松の翁 | 『花のほかには』-fuyusun'sワールド-

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fuyusunの『何じゃこりゃ!長唄ご紹介レポート』
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年代
作曲
作詞
1877年明治10年 三世杵屋正次郎
三世杵屋正次郎

この曲は
駿河の国。。。つまり静岡県の富士山麓の加島郷平垣というところの
松永さんという富豪のお庭の見事さを唄った曲だそうです。
松永さんのお庭は
千樹万木珍花奇草を集めた
それはそれは見事なお庭だったそうです。
翁。。。つまり松永さんのご主人の事
しかし、松永さんは明治十五年に五十五歳で亡くなられたのですが
この曲が作られた頃は五十歳でしょ。
翁というとおじいさんという感じ
今の感覚で言うと、八十とか九十歳というイメージがありますが
当時は五十歳でも充分おじいさんだったのでしょうね。
このお宅も昭和五、六年くらいまであったそうですが
その頃には見る影もなく朽ち果ててしまっていたそうです。

翁というと「三番叟」
曲としては、「三番叟」に似た雰囲気があり
格調高い透明感のある曲という感想があります。
まさか、
いくら富豪のお宅とは故
日本の松永さんのお宅のお話だなんて夢にも思いませんでした。
中国の○○殿とか
天界の××殿とか
そういったファンタテジーなイメージでした。
なんか、題名や歌詞で、すごい格式のある曲という印象を持っていた私ですが、そういえば、曲の感じは格式というよりは、綺麗さ、ファンタジーの世界とは違う現実の澄んだ空気を感じます。
あらためて「ふーんなるほどやっぱりそういう訳だったのか」と妙に納得しました。

私的感覚ですが、「翁」=「三番叟もの」というイメージで演奏しちゃったら、この曲は壊れちゃうのでしょうね。
この曲での「翁」は、つまり松永さんのご主人であって、三番叟に出てくるような、住吉神社の三つの神様の一人である「翁」ではないのですもの。
唄われている風景は、それはそれは豪華で美しいものなんですけれど、けしてファンタジーの世界ではないのですよね。
この辺を間違えて演奏しちゃったりすると、きっとこの曲の綺麗さ・透明感が壊れちゃうそんな感じがします。