神田祭を待つ宵の
神酒所に活けた女夫と花 誰が手ずさびか白菊と
黄菊の露も新しく
飾る名家の金屏風 行文繁き辻々に
重ね言葉も聞きなれた
御祭礼お祭り番付
八つ八通りに変わる文福茶釜
七つの鐘はいつついたやら
ほのぼのと 白み渡りて東天紅
一番鶏は泰平の御代を祝って苔むす諌鼓
二番の鉾は 馬れき神
まさる目出度き装束烏帽子
ドンドンカッカ ドンカッカ
続く三番式として翁の楽車は 神田丸
五番十番つぎつぎに
町年番の附祭り 住吉をどり
大神楽 屋台囃子は吉住と
杵屋が待ちの菊がさね
所望所望に手古舞の達衆がおおの声につれ
渡り拍子を打ち上げて
昔より恋といふ字は誰が書き初めて
迷ひの種を蒔きぬらん 忍ぶ夜は風も吹き候
雨も降り候 憎や咎むる里の犬
まがきに寄ってほどほどと叩けば菊に置きあまる
露はぱらりとみな散りぬれど
同じ思ひに待ちわびし 姫は扉に立出て
いざこなたへと伴へり
夜風に御身も冷えぬらん心ばかりに侍れども
妾がまうけの菊の酒 きらしめせやと盃の
数重なればうち解けて愛と愛との相生連理
余所の見る目も羨まし
後の所望は 會釈なく 数番の花車に
追はれ追はれて
オーンヤーリヨーイ
黄金花咲く豊かな御代にソレ締めそれ中綱
エーンヤーリョーイ
伊達と喧嘩も江戸の花
その花笠の咲きそろう桜の馬場へどうどうと
寄せ来る人の波間より
光りまばゆく昇る日の影