珍しく朝の仕事をさっさと済ませ、9時前に家を出て9時20分過ぎには美術館に到着。

開館前の行列に並んでまもなく入場できました。チケットを買っておいてよかった。

入って間もなくのレプリカ展示はすっ飛ばして、本物の列に付きます。

紙質の異なる第11紙以降が後半となります。

本展の目玉は細かく期間を分けて展示の『鳥獣人物戯画』ですが、国宝はほかにも「仏眼仏母(ぶつげんぶつも)像」、日本最古の字典「篆隷万象名義」(篆書と隷書〔楷書〕を併記し、字義が示され、辞書好きの私は興味津々)があります。

また、明恵上人の直筆「夢記」「入解脱門義」「華厳信種義」「学問印信・課業印信掛板」などを見ると、仏教への強い思いが伝わってきました。

近・現代の復興に努めた土宜法龍や小川義章などの業績を知ることができて幸いでした。彼らの努力がなければ、残された寺宝や記録の管理・研究もままならなかったことでしょう。『万国宗教会議議事録』や、この会議に参加した土宜法龍のトランクに残された南方熊楠との書簡など、興味はつきません。熊楠に論難されて押され気味の法龍さん、西欧風の論理術には適わなかったようです。小川義章が丹念に残した来訪録も面白く見ました。白洲正子の名に並んで樺山・・とあるのは、ご実家の樺山家の方と一緒にいらした時の署名でしょう。

錚々たる茶人が寄贈した名品の数々も、最古の茶園をもつ高山寺ならではですね。

『鳥獣人物戯画』だけじゃない高山寺、廃仏毀釈を逃れて守られてきた「文化財の伝承」のタイトルにふさわしい展示だったと思います。

 

私は一度、開山堂で開かれた明恵上人に新茶を献上する法会に立ち会う機会がありました。山の空気が一段と透明感を増す11月初旬で、茶祖明恵上人の存在の大きさを実感しました。名品が集まったのも上人の徳と、それを伝承し続けた人々のお陰だと思います。

 

リブログの後半で

『鳥獣人物戯画』全巻を一度に公開した(なんて豪儀な!)2015年の東博の展覧会を取り上げています

 

今日の札幌は35℃に迫る気温でした。寝苦しくて寝不足気味だったけれど、万葉集講座に出かけました。なんと受講生全員出席!暑さくらいで休まないのね、中高年は根性があるわぁ。今週いっぱいは真夏日が続くとの予報、木曜の古事記講座は午後です。時間帯を考えるだけでめげるゎ。

こんな日に活躍するのが今年から愛用している保冷ネックリング。思いのほか首になじみます。首周りが濡れない、キンキンに冷えないところが気に入っています。

凝固温度は様々に設定されていて、私が使っているのは28℃で固まるタイプ、ひんやり感も長保ちします。

 

 

はじめて北海道へやって来た『鳥獣戯画』が売り物の「高山寺展」、うかうかしていたら甲巻の後半に展示替えが進んでいました。

ちょっと行ってこようと気軽に出かけたら、なんと3時間待ちの大盛況!暑いから出かける人もそんなに多くないのでは、という見通しは甘かったゎ。

でも札幌の展覧会で3時間待ちだなんて滅多にないこと、ご同慶の至りです。

通常展で暇をつぶしてもよかったのですが、ひょっとして空いているかも・・・・と美容院へ行先変更。予約なしでしたがおかげですっきりしました。美術館は平日の早い時間に出かけることにします。

今日のブログは鳥獣戯画のつもりだったのに、残念!

