こんにちは。川村義之です。
レスリングの選手は、大変な厳しさで、体を鍛えていることが、普通です。
技術も高度で、精神力も、並々ならぬ強さです。
そこで差をつけるとしたら、もう、体の使い方しか、ないでしょう。
古流武術の、一見不可思議な技も、同様の発想を突き詰めた結果、できたものに違いありません。
そして、それを実証する選手が、既に現れているんですね。
少年レスリング指導者Yさまの、中級第3回目のようすをご紹介します。
「うちの選手が、もうかなり、全日本クラスとも、戦えるようになりました。腕立て10回しかできないくらい、筋力もないし、持久力もないんですが」
「浮き身を覚えて、だいぶ居着かなくなってきているので、互角に組んでも、先に先に、行けるようになってきました」
体力的に、まだ不足があっても、体の使い方で、補って余りあるということです。
むしろ、筋トレでパワーアップするよりも早く、パフォーマンスを高められるんですね。
今回は、丹田を球として使う動きを、お伝えしました。
臍下丹田、中丹田、2つの重心点を、3次元的に回転させるんです。
中心から、末端へと伝わる動きです。
丹田が、球として動かせると、筋力に頼らず、筋力以上の力を、得ることができます。
力の質も、衝突し、反発するものから、浸透し、伝達されていくものに、変わります。
はじめは、臍下丹田を、縦回転させる動きからです。
これには、股関節の脱力が不可欠です。
股関節の可動抵抗を減らすことで、臍下丹田に、強い回転のモーメントをかけることができます。
同時に、わずかでも、重心を自由落下させることもできるので、見た目に小さな動きでも、効果は絶大です。
相手の両肩に手をかけ、股関節を脱力します。
すると、手で肩を、強く押さないのに、相手を腰砕けにすることができました。
続いては、臍下丹田を横回転させていきました。
これは、単に骨盤全体を回すのではなく、いわゆる、壁をつくるということが必要になります。
壁がない回転は、遠心力を生むので、相手の力とぶつかり、食い止められてしまいます。
ところが、壁をつくって、臍下丹田を回すことができると、求心力を生み、相手を巻き込むことができるんですね。
向かい合った相手に、両手首をつかまれます。
骨盤全体ではなく、臍下丹田を回すと、相手は、背中に力がかかるのを感じます。
ちょっと身じろぎした程度の動きで、相手を回転方向に、どかすことができました。
次は、中丹田の回転です。
最初は、縦回転からで、胸のエクササイズのうち、胸の動きの大きいほうを、題材に使いました。
上方向の回転は、相手の脇を差したところから、相手を浮かすことで、試してみます。
腕力、背筋力でやるより、ずっと簡単に、相手を浮かすことが、できました。
「ああっ!軽い!全然軽いですね」
下方向の回転は、相手の首に手をかけた状態から、下に引き崩すことで、試してみました。
首を痛めないように、肩に近いくらいの、首の根元に手をかけます。
相手を、前のめりに崩し、床に手を着かせることができました。
ほとんど、回転とは感じられませんが、胸のエクササイズのうち、胸の動きの小さいほうも、やってみてもらいました。
歩み寄り、触れた瞬間に、相手をのけ反らせ、後退させることができました。
中丹田を使うことで、相手の芯を揺らすことができ、接触点で押されないので、容易に相手を崩せるんですね。
相手に、片手をつかまれた瞬間、その手を離せなくして、好きな方向に、誘導することもできました。
芯を揺らされると、反射が起こり、相手が無意識のうちに、つかんだ手を、より強く握ってしまうからです。
向かい合い、相手を手を拳にし、自分はそこに手のひらを当て、お互い腕を、ピンと伸ばしておきます。
腕力を使えない状態ですが、ここから、相手を数mも、吹っ飛ばすことができました。
次は、中丹田の横回転です。
「最近、ローリングをどうするか?研究しているんですよ」
中丹田の、順・逆回転を使うと、猛烈な速さで、相手を回すことができました。
最後は、2つの丹田を、連動させて使う方法です。
まずは、縦回転からです。
体幹が、S字に波打つように、連動させます。
野生の肉食獣が、自分より重い獲物を、組み伏せるときに、使う動きです。
相手の両肩に手をかけ、体幹を波打たせると、ストン!と落とすように、座り込ませることができました。
腹這いの体勢から、骨盤をつかまれ、後ろから、相手に持ち上げられそうになった状態でも、使ってみました。
背後の相手を、前のめりに崩して、逆に片足を獲りながら、サイドやバックに回ることができました。
「これは、新しいですね!」
横回転は、中国武術でいう、螺旋の動きです。
両手首をつかまれたところから、相手を横に引っこ抜いて、放り投げることができました。
総合格闘技にあるようなシチュエーションでも、螺旋の動きは、威力を発揮します。
横四方固めで押さえられ、腕絡みを仕掛けられたところから、螺旋の動きを使って、相手を引っくり返すことができました。
「あっ、逆に、相手の関節を獲りにいけますね!」
レスリング、総合格闘技など、組み技系格闘技における、あらゆる意味での、相手を崩すという動きが、全て、その場で、パワーアップしたことになります。
筋トレでは、ここまでパワーアップするには、何ヶ月どころか、何年もかかることでしょう。
質量は、うまく使えれば、筋力以上の力として、使えます。
そのためには、多くの関節を、抵抗なく動かせることが、重要です。
重心点である、丹田を回した慣性力が、筋力以上の力だということです。
脱力とは、筋力以上の力を使うために必要で、相手を力で上回ることが、脱力する目的なんですね。
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