山釣りや山菜採りなどで、ちょくちょく山に入るのですが、たいてい鉈刃物を持ち歩いています。
釣った魚のハラワタを出すのに使うほかは、何に使うかと問われれば返答にも困るのですが一人で奥山に分け入っても守り神というか、いくらか気休めにもなります。
最近、何十年ぶりに6寸の黒打ちをついつい買ってしまいました。
気が付けば何時の間にか何丁も持っていたのですが、
5、7、8寸はあっても6寸モノを持っていない事で自分を納得させています。(汗)
また、体力が落ちてきたせいか、重い大振りは此のところ余り出番がなくなっていて、5寸あたりが重宝しているからでもあります。
一生モノと云っても残りの人生を考えれば、端から使い倒せないことは承知しています。(涙)
ガシガシ使っているので、少々刃こぼれもありますが、
気にはしていません。
今回は刀身だけの購入なので、鞘は自作します。
どんな形にしようかと考えたが、過去に作ったタイプにする予定。
これは若い頃、ツーリングで秋田へ行ったとき打当のマタギ資料館に展示してあったもので、鞘胴に糸が巻かれ使い込まれたヤレ具合いが渋い。
(何十年も前のフィルム写真を又撮りし掲載)
その時分にマネて自作したものです。
大分、年季も入って来ていい感じになっています。
冬は暇なので製作の様子を詳しく紹介します。
■材料
鉈の鞘材はやっぱり木材でなくては挿した時の小気味良い音も無いし、しっくり来ない。
革シースに入れるなんてのは似合わない。
鞘材は刃にやさしい柔らかい樹木がよいとされ、ホウノキや杉、あたりが定番のようです。
■構造
鞘は使わないときに刃を保護して安全に携帯できることが目的なので、刀身がすっぽり入って覆えれば、何でもよいのです。
作り方には幾つかの方法があると思います。
①板材で四方を囲い接着する。
②板材の片方を彫り貼り合わせる
③木片を丸鋸刃で数回溝切り、峰部分を塞ぐ。
④木片を割って彫り、元通りに貼り合わせる。
③は量産向き、ただ埋め戻しの収まりがやや難。
④が繋ぎ目も見えず、良い仕上がりとなる。
割りやすい材が用意できれば意外と簡単です。
今回の材料は大分前に伐採した杉で薪用としていたが、年輪も詰まっていて素性が良かったのでストックしておいた物です。
柾目どりで余分な所を落とした後、緊張の中割りを行う。
スパッと平面に割れなかったら失敗、ハイ!それまでです。
中割りもうまく行き、芯の赤い部分でギリ、間に合いそうだ。
輪郭外の部分の木目を潰さないように気つける。
小まめに合わせて見ては、赤チョークが付く当たる部分を調整。
片刃なので彫るのは片方のみだが、反対面の出っ張りも少々削る、接着部分を削らないように注意が必要。
隙間があり過ぎて歩くとカタカタ踊るのも困りますが、ある程度余裕が必要。雨の日は木が膨らんで抜けなくなった失敗経験があります。
角鉈なんかを作業で頻繁に抜き差しする場合は、少し広い方が使い勝手がよいと思います。
貼り合わせる前に底の水抜きとなる穴をノミで切って置く。
これが重要、そうすることで切っ先側の肉厚の見当が付きます。
尚、ペーパーヤスリ、サンダー掛けは研磨材が残り刃を痛めるので使ってはいけない。
ボンドで貼り合わせ、暫く放置です。
あとは必要な厚みまで削り込んでいく。
板厚は刀身の厚みと同じくらいにする。
刀身に絡みつくような、なるべく薄く小さいのが好み。
必要以上にぶ厚いのは嵩張るだけです。
紐通し穴は若干逆ハの字で
少しづつ形を整えて行く。
■水抜き穴
貼り合わせ前に切った穴をドリルで広げ、配線工事で使うリングスリーブを打ち込む。穴だけでもよいが・・・
口元のタガとなる銅板を小さ目にラジペンで押さえハンダ付けする。巻いてから釘で止める方法もあるが、これだと密着は甘い。
タガの内側の角を少し落として、温めながら打ち込むと鞘材にガッチリ密着し抜けることありません。
■抜け止め
紛失も困りますが、地下足袋の足の甲にでも落ちたら大変。
山歩きでは止め具は必須です。
よくある革バンドとホックで止めるタイプは、挿すときバンドを切ったりでは邪魔くさく使い勝手が悪い。
これまで試行錯誤して来ましたが、コの字金具を指で動かしネジ頭を越えパチンとロックする。この方式がシンプルで具合いがよいです。
手袋をしていても、手探りで確実にロックできてハードな藪コギなど長年使っていますが不具合はないです。
ただ、難点はロックやフリーでコの字が止まる軌道の調整を針金の曲げ具合でピッタリと作るのが大変です。
材料はクリーニングハンガーです。
ペンチで曲げる事、3個目で成功
軸穴にはブラインドリベットを使います。
抜け止め仕掛けが完成
解除
しかし、昔しに作ったものと比べ、操作時にパチンと弾ける音が弱い?感じです。
同じ2mm強の針金ハンガーだが材質が違うのか、バネ性というか反発が少し弱いようだ。
機能上は問題ないが暇を見て他のハンガーを物色して見ようと思います
■仕上げ
鞘胴の補強として何か巻くと見た目にも良くなります。
鞘口と同様に銅板を巻き始めて見ましたが、どうも重々しい高級な感じで某土佐のメーカー品の様になるので取り止め。
あくまで実用品として破れを繕った作爺のズボンでも違和感のない素朴な感じにしたいと思います。
そんなんで結局、手持ちのタコ糸巻きの仕上げとします。
木工ボンドだとすぐ乾いてくるので、ご飯を練ったノリを作り、テープ養生した後に巻き付けます。
足で糸を踏んづけてピンと張り、鞘の方を廻すと上手く行きます。
この後、エポキシ接着剤をすり込んで固めておくと、糸がすり減って来ても解れません。
■腰ひも
腰鉈はやっぱり紐でなくちゃイカン。
ベルトなんかに通してぶら下げては台無しです。
入山支度で腰紐をぎゅっと結んで、サアー行くか!と気合も入るというものです。
過去に山菜ザックが壊れたとき、この紐で応急修理もできました。
これだけでも良いけど、口元が体に密着する関係で衣服を挟んだり、切ったりする。
本結びのとき、もう一回くぐらせるマタギ結びが緩まず安心です。
作りたての白木はニスや塗料など塗りたくなりますが、使い込む程に無垢のイイ風合いが出て来るのでそのままです。
手入れはたまにアマニ油をすり込んでいます。
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