アートが地球に寄与する役割 | 今日はどこへ行きましょうか

今日はどこへ行きましょうか

ゆっきーの徒然日記帳

あけましておめでとうございます。

でも、この一年を計る日は、波乱の幕開けとなってしまいました。

北陸の震災にあわれた方々には、1日も早く元気を取り戻してほしいです。

 

年末の話になってしまいますが、「オラファー・エリアソン展」に行ってまいりました。

ぼくがアートに興味を持ち始めた頃はこの人のことがよくわからず、

「いったいこの人はアーティスト? それとも科学者?」

という印象でした。

というのも、彼の作品は数学、物理学、天文学といった学問を駆使してできた(作った、ではないところが特徴)ものばかり。

でも何回か作品を見て気づいたのが、彼の作品は「見る」んじゃなくて「考える」ことが重要なんじゃないか?ということ。

以前の予習が役立ったかな?グラサン

 

ということで、まず玄関先。

天井に吊るされたきれいな球。

「ホタルの生物圏(マグマの流星)」というタイトルです。

明かりはこの球の中心にあるだけですが、光を通したり反射したりする球が3種類、明かりを覆っています。

これがゆっくり回転すると、周りにはこのような綺麗な明かりが反射。

少しの光でいろんなものを照らすことができるっていうのは、

「そんなに明かりを増やしてどうするの?」

と言われてるみたい。

 

次のお部屋へ。

不思議な機械が鎮座。

上の板にペンがついてて、下の3つのおもりをゆらゆらさせると上の板がグルングルン、ペンもグルングルンします。

で、板に紙を置くと不思議な幾何学模様が。

これ、ひとつとしておなじ絵を描かないんだそう。

だから自分の意図とは無関係に絵ができていきます。

人が制御できない機械もあるってことですね。

 

こんなふうにいろんな作品が点在してますが、このお部屋で面白かったのはこれ。

 

なんだかわからない絵ですが、これは砂漠でまわりにガラス球を配置して、レンズの要領で紙を焼いた跡。

板がゆっくり回転していく中で、このような偶然生まれた螺旋状の線が生まれます。

なんで螺旋になるかは、たぶん太陽の高さが変わるからないんでしょうね。

地球が太陽の周りをまわってることを感じられる作品。

 

これもすごく印象に残った作品。

顔料を置いた紙に、氷河の氷を置いて生まれた水彩画。

まさにいま、地球温暖化で溶けていく氷から「なんとかして!」と訴えられているような。

前に彼は、街中に巨大な氷河の氷を置いて溶けるにまかせた作品を発表してます。

作品を残すことよりも、作品を見た人に危機感を持たせることの方が重要だと考えたんですね。

 

暗いお部屋には、うごめく水とフラッシュ。

「瞬間の家」という題名。

タネは、空中に吊るされたホースから出る水。

それがフラッシュによって水の動きが止まっているのですが、絶えず水の飛び散る音は聞こえ続けています。

さっきの氷河の作品を見たあとだもんで、ぼくたちは一瞬だけ見て全てを判断しすぎてるのかも?と反省。

 

この展覧会が開かれた麻布台ヒルズ、外にもすごい作品があります。

空中からぶら下がる、銀色のような灰色のようなオブジェ。

これも展覧会の一部で、なんと見るのはタダ。

色合いがまるでCGを作る時のモデル造形みたい。

ただしこの作品、ただ見ただけでは深さがわかりません。

 

ということで展覧会の最後の部屋にあるのが、森美術館の館長さんである片岡真美さんとオラファー・エリアソンさんとの対談ビデオ上映。

実は、空気中に浮遊する鉛の成分を抽出し、それを多面体パーツに鋳造して組み合わせたのがこの作品。

鉛なんですよ、これ。

 

空気中にはこれまで人間が排出してきた無数の人工物が浮遊してます。

特に鉛は体内に入ると健康を損なうものの代表格。

つまりこの作品は、地球の空気を浄化してできたもの。

こういった作品が増えるということは、地球をきれいにしていくことにもつながります。

科学が地球を救えるということを証明したアートなんですね。

すごいなあ。

 

お正月を過ぎても、能登の震災と同じ、いやそれ以上の死傷者を毎日出し続けているガザ地区。

イスラエル国内のアンケートで

「人質を取り戻すためにはガザの人たちが死んでも構わない」

と答えているのが半数以上。

人質が帰ってきたときにその犠牲となった数十倍のパレスチナの人々のことをどう思ってるんでしょう?

そんなことを続けて、いがみあって、気がついたら地球には砂漠しかなくなった時、どうするんでしょう?

天災が人災に変わる前に、みんなで知恵を絞って、困ってる人がいたら手をさしのべて。

それは日本人だから能登の震災で痛みを共有するんじゃなくて、世界規模で痛みを共有しないと。

そんな気持ちを新たにした、オラファー・エリアソン展でした。