吉原雀 | 『花のほかには』-fuyusun'sワールド-

『花のほかには』-fuyusun'sワールド-

fuyusunの『何じゃこりゃ!長唄ご紹介レポート』
自己満足ブログですみませんm(_ _)m

年代 作曲 作詞
明和五年
(1768年)
富士田吉治
杵屋作十郎
初代
桜田治助

舞台は桜満開の吉原。しかし、登場人物は遊女ではありません。何故か、鳥売りの男女です。
この男女。夫婦ではありません。(ずっと夫婦と私は勘違いしていました)

この曲についての解説。色々出逢いましたが、中でも面白い解説がありました。
この主人公の男性は、鳥売り小笹左次兵衛に化けた八幡太郎義家。この人は源義家という平安後期の武将です。豪傑で有名な人。「八幡太郎義家」という名前を聞くと、どんな極悪な賊も逃げ出しちゃう・・・いやいや腰を抜かすかな?!悪人どころか、どんな悪霊物の怪でも退散しちゃうというのですから、すごい人です。
女性は安倍宗任の妻の善知鳥。
安倍宗任は陸奥国の豪族。安倍貞任の弟。前九年の役を起こし源義家に討伐されてしまいます。
貞任は戦死しますが、宗任は生き残り、後々、大宰府に流刑されるそうです。
この登場人物のお二人は、つまり敵同士という事ですね。

この舞踊では、吉原を背景に互いの正体を探りあいながら踊る拍子舞なのだそうです。
今のような形式の舞踊になったのは後年になってから、もともとは、善知鳥は出羽国の国平賀の鷹の精霊が、子を慕う余りに人間に姿を変えて現れたとかいう設定だったそうで・・・。
「実は何々」。歌舞伎等でお得意の演出方法ですね。
また、この平安後期の吉原が、良くテレビに出てくる江戸時代の吉原のように華々しかったかは疑問。
あそこに廓が出来たのは、その時代からだいぶ経ってからですもの。
時代考証適当、フィクションですから!こういうのがお得意なのです。
何せ、歌舞伎は庶民の娯楽ですからね。

「互いの正体を探りながら・・・」なんて、スリルとサスペンスですが、曲自体はそんな事を感じさせないルンルン気分になる、華やかで楽しい曲想です。

さて、この曲の楽しみは、三味線やお囃子の見せ所のタマです。
まあ、舞踊の地方の場合は、あんまり凝った事をすると踊れなくなっちゃうので「凄い♪」というものは入らないようですが、演奏会の場合、聴きどころの一つです。
このタマというのは、そもそも三味線もお囃子もアドリブ的要素の強い部分で、同じ人が弾いても似ていて非なる感じになるようなものです。
だいたいのベースは決まっているようなんですが。
という事で、「今日のタマはどんな感じ」とワクワクします。
この曲の三味線は本当に見せ所多いです。
スガガキもそうだし、追廻のようなつなぎの合方も入ったりしますしね。追廻は娘道成寺でお馴染みの合方。立ち方さんのお着替えタイムに使われるつなぎの合方です。

さてさて、主人公は鳥売りなのですから、当然、鳥籠に鳥を入れて持っています。
遊女にとって、廓は赤い格子で囲まれた鳥籠の鳥のようなものですね。
つまり、鳥籠の中の鳥って遊女を象徴しているのかしら?深読みしすぎかしら?