こんにちは。川村義之です。
膝を抜く、という言葉は意外に有名ですが、それを正しくできている人は、本当に少ないなと思います。
普通に行われている「膝を抜く」は、「膝を入れている」んですね。
膝の曲がり角を固定している筋力をパッと抜けば、膝まわりは急激に脱力し、膝が素早く曲がることになります。
膝が、急に前に突き出されます。
でもこれでは、膝に急激に荷重をかけていることにしかならないんですね。
その証拠に、これをやると足の前半分、指の付け根の拇指球にかかる重さが一瞬減ったあと、すぐ急激に増すはずです。
これでは、これから、スッと動こうというときに、動き始めようとするなりブレーキをかけるのと同じです。
それに、これだと、膝に負担がかかりすぎて、故障の原因にもなります。
このやり方を「膝の抜き」だと思っている人が大多数なので、さんざんスクワットなどで鍛えているにも関わらず、レスリングや柔道など組み技系の競技をしている人の多くが、膝に故障を抱えているわけです。
ですからこれは、「膝の入れ」だということになります。
では、本当に「膝の抜き」とは、どうやるものなのでしょうか?
その要は、股関節です。
股関節の角度を固定している筋力、それを脱力するんですね。
こうすると股関節が急激に回転し、いわゆる「腰砕け」の状態になります。
骨盤まわりにある重心が、自由落下し始めるということです。
これにより膝、そして足裏にかかっていた荷重が抜け、膝、足裏は体重によって床や地面に押さえつけられなくなります。
このとき、膝の角度を保っていた力も抜くと、腰砕けに方向性が与えられ、曲がることで膝頭が移動した方向に、体が移動を始めるというわけです。
つまり「膝を抜く」とは、膝を床や地面に押さえつけていた荷重を「抜く」という意味が大きいんですね。
普通の「膝の抜き」、すなわち膝が前に突き出るように、膝まわりの力だけを抜き、同時に頭を後ろに振って重心を前に崩しても、自分はただその場でしゃがみこむことしかできません。
結局、移動するためには、わざわざ床や地面を蹴らなくてはならないんです。
しかし、先に股関節の曲がり角の固定力を抜き、すぐに膝の曲がり角の固定力を抜いて、そのとき頭を後ろに振れば、重心は体の前に滑落し、体はそれに引っ張られるように勝手に前に移動するんですね。
これが脱力によって移動する、ということであり、このとき勝手に足裏の荷重も抜けることになります。
また、立っている誰かの両肩に手をかけ、そこから普通の「膝の抜き」をやっても、ただ相手にぶら下がるだけにしかなりません。
しかし、膝を突き出さず、床や地面に対する自分のすねの角度を変えなければ、つまり正しい「膝の抜き」をやれば、腕力に頼らなくても、相手を座り込ませることが可能です。
これが脱力による崩しの基礎であり、腕力に頼らない柔術の本来の基礎でもあり、太極拳などの形(套路)にも、それが遺されています。
要するに、「膝の抜き」とは、股関節の力を抜いて、膝から荷重を抜くことが中心であり、それプラス膝から力を抜く、ということが付随するということです。
「膝の抜き」は、正しくできれば、膝や足首、拇指球などから負担を減らし、太ももやふくらはぎの筋力負担も、減らすことになります。
そして、この正しい「膝の抜き」は、浮き身や居着かない動きの基礎になっています。
同時に、ムチミで体全体を使うことの基礎でもあるんですね。
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