甲巻は原寸大の複製が手元にあります。継紙の具合など、図版ではうかがい知れない細かい部分もしっかり見ることができます。たしか京博で開かれた「大絵巻展」(2006年)の時にミュージアムショップで購入したと記憶しています。

制作は京都の便利堂、美術品の精巧な複製で有名です。

  京博のミュージアムショップは商売上手で、ネフ社のバウシュピールや

  アレッシィ社の製品などほかでは見かけない品ぞろえに、ついつい財布の

  ひもが緩みます。

 

高山寺は深山の趣があって好きなお寺です。茶園やお庭、国宝の書画を拝見し、国宝石水院でいただくお薄と栂の月(干菓子)は美味しさもひとしおです。

栂ノ尾の帰りは徒歩で高山寺から渓流沿いに下り、神護寺へ向かいます。栂ノ尾一帯は都会の喧騒を忘れるほどの静けさですが、ここもインバウンドで大賑わいになっているのでしょうか。

 

 

今日は月面着陸の日だそうです。

1969年7月20日、アポロ11号で月に向かったアームストロングとオルドリンが月面に

降り立った日です。地球のほんのちょっと外側に達したのは、今から55年前。

 

もっと遠くを目指したボイジャー1号は確実に飛行を続け、太陽圏(ヘリオスフィア)との境目ヘリオポーズを脱出し太陽系の外へ向かいました。

(2号もヘリオポーズに達した模様)

ヘリオポーズの外にはさらに太陽圏を包むようにオールトの雲(外周部まで1光年)が広がっています。

生命の存在が期待される惑星が確認された三重連星アルファ・ケンタウリは4光年以上先、搭載したゴールデン・ディスクが地球外知的生命体に届くチャンスはあるのでしょうか?

  NASAのJet Propulsion Laboratoryでは、ボイジャー1号と2号の現在の

  飛行データを公開しています。

 

 

ボイジャー2号も太陽圏外へむかったようです

 

 

 

本『折りたたみ北京』 ケン・リュウ編 ハヤカワ文庫SF 2019年 第2刷

 

文庫化されてから1ヶ月で2刷と、これも人気のほどがうかがえます。

ハヤカワの100冊にも選ばれています。

短編集のタイトルは郝景芳のヒューゴー賞受賞作。アンソロジーとしては『金色昔日』よりこちらのほうが先に刊行されています。

 

目次

 序文 中国の夢(チャイナ・ドリームズ) ケン・リュウ 古沢嘉道訳

 

陳楸帆(チェン・チウファン)中原尚哉訳

「鼠年」:毛皮で外貨を獲得するために遺伝子操作された鼠が工場から逃げ出した。  

  鼠駆除隊は成績を上げ就職先を確保して早く除隊したい学生で構成されている。

  敵との攻防は先が見えず、無駄に死んでゆく仲間もでる。新兵いじめのような

  描写、戦闘中の精神の在りよう、ネオラットの描写など迫真的でした。  

  そして、この結末は予想外(誉め言葉です)。

  全く違いますが医学研究所から逃げ出したねずみが主人公の『フリスビーおば

  さんとニムの家ねずみ』(ロバート・C・オブライエン)を思い出しました。

「麗江(リージャン)の魚」:

  やりてのビジネスマンだった“僕”は心因性神経機能障害と診断され、観光地と

  して有名なナシ族の街・麗江で2週間の静養にはいる。

  これを読むと、雲南省の山間に連綿と伝えられてきたナシ族文化の行く末が

  気になります。

「沙嘴(シャーズイ)の花」:

  深圳湾にのぞむ村は、建設ブームにあやかろうと補償金目当てで狭い土地に高

  層ビルを建てるようになる。政府の土地収用は頓挫し、ビル群はフェンスで囲

  まれた経済特区深圳からあぶれた人々の住処となる。技術者だった“僕”は職を

  失い、沙嘴村に住み始める。

  現代の先端技術をまぶした犯罪小説の味わいが印象的です。

 

夏茄(シア・ジャ)中原尚哉訳

「百鬼夜行街」:蘭若寺と老鬼樹のある百鬼夜行街。

  啓蟄・大暑・寒露・冬至の掌編からなる幽霊の街の最後の年を描く。

  鋼鉄の蜘蛛のまえでは無力な幽霊たちの哀しみが伝わってきます。

「童童(トントン)の夏」:

