「看護教員って、どんな仕事なんですか?」
この質問、現役の看護師さんや
教員に興味のある学生さんからよく聞かれます。
私は臨床で16年、そして看護教員として17年、
あわせて30年以上“看護”に関わってきました。
その中で強く感じるのは、
看護師と看護教員は同じ「看護」を語りながら
まったく違う使命を持っているということです。
今日は、その違いをわかりやすく整理してみます。
① 目的の違い
看護師の目的は、「いま目の前の患者さんの回復と安寧を支えること」
一方で、看護教員の目的は
「未来の患者さんを支える“看護師”を育てること」
つまり、
看護師は“直接的に”看護を届ける人
看護教員は“間接的に”看護の質を支える人
同じ“看護の専門職”であっても、時間軸がまったく違うんです。
看護師は「今ここ」を見つめ、教員は「未来」を見つめています。
② 必要な力の違い
臨床現場で求められるのは、観察力・判断力・技術力。
患者さんの変化を瞬時にキャッチして行動する「実践力」です。
一方で、教育現場で必要なのは、授業設計力・評価力・学生理解力・コミュニケーション力など、“教える力”と“支える力”の掛け算。
臨床経験が豊富でも
教育の現場ではそのままでは通用しないことも多いです。
「答えを教える」よりも「考えさせる」ことが求められるからです。
このギャップに戸惑う新人教員は多いですが
ここを乗り越えると“人を育てる楽しさ”に出会えます。
③ やりがいと難しさの違い
看護師のやりがいは、患者さんの回復・感謝を直接感じること、
看護教員のやりがいは学生の成長を通じて社会貢献を実感することにあるといえます。
看護師の難しさ・忙しさには、患者さんに対する責任・ひとつの業務中に中断や再調整が発生・チームで動くからこその人間関係・交代勤務のため体力が必要・家族や友人と過ごす時間確保などがあげられ、
看護教員の難しさ・忙しさには、やっていることの成果がすぐに見えないことやアイデンティティの不一致などに悩む学生への関わり・一人に任される時間が多い分、ひとりで考え準備をしなくてはならないことの多さや責任などがあります。
看護師は「ありがとう」と言われる瞬間が、
教員は数年後に「先生が言っていたことを日々思い出してます、本当に大事なことです」などと言われる瞬間が宝物です。
時間差はあっても
どちらも“誰かの成長を支える”という点でつながっています。
④ 共通して大切なのは「寄り添う姿勢」
看護師は患者に寄り添い、
看護教員は学生に寄り添う。
対象は違っていても「相手を信じ、成長を信じて見守る姿勢」は
共通しています。
寄り添いながらも、依存させない距離感。
これは、看護にも教育にも共通する“プロフェッショナリズム”だと思います。
そしてもうひとつ共通しているのは、「全体を把握する力」です。
看護師は、担当する患者全員の状態を把握しながら
個別性をもってケアを提供します。
同じように、看護教員も担当する学生一人ひとりを理解することが大切。
学生の思考や行動のくせ、過去の出来事や家族背景などを把握しておかなければ、その学生に合った支援や声かけができません。
全体を見渡しながらも、一人ひとりに丁寧に関わる——
その姿勢が、学生の“よりよい成長”をもたらします。
⑤ 看護師から教員へ ― キャリアのバトンをつなぐ仕事
臨床で得た経験を、次の世代につなぐのが看護教員の役割です。
一人の教員が育てた学生が、臨床の現場で何人もの患者を支える。
その連鎖が、看護の世界をより豊かにしていきます。
看護師も教員も、どちらも“看護を支える大切な仕事”。
どちらかが上ということではなく、
看護のバトンをつなぐリレーのような関係なのです。
おわりに
もしあなたが、
「看護教員って大変そうだけど、やりがいがあるのかな?」
「学生にどう寄り添えばいいかわからない…」
そんな気持ちを抱えているなら——
一度、自分の“教員マインド”をゆっくり見つめ直してみてください。
現在、「看護教員マインドチェックシート」をじっくり制作中です。
看護師から教員へと立場が変わるとき、どんな視点や考え方が必要なのか。
これまでの経験を丁寧に言葉にして形にしたいと思っています。
少し時間はかかるかもしれませんが、
“現場のリアルと教員の想い”の両方に寄り添う内容にしたいので、完成をゆっくり見守っていただけたら嬉しいです。
かなりの時間を要するかもしれませんが
出来上がったら必ずお知らせします。
よかったらフォローしてお待ちください。
あなたは看護師と看護教員、それぞれの“ちがい”をどう感じますか?コメントで教えていただけたら嬉しいです。