがダメ、これがダメというのがたくさんあるのだと思います。そういうことが全部判っていると、この映画は、もっともっと、深い感動なのでしょう。
一粒の麦とは、ヨハネによる福音書12章24節のイエスの言葉、「一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただの一粒のままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる。」というものです。これは、イエスがこの後、最後の晩餐をして、ユダに裏切られ、ゴルゴダの丘で死ぬことを予言しています。そして、彼が死ぬ事によって、キリスト教の教えが世界に広がり実を結ぶんです。
この映画でも、キリストの教えがとても重要です。教会を移設するという事をしてしまうルーマニア人は、教会という形を重要としてしまった農民への罰として、教会が川に消えてしまいます。形ではなく、教えが大切だということ。そして、ネタバレになるから言えないけど、死者への冒涜や姦淫など、たくさんの罪が、ある所に行き着き、許しを得るというもので、とても深い感銘を受ける作品でした。
ルーマニア、セルビア、コソボという、現在、紛争などで、とても荒れている地域の現実も描いていて、それにも驚きました。あまりにも酷い状況で、軍も警察も何の意味も無い地域で、同じ時間を生きているのにと思うと、信じられませんでした。早く、安全で普通の生活が送れるようになると良いのですけど・・・。
コンペティションの中で、とても心に残った作品です。
悲劇だけど、でも、そこで必死に生きている人達も居て、人間としての生き方を訴えていて、感動しました。私は、お奨めしたい作品だなぁって思いました。でも、暗めの映画なので、日本公開、あるかなぁ・・・。私は、好きだし、衝撃作だと思うんだけど・・・。岩波ホールとかでやりそうな作品です。
ヒロインの一人、イオアナ・バルブさん