  怪我をしたおじいちゃんと同居することになった童童一家は、介護用ロボット

  の試作品阿福(アーフー)を借りることになる。阿福の仕組みを通して知り合っ

  た大学生の王おじさん、おじいちゃんの将棋仲間の趙(チャオ)おじいちゃん。

  本作は著者の祖父にささげられました。   

  彼らが見せてくれた老人たちのの生き生きした暮らしぶりに共感しました。

「龍馬夜行」:ジャッキー・チェンの映画「ライド・オン」で気になって調べた言

  葉“龍馬精神”、この言葉に鼓舞されたかのように老いた龍馬が最後の旅に出る。

  生まれ故郷はフランスのナント、鱗にある龍・馬・詩・夢の文字は龍馬精神に

  触発されたかの地の職人が刻み、中国へ贈られたという。女媧まで登場する龍

  馬の夢想。ヒトがいなくなって久しい博物館にぽつねんと残された龍馬は、

  《AIに心は生まれるのか。夢を見るのか》という問に対するひとつの答えかも

  しれません。

  全く違う傾向の3作に著者の底力をみました。

 

馬伯庸(マー・ボーヨン)中原尚哉訳

「沈黙都市」:2046年の首都、生の声、生の感情の吐露を禁じられている世界。

  実態不明の関係当局に監視され、問題があれば指導を受け、警告される。

  コンピュータは関係当局から支給され、ウェブが日常という暮らしは、まさに

  進行している私たちの日常でもあるでしょう。日本よりはるかにスマホが行き

  わたり、すでに個人を国家が把握できるようになっている中国ならではの、

  ぞっとするようなリアリティがあります。

 

郝景芳(ハオ・ジンファン)

「見えない惑星」中原尚哉訳:

  「あなたが見てきて魅力的だった惑星の話を聞かせて・・・」

  といわれて“僕”が話はじめたのは

  チチラハ・ビンウォー・アミヤチとアイフォウー・ルナジ・イエイエンニ・

  ティスアティとルティカウルー・チンカト・ジンジアリン

  話が真実かどうかは聞き手の耳にかかっている、という言葉に思わず頷きます。

  ★それにしても、これらの架空の惑星は、漢字でどんなふうに表記されている

  のでしょう?文字として漢字しかない国の表記上の不自由さを想像してみます。

  もっとも、初めっからそうだったのだから別段不自由も無く、私のようなヘン

  な疑問は誰も持たないでしょうけど。

  こうした、意味不明の音の連なりもすんなり表現でき、漢字に(読み仮名では

  なく)外来語のルビを振るなど、変化に富んだ表現ができるのも日本語の特性

  でしょう。思い出すのはロイヤルコペンハーゲンの漢字表記。ロイヤルは意味

  で(皇家)、コペンハーゲンは音で(哥本哈根)、これは面白かった。

「折りたたみ北京」大谷真弓訳 は『郝景芳短編集』で紹介済みなので省略。

 

糖匪(タン・フェイ)大谷真弓訳

「コールガール」:15歳の小一(シャオイー)、男たちにお話を売っている。制服

  の少女と男という設定だけど、タイトルが喚起するイメージとは全く違う世界。

  時間と空間が揺らぎ、自分だけのお話を手に入れた男はどうなったのかしら?

 

程婧波(チョン・ジンボー)中原尚哉訳

「蛍火の墓」:世界の混乱を記録する日記のように読めますが・・・。

  ◎架空の時代◎架空の生き物が跋扈し◎魔術がまかり通り◎変身したり空を飛

  んだり◎世界の分裂や融合がたやすく起きる、華流時代ファンタジーを見たこ

  とがあると理解しやすいかもしれません。

 

劉慈欣(リウ・ツーシン)中原尚哉訳

「円」:紀元前227年の秦の首都咸陽、秦王政(後の始皇帝)の前で巻物を広げる

  荊軻(けいか)は政の命を狙っていた。政暗殺に失敗して殺された荊軻の史実

  (巻物に凶器をひそめていた)に、ヒトによる記憶(メモリー)小陣形を使っ

  て円周率の演算を指揮するフィクションを加えた『三体』第二部でお馴染みの

  アイディア。死の間際に荊軻が悟ったのは演算用の機械だった。

  その実現は、アラン・チューリングの登場まで待たなければならなかったので

  すが・・・。手を変え、品を変え、でも何度読んでも面白い!

