おかげさまで、今回も盛会としていただき有難うございました。

皆様の一句に感想付させていただきます。

 

まずは1句「特選」とさせて頂いたので、そこから始めます。

 

18.田水張りくれなゐの陽を沈めたり  静可愛

掲句、「田水張る」という季語に対し、「くれなゐの陽を沈めたり」という措辞で景の広がりを感じました。田に水を張るという一日の労働の終わりに夕日を眺めるという単純な景ですが、その「くれなゐ」の色が田水にも映えている様子がなんとも綺麗でした。天球のわづかに傾ぎ聖五月 こちらの句も「聖五月」という季語で「天球」という言葉で、ギリシャ神話の星座の世界も春から夏へと変化していく感じがよく伝わりました。原句は、「走り梅雨」という季語でしたが、季語の変更依頼が届き掲句となりました。季語を変えることでここまで句の印象が変わる例として記させて頂きました。

 

1.連弾の余白を駆ける青葉風       ひょうたん機

これはまたお洒落な景でした。「連弾」ですから、2台のピアノの演奏か、1台のピアノを2名で演奏されたのか・・・ただ、「連弾の余白」ですから、テンポのいい曲というより、緩やかに流れる調子の曲なのでしょう。季語「青葉風」ですから、ストリートピアノなのかなぁと思いました。軽井沢辺りだとなんともお洒落ですよね。麦笛の世襲名人一家たり 「麦笛の世襲名人一家」・・・祖父から孫、もしかしたら曾孫まで・・・世襲で教わって来たのでしょうね。そういうほんわかしたご家族の様子が垣間見えるようでした。

 

2.十薬に弾むひかりや熊野寺       笑い仮面

場所は「熊野寺」ですから「弾むひかり」は木洩れ日、青葉光のような光でしょう。それが「十薬」の花に落ちて花が揺れた様子が丁寧に描かれていました。松蝉を啼かせこの日を忘れたり 季語「松蝉」は小振りの蝉で早くは4月の下旬から啼きはじめるそうです。季語に「啼く」という意味合いが入っているので「啼かせ」が必要なのか?ということと「この日を忘れたり」の「この日」が作者にとってどんな日だったのか、「たり」という強い断定の切字ですから、なぜ?という疑問符が付いて回るように感じました。なんか雰囲気だけに溺れてるんじゃないかなぁ・・・って気がしました。・・・なんか今回は自分も大した句を詠んでないので申し訳ありませんが。。。

 

3.夏空に消えゆくボート白浪と      緑茶

穏やかな景が見えました。海のかなたへ見えなくなってゆくボートと、その先の「夏空」・・・。手前には「白浪」が少し立っている・・・そんな様子ですね。私はボサノバをよく聴くのですが・・・。この曲のイメージかなぁ・・・と勝手に想像しておりました。

騎手はらい嬉嬉走りたり競馬(くらべうま)こちらは、ダービーの一景でしたね。

原句「競馬馬」とされていたのですが、「馬」という字が連なるのがうるさいのでは・・・ということで「競馬(くらべうま)」として頂いたのですが・・・こちらだと、古典的な雰囲気が強くなるでしょうか?・・・なかなか表現に悩まされる一句でした。・・・悪いわけではないですよ。緑茶さんも一歩一歩着実に成長されてるなぁと頼もしく感じています。

 

4.鷺降りぬ茅花流しの川辺りに      カリン

季語「茅花流し」は、五月頃。茅花が無っ白な絮をつける頃吹く風のことですが、その川べりに鷺が降り立つ景でした。作者のお住まいの利根川の下流域は、この「茅花流し」も雄大で美しい景でしょうね。雲の峰メロンの蔓の伸びてをり 掲句、自家で栽培しているメロンの蔓の成長の勢いを感じさせる句でした。作者の背景を知っていると、作者の喜びとか、そんな感情が伝わってきます。

 

6.消印のきりりと黒し夏来る       ハイジ

作者もご自身のブログで書かれていましたが、メールとかLINEとかで簡単に済ませてしまう時代に、友人から届いた手紙、その「消印のきりりと黒」いというところに、作者と友との関係性のようなものが見えたように思います。「夏来る」の季語も初夏らしい爽やかな印象でした。夏はモノの明暗・濃淡がはっきりする季節ですから、季語の斡旋も良かったと思います。青鷺は悠悠と羽畳みをり こちらは季語の一物句。

青鷺が降り立ち、一度翼を広げてそれを畳んだ様子がしっかり描かれていました。こういう句を読ませて頂くと作者の成長ぶりが見えて、句会の司会者としても嬉しく思います。ハイジさんのブログ記事はこちら。↓↓↓

「悠々自適」句会 結果発表 5月 | ハイジのブログ (ameblo.jp)

 

7.鉄線花会釈の人の名を知らず      森 器

作者、森さんは、以前にもご参加いただいていた俳人です。いつも石田波郷の句をご自分なりに読み解いてブログを書かれています。掲句を読んだ瞬間、日々ご自身がやられていることが、こういう形になったか!と感嘆しました。キリリと引き締まった言葉と何気ない一景をしっかりと捉えておられるところが素晴らしいと思いました。

夏帽子都市の峡雨に濡れてをり こちらの句は「夏帽子」と「都市の峡雨」の取り合わせですが、まぁ、こういう景も成り立つのですが、「夏帽子」という季語が活きているか・・・というところが争点になるかと思われました。森 器さんのブログ記事はこちら。↓↓↓

”第109回blog句会「悠々自適」結果発表” | utsuha-moriのブログ (ameblo.jp)


つづく。