スサノオで～す
小春「静岡♪静岡♪」
影狼「……」
『スサノオと日本の神を巡る旅』。
次なる目的地は、
絶世の美女、
『コノハナノサクヤ姫』が鎮まると言われている、
『富士山本宮浅間大社』。
快適に車を運転していた。
あ「ちょっと予定が変更になっちゃいましたね。
元々今日は、
イワナガ姫の予定だったけど」
ス「今回のこの『天孫降臨』の旅には、
大きな目的がある」
あ「そうなんですか？
どんな目的？」
ス「イワナガ姫の封印を解く」
あ「…マジ…？
なにその大きい話…。
っていうか、イワナガ姫って封印されてるの？」
ス「まぁそこら辺の話は、
イワナガ姫のところに実際行った時に話すけど、
行く順番を間違えたらあかんからな。
だから先に、
イワナガ姫の妹コノハナノサクヤ姫が鎮まる場所に…。
って、その前に…」
あ「な、なんで！？なんで急に！？どうした小春！？！？」
ス「成長…ちゃうか…？」
あ「マジ？
それは嬉しいけど、なんで？」
ス「考えられるのは、
お前が猿田彦のところで言った言葉やろ…。
『この旅が終わったら、大切な人を大切にする大切さを、伝えていく』って。
そのお前の心に反応したんちゃうか…」
※猿田彦さんとの出会った時の話はこちら。
あ「何だか…嬉しいね…。
これから進む道が、
間違ってないっていうことなのかな」
ス「そういうことやな」
あ「それにしても何で黄色？
それともこれは金色？？」
ス「性質が変わったんかもせーへん。
元々『金龍（黄龍）』というのは、
四神（中国の四方の方角を司る伝説の霊獣、青龍、朱雀、白虎、玄武）
の中心的存在、長とも呼ばれていて、
皇帝の権威を象徴する龍とされてはいるけど…」
あ「まさか…小春って…凄い龍…？
よく見たら、
何か光ってるし…」
ス「かも…せーへん…」
…それはそれとして。
僕らは目的地の、
『富士山本宮浅間大社』に到着した。
もう有名な神社だから、
今更ですが、
それにしてもいつまでも、
色褪せることのない素晴らしさ…」
ス「何と言っても、
あの『霊峰 富士』がご神体やからな。
これ以上ないほどのパワーよ」
あ「それにそこから湧き出る、
この清らかな水ですよね。
本当に静岡の方がうらやましい」
参道を歩いて本殿へ。
さっき言っていた言葉で、
『イワナガ姫の封印を解く』って…」
ス「昨日のオオヤマツミとの話は覚えてるやろ？
美人の妹コノハナノサクヤ姫と
醜い姉イワナガ姫の両方を妻として、
アマテラスの孫のもとに送り出され、
姉だけが返されたという話」
あ「ひどい話ですよね…」
ス「以来イワナガ姫は伊豆の最西端の地に姿を隠し、
自身に封印をかけてしまった。
二度と誰の前にも出てくることの無いようにな。
その封印を解く。
そのためにはお前自身も、
事の顛末をしっかり知っておいたほうが良い。
だから目的地を先に、
ここ（富士山本宮浅間大社）に変更したんや」
あ「わ、わかりました…」
そして僕らは、
『絶世の美女』の言葉に恥じない、
美しい朱色の本殿にて参拝。
（二礼二拍手一礼）
…そして…？
噂に違わず、美しく輝く、
主祭神『コノハナノサクヤ姫』だった。
あ「………」
ス「めっちゃ綺麗やろ？」
あ「そ、そうですね…」
ス「これはニニギ（アマテラスの孫）も一目ぼれするわな」
あ「そうですね…」
ス「しかし、やっていいことと、
悪いことがある。
おう、サクヤ姫、久しぶりやな」
サクヤ姫「スサノオ様、お久しぶりです…」
そう言ってペコリと頭を下げた、
コノハナノサクヤ姫からは、
花のようなかぐわしい香りが漂い、
その見た目と合わさって、
正しく一瞬で、
心が持っていかれそうなほどだった。
サクヤ姫「よくぞお越しくださいました…」
ス「まぁ固くなるな。
それにしてもお前はいつでも美しい。
富士を背景にすると余計に、その美しさが際立つ」
サクヤ姫「やですわ…スサノオ様…」
あ「あ、あの…一つ聞いてもいいですか？」
ス「何や？」
僕のその言葉に、
コノハナノサクヤ姫も、
そのキラキラ輝く、
大きな瞳で僕を見る。
あ「あ、初めまして、荒川祐二と申します。
今スサノオさんと、
日本の神さまを巡る旅に出させて頂いています」
サクヤ姫「そうですか…よろしくお願い致します（ペコリ）」
あ「よ、よろしくお願い致します。
質問って言っても、
