スサノオで~す
今日僕らは、姫路は広峯神社に来てま~す
あ「こちらのご祭神は…素戔嗚尊(すさのおのみこと)。って、あなたじゃないすか」
ス「うん。まぁ厳密には、俺の別称の『牛頭天王(ごずてんのう)』やけども」
あ「やだわ。何かいつも横にいるのに、改めて神社で参拝したら照れるわ。
何だかあなたの実家に挨拶に来てるみたいだわ」
ス「おい。アホなこと言うてんと、終わったらこっち来い」
あ「待って~!あなた~!!」
スサノオが僕を神社の裏手に誘う。
そこには…?
そこから山道を10分ほど、上へ、上へと上がっていく。
そうして着いたこの場所。
あ「ここが荒神社?っていうか、『荒神社』ってなに?」
ス「さっき看板にも書いてたけど、俺の荒魂を祀ってる場所。
他の神社でも境内の脇に、ちょこっと荒魂を祀ってるお社があったりなかったりするんやけど。
ていうか、『荒魂(あらみたま)』ってわかるか?」
あ「分からぬ」
ス「神道に於ける神には2つの側面がある。和魂(にぎみたま)と荒魂(あらみたま)」
あ「それなぁに?」
ス「まぁ俺たち神はさ、自然由来の神さまが多いやん。
俺やったら元は大海原の神やし、姉ちゃんのアマテラスやったら太陽やし」
あ「そうね」
ス「神には二面性がある。
平和的な側面と荒々しい側面。それを和魂(にぎみたま)と荒魂(あらみたま)という」
あ「どゆこと?」
ス「例えば日光の恵みなんかは平和的な側面。かたや日照りと聞けば?」
あ「荒々しい側面?」
ス「そうそう、よく出来ました。じゃあさらに言うなら、雨の恵みは平和的な側面。かたや台風と聞けば?」
あ「荒々しい側面」
ス「はい、正解。それでは続いて『スサノオのアタックチャ~~~ンス!』とは言わんけど、
神の二面性とはそういうこと。
その荒々しい側面=荒魂を祀ったのが、この『荒神社』な」
あ「何でそんなん祀るのん?やめてよ、台風とか」
ス「古代の信仰にも2種類ある。
これまで俺が言ってきた自然の恵みを与えてくれる神さま=和魂に、敬意と感謝を込めて祀る場合。
それに加えてもう一つ」
あ「?」
ス「そういった自然災害を『神の怒り=荒魂』と見て、災いをおさめて頂くために社を建てて祀った。
まぁ要は、荒魂から和魂に変わってもらうためにな。
これが後に、災いをもたらす怨霊を鎮める信仰にも繋がっていったんやけど、それはまた別の話」
あ「ふむ、そりゃ確かに古代の人の立場からしたら、
『神さま、いつもありがとう!』っていう信仰があれば、
『ちょ!マジ祀るから、台風は勘弁してください!』って二種類になるのは普通の流れやわな。
良いことばっかりだけじゃなくて、悪いことも何とかしてもらわないと…って、おい!!」
ス「なんや?」
あ「あんた昨日言うてたやろがい!『俺たち神々は、人間のことが好きで好きでたまらんねん』って。
ならやめてくれんかね。台風とか自然災害とか、別に俺たち人間はいらんねんけど」
ス「それは君ら人間から見た時だけの話や。
えぇか、物事は大きな視点で見なあかん。
嵐が起きれば何が起こる?」
あ「『すべてを壊すの』」
ス「それは工藤静香の『嵐の素顔』や(笑)今の子たちが分からんボケはやめろ。
台風や嵐が起きれば何が起こるか?
土砂崩れや川の氾濫。
これは人間から見たらたまったもんじゃない」
あ「そうね。やめてくれよ」
ス「でもな、同時に台風が起こることで、海の水がかき回される。
すると、循環が起きるとともに、海中に酸素やプランクトンが供給される。
結果、そこに新しい海の生命を育む力が生まれる。
川が氾濫することで、結果的にそこの土壌が改善される。土砂崩れが起きることで、川に土砂が流れ込んで新しい養分が加わる」
あ「そやけども、納得いかん。怖いの嫌よ。辛いの嫌よ」
ス「人間視点で見たら、そらそうよ。
でも、それがないと結果的に誰が困るか?
君ら人間やねん。
何事も起きずに、次第に海が死んでいったらどうなる?土壌が枯れていったらどうする?
『荒魂』というのはそういう意味で、これも大切な自然の営みやねん」
あ「必要悪ってやつか」
ス「まぁ言い方は良くないけど、そんなもんや。決して悪ではないけどな。
これを君らの生活に落とし込むとどういうことか?」
あ「?」
ス「仕事や生活をしていたら、思いもがけないトラブルや災難に巻き込まれることってあるやん。
普通に仕事をしていても従業員同士のトラブルがあったり、家族関係でも些細なことで喧嘩したり」
あ「あるね」
ス「でも、その時に気付かされることはたくさんある。
従業員同士のトラブルを解決してみたら、
実は自分がいかにこれまで従業員1人1人のことを見てあげられていなかったか、ってことに気付いたりとか。
家族同士の喧嘩に真摯に向き合ってみたら、
普段は口に出さないけど、本当はどれだけお互いのことを思っていたのかってことに気付けたりだとか」
あ「確かに…あるね」
ス「それも『神々の荒魂が繋ぐ縁』と言えば、そうやねん。
悪いことは決して悪いだけのことじゃない。
だからさっき言ったみたいに、大きな視点で物事を見る。
起きた現象だけにとらわれず、その中にある原因と因果を突き止める。
そこに気付いて解決できた時、今までよりも人生や物事はもっと大きく前進することが出来る。
それも『荒魂』の役割みたいなもんやねん」
あ「納得したよ。よくわかったよ、兄貴。
そのことを理解して、物事にまっすぐ向き合う決意とともに、荒魂を祀った社には参拝すればいいのね」
ス「そういうこと。ヨシヨシ、良い子、良い子。
まぁ色々喋ったけど、神の大いなる愛。
それは、『ただ望むものを与えるだけじゃない』ってことを少しだけでもわかってくれたら嬉しい。
大切なことは目先の成功をすることではなく、
君らが、成功と幸せを産みだし続けるための『成長』をすることやから。
本当はそのまま望む思いを叶えてあげたいけど、そうしてあげられない不器用な神々たちを許してやってくれ」
あ「よぉく理解しましたm(_ _)m」
ス「さて、今日はもう帰ろか姫路名物のアナゴ食いたいな」
あ「いいっすね行きましょ、行きましょ」
神の道はまだまだ深くて、遠くて、温かい。
より数の多い芸術・人文ランキングに移行!現在第9位
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※『笑って、泣いて、神話を学ぶ』、日本の国の始まりと神々のルーツを知る史上最古の連載ファンタジー『アウトロー古事記』、第1話目はこちら☆
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