先日、GAGAのスニーク試写会で、”東京島”を観せて頂きました。
ストーリーは、
清子(木村多江)と夫(鶴見辰吾)が漂着した無人島に、23人の若い男たちが次々に流れ着くが、女性は清子のみ。いつまで待っても助けの船は来ず、いつしか島を“東京島”と呼ぶようになる中、彼女はただ一人の女性として特別扱いを受けてしたたかに生き抜く。月日は流れ、島に安住しようとする男たちにいら立つ清子は、脱出のための行動を開始する。
というお話です。
桐野夏生さんの原作の映画化です。私は、まだ、原作を読んでいないのですが、彼女の作風から考えると、映画は、結構、キレイ目に作ってあったように思えます。ドロドロした汚さは、ほとんど無かったように思いました。男23人に対して、たったひとりの女性となると、もっとドロドロした取り合いが繰り広げられるのかと思いきや、展開が面白かったです。こういう状況になると、結構、こんな風に秩序が出来るのかもしれませんね。
あらすじに、夫婦で流れ着いて、夫が死ぬと書いてありますが、ここの部分、ほとんどオープニングの一瞬です。その一瞬の中に、すごく恐い言葉が・・・。主人公の清子のセリフで、「無人島での暮らしには、トランクに入れてきたものが全く役に立たない。でも一番役に立たなかったのは、夫。」って言うの・・・。これ、超恐くないですか?すごいですよね。私も、主人とどっかに流れ着いたら、こんな事、言っちゃうのかなぁ・・・。確かに、現代社会で高い地位に居る人は、お金もあるし、現代では役に立つだろうけど、お金や頭脳がほとんど必要の無い無人島でのサバイバルとなると、そういう地位の高い人は、役に立たないんでしょうね。
若いフリーターの男、16人のまっぱの後姿がステキ~!みんな、オシリがラブリーです。健康的でいいねぇ。おばさんは、ちょこっとヨダレが・・・。この16人、個性的な男の子が集まっていて、面白いですよ。どの子も、それぞれ、優しかったり、凶暴だったり、カメの甲羅背負ってたり(亀仙人かっ!)、神父っぽくなったり・・・。そして、どんな人間が統率して秩序を生み出していくのか、楽しみにしてください。
秩序が生まれた時点で、男性達は、清子という存在をそれほど重要と考えなくなり、彼女を物として見るようになって行くのですが、そんな中でも、清子のタフさは、すごいです。こっちがダメならこっちという風に、自分の立ち位置が常に安定するような行動に出ます。ここら辺は、女性の防衛本能が優れている事を良く表現していると思いました。
清子は、原作では46歳の太った主婦という設定らしいですが、映画では、30代半ば~後半ではないかと思われます。でないと、ラスト時の年齢が合わないんですよ。原作と映画のラストって、違うのかなぁ。映画のラストならば、46歳はありえないです。生物学的にもね。
女王のような清子と書いてありますが、結構、男の子達に、おばさんやら、ばばあやら、言いたいこと言われて、笑えますよ。結構、笑えるところも多くて、楽しいです。
この映画は、こちらが想像する展開を裏切ってくれる事が多く、楽しめました。観ていて、おおっ、そう行くのかって思うところがたくさんあるの。これが原作通りなのか、映画だけなのかは、解かりませんが、私は、楽しめました。"男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない。”というレイモンド・チャンドラーの小説「プレイバック」の中でのフィリップ・マーロウ(探偵です。)の有名なセリフがありますが、これに対して、”女もタフでなければ生きていけない。本能と子宮のみで行動出来なければ生きている資格がない。”という言葉が頭の中に浮かんできました。 女性の本能という言葉をとても考えさせられたんです。
私は、お奨めしたい映画だと思います。
そういえば、「エルメス」とタイアップしているそうで、エルメスのスカーフが何枚か、清子を飾ります。スカーフを身につけている時は、清子は女性に、そうでない時は、生き抜こうとする人間に、というように見えました。意図していたのかしらん。とにかく、色の少ない無人島の画面に、スカーフの鮮やかな色がパッと映えて、美しかったですよ。
・東京島@ぴあ映画生活
