僕は工作少年だったので、一人家でものを作っていて幸せなやつでした。
そういうことを言うと、ずっと前に高野寛が自分は工作とか家でやっているおとなしい子供で、あるとき音楽にめざめてこうなっているけどとてもロックやっている人になるなんて、と語っていたのを、今書きながら思い出した。それをきいたときに、ああおんなじだなあと思ったものでした。男の子はみんなと野球でもやってこいと、若き日の母が幼き日の僕を心配して悩んでいたのでしたけれど、その母も老婆になってこないだ天国に旅立っていきました。お母ちゃん、僕は結局大人になっても放射光施設で工作して飯が食えました生んでくれてありがとう、と、我が家にひきとって介護ベッドに寝ていた母に言ったものです。そしたら、このブログに何度もおんなじことを書いたけれども母は まあうれしいと 言ったものです。その母の旅立ちから早半年です。もうすぐ春が来ます。
中二のころ、凝っていた工作は天体望遠鏡で(ちなみに中3ではブライアンメイのようにエレキを作っていました)、新宮市の有名なアマチュア天文家田坂氏から、父が(学校の先生でしたが)わざわざ8㎝のアクロマートレンズを借りてきてくれた。なんでも学生のとき田坂さんが磨いたんだそうで。その8cmを塩ビパイプにくっつけて作った屈折がまた良く見えて、ベランダから観たオリオン星雲も、アンドロメダも、月ももう感動で鳥肌でした。なにしろ通販で買ったシングル6cmの望遠鏡が、ひどい色収差で、こんなもんかいなと絶望していたものですから。
やがてそのアクロマート8cmは田坂さんに返さなくくてはならない日がきて、我が家にある色消しレンズで遠くをみえるものは、父が買った3.5cmのたぶんビクセンの双眼鏡しかなくて、それで星をよく眺めたものでした。それでもさすがはビクセン、オリオンの星雲もおっきくは見えないものの、ぼわっとくっきりと、肉眼でみたのとは違って俺は星雲だぞという言葉を話してくれるほどには見えたものです。そのころ天文ガイドをよく買っていたから、広告にのっている天文ファンがよく使うのは、5cmの7倍の双眼鏡なんだなあとだんだんわかってきて、それが欲しかったのですが、少年はお金がなくて、買えないまま、こないだ還暦になりましたので、やっとこさ、けちってメルカリでそいつを半世紀近くの憧憬を満たさんとして、7000円ほどで買い取りました。 売主は面白い人で、
星の観方のメモをつけてくれたのです。しかも手書きで。面白い人がいるんだなあ。
ハイゼンベルグさんだそうで、もうネーミングがすごすぎます。流石は量子力学の父だ。そしてものはこちら。
ずしりとくる5㎝の7倍、ビクセンです。
昨今の寒波で、外に夜出るのがおっくうですが、温くなってきたら、見まくろうと思ってます。ひとまずオリオンは見ました。ああこんなもんだったかなあ、じじいになって目が悪くなったのかも、と子供の頃の感動とはなんか違うかな、それとも光軸ずれたんかいな、などいろいろあるけど楽しいです。ひさびさに自分のために高い(7000円がねえ、けちなもんで)もの買ったのがどきどきもんで。15年前に博士もらったときに買った万年筆以来の出来事でございます。けちなもんで。
昼間の野鳥観察にも使えます。揖保川のほとりにはいろんな鳥が来ます。
バカらしいとは思うでしょうけれど、人生で初めてこれでしげしげとながめて、ツグミとはどのような鳥かわかりました。つまりでかい雀です。