「神様の介護係」:

  宇宙の果てからやって来たのは2億人の神様たち。彼らは地球に文明のタネを

  植えて、生物発生からヒトまでの進化の素を作ったのだという。神様たちは

  高齢浮浪者とほかならず、世界中に溢れる。個別の家庭が割り当てられ、神

  との生活が始まる。しかし、蜜月は続かず・・・・。老人問題などを彷彿と

  させつつ、笑いもぶち込んで、やはり劉慈欣は優れたエンタメの作り手です。

 

エッセイ

 「ありとあらゆる可能性の中で最悪の宇宙と最良の地球:三体と中国SF」

                        劉慈欣 鳴庭真人訳

 「引き裂かれた世代:移行期の文化における中国SF」

                        陳楸帆 鳴庭真人訳

 中国SFを中国たらしめているものは何か?」    夏茄  鳴庭真人訳

 

 解説 立原透耶

夕方たまたまつけた番組で紹介されていたのは、イスタンブールの老舗菓子店のTurkish Delight(トルコの悦楽)。日本のお菓子では求肥が近いでしょうか。

もちもちした生地にナッツやドライ・フルーツ、ハーブなどを混ぜ込んでいます。

原料は水と砂糖と澱粉(スターチ)、火にかけて練り上げるだけのシンプルなお菓子です。

実はこのお菓子は『ナルニア国物語』第1巻『ライオンと魔女』の第4章のタイトルになっています。瀬田貞二さんが訳されたころには一般的ではなかったため、4章のタイトルは「プリン」になりました。(耳慣れない固有名詞などに、あえて違うものをあてたいきさつについてはあとがきで触れています。邦訳の初版は1966年、我が家にあるのは1973年の11刷)

凍え切ったエドマンドがうかうかと白い魔女の橇に乗り込み、はからずもアスラン(ライオン)を裏切ることになるきっかけとなったのは、緑の絹のリボンで飾られ、まるい箱におさまった好物のターキッシュ・ディライトでした。

今ではターキッシュ・ディライト(ロクム)と検索すると、作り方まで見ることができます。画面いっぱいに広がる色とりどりのロクム、おいしそうです。

何層も重なったパイ生地にナッツなどを挟み込みシロップ漬けにしたバクラヴァ、サクサクほろほろと崩れるハルヴァなど、どれもひたすら甘い、あまい、アマ~イ!

番組では、近ごろは健康を考慮して昔ほど甘くないと云っていましたが。

  トルコ菓子をはじめて味わったのはイスラエルにいたころで、エネルギー供

  給に欠かせないハルヴァは、旅行や遠足によく持たされました。

今朝は、5時起きのつもりが寝坊をしたので、脚立のいらない出猩々(血汐紅葉)と鴫立沢(しぎたつさわ)をまず刈りました。

 

ところで、園芸屋さんのHPを見ても極めてあいまいなのがモミジ類の名づけです。

出猩々(でしょうじょう)または血汐紅葉と聞いている我が家のモミジは、

①野村紅葉(濃紫からノムラとなったとされる)と同じなのか?

我が家のは、芽吹きの時の色が鮮紅色なので、色の説明に従えばノムラモミジではないと思われます。

②出猩々と血汐紅葉はべつのもの?