変な質問なんですけど、
なぜこの場所『富士山本宮浅間大社』の主祭神が、
コノハナノサクヤ姫さんなんですか？
あまり富士山とは関係がないような…」
ス「あぁ、そういう質問か。
それは自分からは答えにくいやろうから、
俺が代わりに答えたろ。
まずはこの『富士』の美しさと、
コノハナノサクヤ姫の美貌を掛け合わせたことにある」
あ「なるほど…」
ス「そこに加えて、
古代この『富士山』というものは、
噴火を繰り返していた時代があったからな。
その火山エネルギーを制御するために、
火の力を持つ、
『コノハナノサクヤ姫（別名：浅間大神）』を主祭神とする必要があった」
あ「火の力？
こんなにかわいらしいのに？」
ス「古事記の物語にあるやろ？
コノハナノサクヤ姫が妊娠をして、
それを夫のニニギに告げた所、
『それ本当に俺の子ども？』と言われ、
激怒したサクヤ姫が産屋に火を放ちながらも、
子を見事に産み落としたという話」
あ「は、はい…知ってはいたんですが…。
そこが由来だったんですね…」
…それにしても、
ニニギという神の、
何というめちゃくちゃさ…（笑）
ス「聞きたいことは、もうええか？」
あ「あ、は、はい！ありがとうございます」
ス「じゃあちょっと悪いけど、
今日は、俺から話しをさせてもらうな。
サクヤ姫、
姉さん、イワナガ姫とはどうや？
今の関係は」
スサノオのその言葉に、
コノハナノサクヤ姫は明らかに、
その美しい表情に影を落とし、
ポツリ、ポツリと話し出した。
サクヤ姫「姉とは…、
やはり未だ、
昔のような仲の良い関係には…、
戻れていません…」
ス「…そうか…。
やっぱりまだ尾を引いてるか…。
少しだけ事の顛末を、
こいつ（荒川祐二）に聞かせてくれるか？
ある程度のことは知っとるから、
仲違いしてからの話を聞かせてやってほしい」
サクヤ姫「……はい……。
申し上げた通り、
私と姉 イワナガ姫は、
元々は凄く仲の良い姉妹でした。
しかし、
ニニギ様に追い返されて、
以来、姉はふさぎ込んでしまい、
誰も…、
私すらも…、
受け付けなくなってしまいました」
あ「それでさっき言っていた、
伊豆の最西端に姿を隠して、
自分で自分に封印を掛けたって…」
サクヤ姫「そうです…。
『烏帽子（えぼし）山』ですね…。
私も何とかしようと、
必死になって姉を探したのですが…」
ス「探す場所が山であったが故に、
背伸びをして探す余り、
ますます背が高くなって、
より美しくなり、
それをまた姉が嫉妬したという、
皮肉な伝説も残されている」
サクヤ姫「私も決してそんなつもりはなかったのですが…。
以来向こうの地元には、
『烏帽子山が晴れる時には富士山が雲に隠れ、
逆に富士山が晴れる時には、
烏帽子山付近の天候が悪くなる』、
『烏帽子山に登って、
富士山を誉め賛えると海中に振り落とされる』といった、
そのような伝説が広まり、
地元の人は富士登山を忌み嫌うという、
良くない対立関係が生まれてしまったのです…」
あ「………」
…何という不憫な話だろう…。
仲が良かった姉妹が、
たった一つの出来事で、
こんな目に…。
神の世界の皮肉に、
掛ける言葉が見つからない…。
ス「…だからこそ、
その因果を俺たちで終わらせる。
サクヤ姫、協力してくれるか」
サクヤ姫「…はい…。
私に出来ることがありましたら、何でも…」
ス「イワナガ姫の地に向かう。
一緒に来てほしい」
サクヤ姫「…わ、わかりました…」
ス「神も人も、
辛い思いをするのも、
苦しい思いをするのも、
見ていたくない。
やるぞ。絶対に解き放ったる」
あ「………」
そう言ったスサノオさんの顔は、
『ヤマタノオロチを倒した英雄』、
その言葉そのままの、
強く、頼れる顔をしていた。
思い返せば、
イザナミさんの時もそう。
タケミナカタさんの時もそう。
誰かの相談に乗る時もそう。
この方はいつも、
『苦しんでいる誰か』のために動き出す時、
必ずこの顔をする。
そして明日…。
神の時代から、
この現代にまで続く、
悲劇の女神『イワナガ姫』の封印が、
解き放たれる。
残り３ヶ所。
明日は、
イワナガ姫の地、
雲見浅間神社編をお送りします☆
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