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CINEMA道楽

映画を見続けて40余年。
たくさん見過ぎて
忘れてしまうので、
映画館やテレビで観た
映画の鑑賞日記を
つけることにしました。
ネタバレもありますので、
未見の人は気をつけてね

 国家機密の暗号を解いてしまった自閉症の少年と、少年を命がけで守るハミ出しFBI捜査官のお話。

 ブルース・ウィルス演じる主人公が、情に厚い熱血漢で、少年とコミュニケーションを取ろうとがんばっている様子はよくわかりますが、少年の方が彼に心を開いていく過程がうまく描かれていないように感じました。
 「自閉症の少年」の描写としては素晴らしいのかもしれませんが、途中で行きずりの見知らぬ女性に預けられてしまったりして、ふたりの絆が深まるようなシーンが無かったように思います。
 冒頭の銀行強盗のシーンなんかいらないので、ふたりが絆を確かめあえるようなエピソードなり、アイテムなりを挿入すれば良かったと思います。
 なので、ふたりが抱き合うラストシーンには感動できませんでした。

 「ダイ・ハード」シリーズをはじめとして、20世紀のアクションスターだったころのブルース・ウィルスは、どの映画でも似たようなキャラクターですよね。
 最近は脇役で映画に出ることが多くなってきましたが、脇役の方がいい味を出しているように思います。
 随分前にNHKの土曜ドラマ枠で放送されていたシリーズの映画版。
 ドラマシリーズはかなりおもしろかったので、映画版も期待してみました。
 公安の中で外国人の犯罪やテロ活動を専門にとりしまる部署が「外事警察」。あまり知られていませんが、実在する組織なのだそうです。いわば日本版CIA。
 ドラマ版でも今回の映画版でも、多額の報酬を支払って民間人を「協力者」として獲得し、その「協力者」を「運営」して犯人摘発に近づく、という捜査スタイルが取られています。
 普通の人の目の前にお金をぶら下げ、その人の弱みや痛みに付け込んで「協力者」として取り込んで行く様子はとても恐ろしいです。

 ドラマ版は、「公安の魔物」と言われる冷徹な外事警察官の住本、そこに所轄から配属されてくる新米女性刑事、「協力者」の女性など、それぞれの心の動きが丁寧に描かれ、日本で開かれる国際会議のテロ未遂事件を追う外事警察の動き、次期総理を狙う官房長官の思惑なども絡み、とても面白かったです。

 この映画は、ドラマを見ていないと人間関係や設定がわかりにくいかもしれません。
 「外事警察」というタイトルなのに、主人公の住本はすでにドラマ版のラストで外事警察を辞め、内閣付きの特命捜査官になっています。映画の後半で政府からもクビにされたので、クライマックスシーンではただの暴走した民間人でしかありません。
 日本に北朝鮮から流出したウランが持ち込まれたのでは?という疑惑から物語ははじまりますが、結局ウランは韓国にあって、テロ未遂も韓国で起こります。
 だから、日本の安全を守る公安の「外事警察」の映画にはなっていないと思います。
 登場人物たちの心理描写も物足りなかったです。
 ドラマ版が良かっただけに、ちょっと残念な映画でした。
 20年ほど前に原作も映画も大ヒットしました。
 当時は「どうしてイーストウッドがこんな不倫映画なんか撮ったのかな?」と不思議に思いました。
 
 平凡な田舎の主婦と一匹狼のカメラマンの不倫物語で、それが4日間という短い期間だったからこそ、ふたりの間で死ぬまで「美しい思い出」として生き続けたのだろう、というのが20年前に観た感想でした。
 主人公たちとは年齢も離れていたし、どんなに美しく見せても、所詮は不倫物語でしょ、と思うと感情移入もできず、退屈に感じた映画でした。

