感想の続きを記させて頂きます。

 

19.サックスの唸りをあとに桜しべ   笑い仮面

サックスの練習を広い公園(河川敷など)でされている方を吟行の際に見かけたりしました。「花吹雪」とかではなく、「桜しべ」辺りで適当と思いました(花の頃は人出が多いので難しいでしょう)。箸先をふるはせ菜花御膳かな 掲句、どの鉢から頂こうか・・・迷い箸ならいいのですが・・・私は末梢神経障害を先頃患っているので、ついつい箸を持つ手が震えてしまいます。手元を誤ったり、微妙に感覚がずれたり・・・歳を取ったものだ・・・と思います。個人的に共感してしまいました。

 

22.花衣点滴痕に袖通す        ハイジ

ハイジさん、またまた巻頭・・・脂が乗ってますね!言葉の臨場感として個人の体験・経験に勝るものはありません。着眼点がいいのでしょう。「花衣」と「点滴痕」というギャップ、それでも、これからお花見に出掛けられる回復された様子・・・生き生きと描写されてました。個人的な意見では、「通す袖」と名刺止めにされた方が、言葉がより引き締まるように感じました。「未踏」てふ句集広げて春の果 『未踏』・・・鷹編集長の高柳克弘氏の句集ですね。取り上げて下さり有難うございます。彼が大学生から社会人へと成長の過程の句集でした。青春の瑞々しさと「未踏」の世界へと踏み込むそんな句集でしたから、「春の果」という季語もマッチしていました。

 

23.四万十の風よ菜の花いちめんに   みなみ

「四万十の風よ」というフレーズが読者の心をぐっと掴む一句でした。もちろん「四万十川」という地名ですが、言葉の感覚的にあちこちの風がすいすい向きを変えては吹き抜ける・・・そんな景を連想させてくれます。いちめんの「菜の花」も揺れてとても気持ちのいい句でした。天守閣かこみ彩る桜かな 天守閣は、みなみさんお住まいの地域、伊予松山城ですね。正岡子規も松山城を題材に幾つも俳句を遺していますが、「桜」という季語は、多く詠まれつつも、それぞれの桜があっていいように最近感じています。桜という樹がいろんなシンボリックな意味合いを包含しているので、今回、桜の句を幾つも覧させて頂きながら、その多様性とか懐の深さを詠めればいいのだろうと感じました。

 

28.庭桜サファイア婚の茂りかな    静可愛

「サファイア婚」ご結婚45周年ですか?おめでとうございます。もしかしたらご結婚何周年目で植樹した桜が成長して・・・という感慨なのかな・・・と思いました。掲句の場合、季語は「茂り」でしょうね。季重なりになっているので、「桜」が季語なのか「茂り」が季語なのか・・・読者的には戸惑ってしまったように思いました。老いという止め難き荷や花筏 掲句、「老い」を「荷」と表現して下さったところに読者は共感したんだろうと思いました。確かに「老い」という負荷は年々重くのし掛かるように感じますが、季語「花筏」でそれを流れに任せて・・・みたいに軽妙に締めくくったところが素晴らしかったと思います。

 

29.夕闇のふはと被さる花盛り     カリン

上五・中七の「夕闇のふはと被さる」に作者の実感がこもっていたと思いました。夕闇と淡いピンクの桜とが美しく描かれました。さかしまに蜜吸ふ目白さつと発つ 「目白」の素早さ、軽妙さ・・・上手く写生されていたと思いました。私もスマホカメラで何枚もシャッターを切るのですが、10枚くらい撮って、2枚くらい映っていればいいかな・・・って感じですもの。

 

39.笑ひ声通る菜花の迷路かな     滝沢一千雄

明るくて気持ちのいい句でした。「菜花」も成長すると人の丈の高さくらいになりますからね?その「迷路」の出口を探しながら笑い合っている長閑さが読者の気持ちも和まされました。花散れどけふ一日を生き抜かん 先にも「桜」という季語の大きさを記しましたが、自身の決意・心情をぶつける・・・というのは、俳句的にはあまりされない方がいいとは思うのですが・・・「桜」だから許される・・・っていう言葉もあるんだな・・・と感じました。変に上辺だけさらっと綺麗に詠まれるよりもストレートな言葉が似合っていました。

 

以上

 

たくさん、桜、菜の花の景を楽しませていただき有難うございました。