授業準備に時間をとられ、気づけば就業時間を過ぎている…。
そんな日が続くと、授業作りそのものが負担になってしまいますよね。
その強い味方として、多くの教員が利用し始めているのが AIの授業案作成。
「どんな教員が」「誰に」「どのテーマで」「何分授業するのか」
これらを伝えるだけで、導入・展開・まとめまで一瞬で提示してくれるAIの便利さは本当に魅力的です。
しかし、ここに知っておくべき落とし穴があります。
この記事では、実際に授業をする教師だからこそ気をつけるポイントを落とし穴としてまとめました。
落とし穴1:AIは学生のリアルな反応を読めない
AIで授業案を作ったことのある先生は、すぐに気づくはずです。
AIは、学生のレディネス・これまでの履修内容・意欲のばらつき・
クラスの空気感・雰囲気の変化を正確に読み取ることはできません。
AIはあくまで「指示された条件」から最適と思われる提案を返すだけ。
そのため、一見まともだけど、学生の動きが想像されていない授業案 になりやすいのです。
さらに、AIの提案が整っているほど、
気づかぬうちに一方通行の授業に偏ってしまうというリスクもあります。
「このクラスの雰囲気なら、ここで一度ワークを挟もう」
「この学生にはあえて質問してみよう」
こういった現場感覚は、AIでは補えません。
落とし穴2:教員の経験・ひらめき・工夫が盛り込まれない
授業を魅力的にするのは、教員の経験から生まれる小さな工夫の積み重ねです。
どんな発問を投げるか、どうやって指名するか、眠くなりがちな学生をどう巻き込むか、時間が余った時の「引き出し」、逆に時間が足りない時の切り上げ方・・・
これらへの対処はすべて、その教員の経験知から生まれています。
しかしAIは、個人の経験を折り込んだ授業案を作ることができません。
どれだけ指示を細かくしても、返ってくるのは「専門書」「一般論」といったAIが学習した画一的な型に近い内容です。
だからこそ、AIの案は「素案」に過ぎず、
最後に創造性を吹き込むのは教員 なのです。
同じテーマの授業でも毎年深みが増すのは、教員が積み重ねてきた経験があるからこそ、です。これはAIにはできません。
落とし穴3:学生にとっての、その授業の意味、までは読み取れない
授業はカリキュラムの中の一コマ。
学生にとって、どんなタイミングでその授業が行われるのか、は意味合いが異なることになります。
テストを控えているのか、実習の前なのか後なのか、就職活動の真っ最中なのか、疲労が溜まりやすい時期なのか、国家試験の前の復習なのか・・・
こういった「文脈」は、AIでは推し量れません。
たとえ「テスト前の学生向けに」と指示しても、
返ってくる案はあくまでAIが学習した一般論の中から組み立てられたもの。
だからこそ、
学生にとって、今、この授業がどんな意味を持つか、が判断できるのは教員だけです。
まとめ:AIは味方。でも舵を握るのは教員自身
AIは教員の授業準備の負担を大幅に減らしてくれます。
しかし、授業を構築し、最終判断をして、学生に届けるのは教員自身。
AIで効率化できるところは効率化し、
教員でしかできない部分に時間とエネルギーを注ぐ。
そのバランスが取れたとき、
より短い準備時間で、より質の高い授業を届けることができる
はずです。
AI時代の授業づくりは、
「AIに任せる部分」と「教員が担う部分」を見極める力が求められています。
私もAIとの共生は試行錯誤中です。
でも、学生が待ち望んでくれる授業ができるよう楽しんで使っていきます。
