3日目の2作目は、「風に吹かれて-キャメラマン李屏賓の肖像」を観ました。
リー・ピンビン撮影監督のドキュメンタリー作品です。
あらすじは、
撮影で何が捉えられるのだろうか? カメラは私たちをどこに導いてくれるのか? 結局、生きることに意味はあるのか? 彼はいつも旅をしている。1秒24コマ、それがリー・ピンビンのペースだ。翼の代わりに、目と心を使って旅をする。一瞬の光と色を追い求め、監督の視点や観客の内なる声を表現していく。私たちは、フレームとフレームの間で失われた断片を寄せ集め、彼が台湾映画にもたらした情熱を見出すことで、彼の足跡の揺らめきを追っていく。
という作品です。

実は、観る予定が無かったのですが、時間があったので、興味を持って、観てみたら、すごく良かったんです。素晴らしい撮影技術ですね。彼の生き方そのものが、映像に表れていて、映画監督が撮影に彼を使うのがとても良くわかります。
ちょっとした光の加減とか、ちょっとした空間が、映像を情緒的にするというか、エロティックに魅せるというか、この感覚は、観た方なら分かりますよね。彼の撮った映画には、必ず、在るがままの自然、在るがままの生が表現されていて、どんどん惹き込まれて行くんです。

映画の中でのシチュエーションで、天気が悪くなってきたから、撮影は延ばそうかどうしようかと監督が考えている時に、リーカメラマンが、”あるがままを撮ってみたら良いんじゃないですか。砂漠に雪が降るなんて、珍しいだろうから。”と言ったそうです。で、思い切って撮影してみたら、天気がクルクル変わり、とても印象的な映像になって素晴らしい物になったというのです。人間は、自然のあるがままを受け入れて、美しさを造作するのではなく、美しさを自然の中から見つければ良いんですね。ステキな考え方だなぁと思いました。
彼の映像は、もう、芸術ですね。「春の雪」のラブシーンで、ワザと電信柱をまたいで撮影したそうで、行定監督が驚いて話していらっしゃいました。その電柱のところで、暗転になるので、すごくエロティックになって、映像が膨らんだそうです。是枝監督も、「空気人形」で、あの柔らかい映像に感動していたそうです。他にも、彼と組んだ監督たちは、本当に感動していらっしゃいました。
最近、リー・ピンビン監督は、「ノルウェーの森」を撮影していたのかな?あの幻想的な小説がどんな映像で現れるのか、すごく楽しみです。
このドキュメンタリー映画、すごく観て良かったと思いました。映画がまた、一段と好きになるようなドキュメンタリーです。もっと彼の映画を観たいです。シンポジウムも参加したかったなぁ。
ぜひぜひ、映画関係の仕事をしたい方は、観ると良い作品だと思いました。そうでない方も、この映画を観ると、映画の観かたが、一段上がりそうな気がしますよ。