出猩々は紫がかっているという説明もあるけれど、鮮やかな赤という説明もあるし、ノムラモミジと出猩々を同じとしているところもある。

③買ったときはチシオモミジ、またの名出猩々ともいうと聞いています。

いずれにしてもイロハモミジの仲間です。

 

もう一つ涼し気な緑が美しいのが、シギタツサワ。ヤマモミジの仲間です。

斑入りで葉脈の鮮やかな緑が目立ちます。お茶時の時には料理やお菓子の引き立て役になって重宝します。

シデタチザワとマジックで書かれた札があったので、葉っぱがふさふさとしているのを紙垂(シデ:玉串や注連縄に下げる飾り)に見立てたのだと勘違いしていました。

このモミジの名は、よく引き合いに出される西行法師の

 こころなき 身にも哀れはしられけり 鴫たつ沢の秋のゆふくれ

に因んでいるようです。だとしたら比較的新しい園芸品種なのでしょうか。

日本のモミジ(カエデ)の仲間は多様で、海外でも人気が高いらしいですね。

 

ついでに大山れんげと、徒長が気になったラベンダーもちょっと刈り込みました。

ラベンダーが全体から香りがするのは知っていましたが、大山れんげも花ばかりではなく枝を切った時にも、気のせいか微かに良い香りがするようです。これは新発見。

周囲の植物に知らせるネットワーク信号だったのかもしれません。いつか見たTVのように、ガス状物質が出ているのでしょうか。

地球上の生物総重量の95%以上を占めると云われている植物、その戦略は多岐にわたっているようです。

 

朝、外回りを掃除している夫、今年はムシが多いと感じているのだとか。

塵取りで掃き集めては外の芝生へ追いやるのですが、翌朝にはまたやってくる。

殺さずに放生するなんてさすがお寺の血筋と感心したら、踏みつぶしたりしたら靴の底もベランダも汚れて後始末が嫌なだけ、ですって。

今年は公園を見てもマンションの植え込みを見ても、松の仲間の枯れが目立ちます。函館以北では珍しい玄関わきの赤松(門かぶりの松)、良い匂いをあたりいっぱい振りまくドイツトウヒ、オンコ(イチイ)などの枝先が枯れています。やはり北海道では珍しいコメツガは青々しているので水脈が原因でもなさそう。出入りの造園業者によると、やはりいろいろなところで松が枯れていると話していました。線虫か葉枯病か、線虫だったら厄介ですね。

鳥もやってくるし、木陰が嬉しくて放っておいた我が家の木もそろそろ切り詰めなければ。油断していたら、利休梅も山茱萸も大山れんげもわさわさと茂っています。

さぁ、明日の朝はのほほんと本なんか読んでいないで、さっさと庭仕事をしましょ!

複製したのは去年のブログです。

『三体』を読んでふと思い出しました。

第三部「人類の落日」31章で尋問を受けた葉文潔(イエ・ウェンジエ)が、32章で三体文明のデータを分析したものを読む場面があります。約28ギガバイトとされるデータの分析をしたコンピュータをイメージした時浮かんだのが日本のアテルイⅡです。

それと同時に『三体』で言及されている〈高次元ならコンパクトで低次元に展開すると広がる〉から、(私が勝手に星と神経伝達のネットワークを結び付けた)N体シュミレーション画像も連想されました。次元が畳まれたわけではありませんが、ヒトの脳の中に宇宙が詰まっているなんて、想像するだけでも素敵でしょ。たまたま一緒にアップしていましたが、1年後に『三体』と結びつくなんて!

それにしても、このSFが2006年に書かれていたことがビックリですね。

劉慈欣(リウ・ツーシン)恐るべし!『三体0』や『Ⅱ』・『Ⅲ』、そしてスピンオフにあたる『X』にも興味が湧いてきました。『三体』沼に、ちょっと足先をつけてみた気分です。

 

