気仙沼日記832回「音楽21:ハレルヤコーラス」 | 西和賀日記 山・雪・味・人 楽しき農山村 

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奥羽山脈「真昼山地」に魅せられて65歳で岩手県和賀郡西和賀町に移住したおじさんの暮らしぶり

クリスマスが近づくこの時期に脳裏によみがえる音楽があります。

ヘンデルの「ハレルヤ」です。

高校時代にオーケストラと共に歌ったことがあるのです。


男子高で、1年の時に音楽・美術・書道から専攻を選ぶことになっていました。

誰が言ったか「音楽は女子高と合同演奏があるぞ」とのうわさに即決です。


イタリアの名門音楽大学帰りの声楽教師に、まずはみっちりとコールユーブンゲン(ドイツの合唱教則本)で声出しを鍛えられました。


秋ごろだったか、「おまえたち、女子高と一緒に歌えるぞ。うれしかったらマジメに練習するように」と声楽教師が言うのでありました。

「ホントだったな。ヤル気だすべ!」







歌う曲はヘンデルのオラトリオ「メサイア」から「グローリア」と「ハレルヤ」。

会場は栃木会館という大ホールでした。

オーケストラは宇都宮短期大学の学生やOBOGたち。

 (のちに、短大付属高校音楽科に世界的ソプラノ歌手となる中丸三千絵が通いました)

アマチュアとは言え、当時の地方にはフルオーケストラは珍しかったのです。

僕らは女子高との共演で気もそぞろ、舞台に向かう足元が浮足立っておりました。


本番が始まり、無我夢中で歌ったまではよかったのですが、女声と男声はオーケストラの後ろでくっきりと分けられていて、しかもみんな指揮者の方を見ているから、女子高生は視覚の外なのです。

あっという間に終わってしまい、控室も別だったので、春から熱い思いで待っていた女子高生との出会いは実現せず、「何もなかったな…」と空虚感が残りました。


でも、むなしい胸の中の空間はいつしか、一途に練習してきた、あの輝くような音楽「ハレルヤ」に満たされていたのです。

本番の舞台の感動たるや、今でもその音楽が脳裏のずっと奥の方で鳴り響いているような気がするのです。 (12月4日)