 でも、20年経って観ると少し違う印象を持ちました。
 メリル・ストリープ演じるフランチェスカと近い年齢になり、この映画が「短く刺激的な火遊びの思い出を宝物のように持ち続けた不倫女の話」ではなく、「平凡な日常に突如訪れた人生最大の選択」の物語ではないかと思いました。
 甘いラブシーンもありますが、それよりも「彼と一緒に行くのか、残るのか」という選択を迫られた彼女が、最後の最後まで悩む姿が身に詰まされました。
 少女の頃に思い描いていた夢は、こんな片田舎で平凡な主婦として暮らすことではなかったはずなのに、日々の暮らしの中でいつの間にかその夢を諦め、呑み込んでしまっていたことを、彼との出会いによって気付かされたのだと思います。
 だから、彼に付いて行くことは、彼女にとっては単なる「駆け落ち」以上の意味があることだったのではないでしょうか。
 氷漬けにして心の奥にしまい込んでいた少女時代の「夢」を、溶かしてもう一度息づかせてくれたのが彼だったのでしょう。
 しかし、彼女は結局、溶け出した「夢」を再び氷漬けにし、平凡な田舎の主婦として生涯を終えたのです。
 
 不倫を美化するつもりはありませんが、近い年齢の女性として、彼女の苦悩には共感する部分がありました。
 14歳で交通事故に遭って植物状態になっていた青年が10年後突然目を覚まし、先の人生を探す物語。

 根強いファンの多い黒沢清監督ですが、私は苦手です。
 俳優さんもいいし、設定もストーリーも悪くないと思うのですが、やっぱり苦手。私はスピード感やリズム感の無い映画がダメなんだな、とあらためて感じました。

 カメラ固定の長回しロングカットも、少しある分にはアクセントになって良いのですが、こう長回しばかり見せられるとさすがに退屈。意味があるとは思えないフレームインも多くて、とても疲れました。

「ニンゲン合格」というタイトルは、太宰の「人間失格」のもじりなんでしょうが、登場人物の誰が「合格」のニンゲンだったのか私にはわからなかったです。
 
 名俳優でもあるロバート・レッドフォード監督作品。レッドフォードらしい強い正義感に溢れた作品でした。

 リンカーン大統領の暗殺犯の一味として捉えられ、アメリカ合衆国最初の女性死刑囚となった女性と、彼女の弁護士の実話に基づいた物語です。
 南北戦争を終わらせたヒーローとして、アメリカの自由のシンボルとして、国民から熱狂的に支持されていたリンカーン大統領の暗殺は、当然大事件でした。
 ほとんどの国民、軍人、政治家、官僚、皆が犯人を憎み、極刑を望んでいました。そのため、捕まった容疑者たちは民間人にもかかわらず軍事法廷で裁かれ、でっちあげの証言をもとに、反証の余地も与えず死刑にされてしまいました。

 主人公の弁護士も元北軍の将校で、リンカーン暗殺犯に怒りを覚えるひとりでした。上司の命令で渋々容疑者の弁護を引き受けるのですが、まともに証拠も調べず、買収して証人に偽証をさせ、最初から有罪ありきの軍事法廷のやり方に憤慨します。
 依頼人であるメアリーの毅然とした態度、逃亡中の息子を思いやる母親としての愛にも触れ、弁護士は恋人を失い、世間の批判や上層部からの圧力にも負けず、最後まで正義を貫こうとします。

 リンカーン暗殺事件の裏にこんな事実があったことを初めて知りました。
 「自由と平等の国」となったはずのアメリカの闇の部分です。アメリカ人は、ヒーローやレジェンドをとにかく持ち上げて敬うのが大好きですが、リンカーンの時代から好きだったんですね。
 ヒーローをヒーローたらしめるためには犠牲も止む無し、という考え方も全然変わっていないように思います。

 弁護士の奔走空しく、絞首刑が執行されるシーンは静かで、虚無感に満ちていました。
 根拠の無い熱狂的な世論に、正論で立ち向かうことがとても難しいのは、この当時も今も変わらないですね。