【2023年7月14日の拙ブログ】

今日のテレビコズミックフロントは「天文シュミレーションがコンピューターの世界を変えた」

と題して、天文学専用スーパーコンピューターについて放送されました。

初期の天文シュミレーション用コンピューターの開発のきっかけに始まり、その結果どのような発展を生んでいったかについてざっくりと紹介していました。

きっかけは杉本大一郎先生の「球状星団の重力熱力学的振動」をシュミレーションしたい、ということだったようです。この計算を可能にするためのコンピューターを、お弟子さんの若い研究者たちが設計図からはじめて、手作り(アナログ)で作り上げたのがGRAPEプロジェクトでした。GRAPEは複数(N個)の星または星団の振る舞い(N体シュミレーション)を計算するのが目的です。

GRAPEは改良を重ね、その進化形が情報通信研究機構(NICT)が運用する高速ネットワークで、国立天文台ネットワークに接続している天文学専用スーパーコンピューター「アテルイⅡ」です。

この時に関わった若い研究者たちはその後、シュミレーション用コンピューターGRAPEを一から作り上げた経験を生かして、宇宙関係ばかりではなく、新薬の開発や、AIの研究、三次元ホログラフィなどに携わっています。

  アテルイという名はこのコンピューターが設置されているのが奥州市なので

  9世紀(平安初期)のこの地方の支配者だった蝦夷の族長阿弖流為に因んで

  名づけられたそうです。カッコイイ!

  阿弖流為は東北地方を討伐に来た坂上田村麻呂に降伏して、都へ向かい

  ました。田村麻呂の説得にもかかわらず、大方の貴族が反逆者としたため

  斬殺されました。

 

杉本先生は東大を退官された後、放送大学で宇宙物理学や数理リテラシーを担当していたことがあります。高校の時に「地学」を選択して以来理数系にはとんとご無沙汰の私が、学びなおしの第1歩として『宇宙とその歴史』を選択した時の先生です。文系の素人にも親しめるように、分かりやすくかみ砕いた講義でした。お陰でいまだに宇宙が大好きです。

 

アテルイⅡの紹介  国立天文台

 

N体シュミレーションの実際  国立天文台

こうして見ると、広大な宇宙での星のネットワークと、神経細胞の情報伝達の

ネットワークが相似形なのが、良く分かります。

第二部「三体」は汪淼(ワン・ミャオ)がゲームの終了を告げるメッセージを見る場面で終わります。メッセージには、地球三体協会への誘いが記されていました。

こうして「人類の落日」と題された第三部は、汪淼が協会の集会に参加するところから始まります。集会はまるで政治集会のようで、原理原則に忠実な一派と改革派、折衷派がいりまじっていて、それぞれが主導権を握ろうとしています。

協会の総帥となった葉文潔(イエ・ウェンジエ)は、紅岸基地に所属し、初めて地球外生命体へのメッセージを送ったころ(1971年文革の最中です)を回想します。

親が反革命分子とされたため、油断すると粛清の対象になりかねない時代でした。

文潔が天体物理学者としてかろうじて生き残ったのは、研究報告も他人名義にして自身が表に出ることは無かったからです。そして8年後(文革終息後)、地球外からの返信を受信し、応答のメッセージを送ります。

地球三体運動がなぜ、どのように起こったか、VRゲームの意味するものは何か、そもそも「三体」とは何か・・・などなど最も面白い部分ですが、『三体』の根幹に触れるので略します。

さて、24章では宇宙エレベーターが示されます。

あ、このアイディア最近目にしたばかり!と思い出したのは、おなじくナノテクノロジーによるはしご=宇宙エレベーターを取り上げている『郝景芳(ハオ・ジンファン)短編集』の「弦の調べ」です。中国SF界ではよく知られたアイディアなのでしょうか。

また次元を説明する〈ちっぽけな高次元構造が非常に大きな低次元構造を包含できる(30章「二つの陽子」)はとても分かりやすかったし、ある作戦のコードネームになった古筝(31章)など中国ならではの表現が気に入りました。

 

朝鮮半島の加耶琴(かやぐむ)や日本の和琴の元になった中国の古楽器:古筝

演奏は古筝演奏家として名高い項斯華さん