息長きアベリアに吹く秋の風
( いきながき あべりあにふく あきのかぜ )
今日取り上げる花は、6月頃から花が咲きだし、今も咲き続けている花木である。名前は「アベリア」というが、名前は知らなくても大概の人は、どこかで見たことのある花だと思う。
というのは、花期が長いこともあり、かなり前から低木の街路樹として、あるいは公園樹としてよく植えられているからである。
本日の掲句は、その「アベリア」が、夏の初め頃から咲きだし、秋風の吹く今も咲いていると感心して詠んだ句である。「アベリア」は夏の季語なので、下五に秋の季語「秋の風」をおいて秋の句とした。
尚、念のため過去の句を調べると、以下の類句を詠んでいた。
アベリアの花息長く香る秋
どちらがいいかは、今後判断するとして当面は両方残しておきたい。
ところで、「アベリア」は4音で覚えやすいが、外国名を覚えるのが苦手という人は、「間の抜けたアベマリア」と覚えるとよい。(マリア様への失礼はお許しのほどを)
和名は、「花園衝羽根空木(はなぞのつくばねうつぎ)」という。枝振りが空木(うつぎ)のようで、 花の散った後が衝羽根(つくばね:羽根つきの羽根)に似ており、沢山の花をつけることから「花園」を冠してつけられたそうだ。
何とも長たらしい名前だが、上記にように分解して覚えれば何とか覚えられるだろう。「花衝羽根空木」ともいうが、「衝羽根空木」という花木が別にあるので「花園」「花」を省くことはできない。
因みに、「アベリア」「花園衝羽根空木」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 今日もまた香る花園衝羽根空木
② アベリアの蜜の甘きに黒揚羽
③ 熊蜂の花園衝羽根空木咲く
①は、和名の「花園」「衝羽根」の楽しげな響きを活かした句。
②は、黒揚羽がアベリアの花から花へと忙しなく飛び回って吸蜜している様子を詠んだ。
③は、②と同様に花から花へと飛び回っている熊蜂を見て詠んだ。この句では「熊蜂の花園」「花園衝羽根空木」の「花園」の重なりを意識した。
「アベリア(花園衝羽根空木)」は、スイカズラ科ツクバネウツギ属の低木。原産地は、東アジア、メキシコなど。大正時代に渡来したそうだが、普及し出したのは1960年代以降だとのこと。
花期は6月~11月と極めて長い。小さな釣鐘型の白い花を木全体に多数つける。花を散らしつつ次々と新しい花を咲かす。花は、非常に強く甘い匂いを放つ。
尚、「アベリア」「花園衝羽根空木」の俳句は、花そのものが普及し出してから日が浅いためかまだ少ない。参考になるものが見つからなかったので、参考句は割愛する。