【NOSSについて】
NOSS(ノス〜日本・おどり・スポーツ・サイエンス)は、日本舞踊を使った健康運動です。約7分の曲を踊る事で、筋肉強化、有酸素運動、ストレッチが行われ、脳トレ、仰うつ、バランス強化による転倒防止などが期待できます。
《きっかけは長期入院》
NOSS開発者である日本舞踊西川流三世家元・総師西川右近先生は1992年9月、「名古屋をどり」公演前日に心臓発作で緊急入院し、心臓バイパス手術を受ける事になります。入院期間は約3ヶ月…、退院すると階段も上れないほどの体力低下にショックを受けます。
まだ米国ほどのリハビリが確立していない当時の日本では“運動で体力をとりもどす”という意識は低く、情報の少ないまま、運動しても効果がでない日々に、鬱々とした毎日を送ります。しかし「自分は舞踊家だ、再び舞台に戻るんだ」と決意し、少しずつ踊りの稽古をはじめます。すると、次第に体力が戻る事を経験し「日舞は身体にいいのかもしれない」という思いを持ちます。
《スポーツ科学との出会い》
そんななか、右近総師は復帰してもどったアメリカのフィットネスジムで、運動療法を受けその先進性に興味を持ちます。そして帰国後、科学的に日本舞踊を研究してくれる学者を探し、中京大学・体育学部の湯浅景元教授と出会います。
「先生、踊りは運動になるのでしょうか?」との問いに。
「おそらくなります」と力強く答えたのが湯浅景元先生でした。
「今までのスポーツ科学は西洋一辺倒で発展しました。しかし本当にそれでよいのか?西洋人だけを研究して出来た運動、それだけで日本人やアジア人、他の国や文化でも有効なのか?そう思って私は独自に日本の祭りや相撲、狂言などを研究してきました。そしてそれらにはとても効果があると感じています。おそらく日本舞踊もそうでしょう」
《運動として日舞を計測》
中京大学にて計測が始まりました。ガスメーターを使ってカロリーを計算、酸素使用量や脈拍の変化をみました。筋電図をつかい筋肉の使用量を計測、あるいは筋肉量やストレッチほかさまざまな運動計測を行いました。「有効な運動である。おそらく子どもからお年寄りまで、負担も少なく効果が期待出来る」ということが分かってきました。
《NOSS誕生》
音楽は、「もののけ姫」などの映画やCMで活躍している中国の二胡奏者ジャー・パンファンさんが作曲、オリジナル音楽に振りがつけられました。NOSSはまず“現在の日本人に必要な運動をいれよう”と湯浅先生への取材から始まりました。「現在の日本人は、とにかく足腰が弱っています、それには日舞の腰を落とした動作が有効です。それも内股は、普段鍛えにくく衰えやすい内ももも鍛えられます」そしてNOSS第1号は女形の踊りになりました。
《社会に役立つ日本舞踊を!》
「今の伝統芸能は一般人の生活から離れすぎている。このままでは文化が途絶えてしまう」そう右近総師は考えました。「日本舞踊の中には昔からの日本人の動作が入っている。その動作が現代人に欠けたものを取り戻させてくれる」
「NOSSは古くからの日本の因習を抜けて、流派を超えて、どんな人でも出来るものでなければならない」そして一般向けのNOSSインストラクター認定が始まりました。運動科学は(社)日本フィットネス協会(JAFA)が協力、ベテラン運動指導者による機能解剖学、指導法を含めたコースを確立、日舞経験がなくとも指導者になれるコースを開発しました。
《厚生労働省モデル事業に…》
平成19年から21年まで3年間、厚生労働省老健局「未来志向型プロジェクト」に採用され、全国で介護予防や要介護者への実験が行われました。
“運動っぽくないから楽しい”“優雅だから覚えたい”“音楽が素晴らしい、踊っていると癒される”と好評を博し、“歩くのに杖がいらなくなった”“生き甲斐が出来た”という型や、介護施設では奇声を上げて集団行動が出来なかった方が一年後にはニコニコとみんなと踊れるようになったり、とても効果が出る方もいました。
「乙女になって!」
NOSSは体操ではありません。踊りですから、演技もあります。「ここは乙女」「雪を手に受けて」そんな呼びかけに嬌声を上げてよろこぶ受講者達の姿…。ここにNOSSの姿があります。
楽しく、遊んでいるうちに元気になる。それがNOSSの魅力なのです。速い動きの「NOSSプラス」男踊りの「NOSS2」も開発され、子どもから大人まで楽しめる“日本発信のフィットネス”として発展を続けています。