先日、”春との旅”の試写会に行ってきました。
ストーリーは、
北海道、4月。まだ風が土を愛でることのない厳しい寒さの中、忠男は孫の春と共に気の乗らない旅に出ることになる。足を痛め、春の面倒なくしては生きられない元漁師の忠男。小さな町で仕事を失ってしまった18歳の春。ささやかな祖父と孫の二人暮らしを社会のシステムが呑みこんでいき、無念の中、忠男の最後の住まいを求めて、疎遠となった親類縁者を訪ね歩く東北への旅に出る。それは、行き先はあっても、戻る場所はないかのように思われた旅の始まりであった…。
というお話です。

アクションがある訳でもなく、派手な出来事が起きる訳でもない、淡々とした内容なのですが、とても心に沁みてくる映画です。人間とは、どういうものなのか、ということを丁寧に描いていました。

わがままで頑固なじじいと、その孫娘が、ある出来事を期に、親族を尋ねて周ります。でも、誰もが、自分が生きるために必死で、人の事まで考えてあげる余裕なんて無いんですよね。これって、すごく現実だと思うんです。今、こんなに景気が悪くて、誰もが自分が生きることに精一杯で、他人の事まで気が回らない。そんな現実を鋭く描いていて、観ていて辛くなる場面もしばしばありました。
でも、そんな現実の中でも、どの親族も、フッと振り返って、少しの優しさを頑固ジジイと孫に与えてくれる、そんな映画です。その優しさが、とっても心に沁みてきて、涙が出てくるんです。自分も辛いのに、それをガマンして優しくしてくれるってキツいと思うんですけど、でも、人間って、こういうもんなんだよなぁ、これだから憎めないんだよなぁって感じました。

人間って、歳を取ると回りが見えなくなって、自分を中心に世界が回っていて、自分は変わって来たのに周りに居た人間は自分が知っているそのままだと思い込んでいる、こういう状況の方が多いですよね。きっと、世界が狭くなってしまうんだと思うんです。そうならないように気をつけようと、この映画を観ると、考えさせられるかもしれません。
おじいさんが、頑固でわがままで、イライラする場面も幾つかありました。孫は、そんなジジイをウザいと思いながらも、一生懸命世話して、一緒に旅をします。その姿を観ると、介護とかがいかに大変かを感じました。

出演者は、邦画界の大御所が勢ぞろいです。仲代さんが、頑固ジジイなんだけど、かわいいの。パッと見、ジャン・レノみたいに見えます。ああー、また叔父さま趣味の私・・・。孫娘は、ちょっと高い声にイライラしたけど、でも、田舎の女の子って感じで良かったですよ。でも、最初出てきたとき、ちょっと障害を持った子の役なのかと思ってしまいました。あまりにギクシャクしていたので・・・。
この映画は、年齢が高い方が観た方が、より感動するのではないでしょうか。生きてきて、色々な苦しみや楽しみ、幸せ、別れを経験してきた人に、より、感動を与えてくれると思います。若いと、ちょっとイライラするかもしれません。この映画、東京の中心部でやるより、地方都市など、人がお休みに行きやすい場所で上映して欲しいですね。わざわざ銀座とか新宿などの人が多いところに行って観るのだと、辛いと思います。色々な場所で、いろいろな人に観て欲しい作品かな。
春との旅@ぴあ映画生活
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