中国、「影の銀行」 リスク拡散懸念
中国は米国債の最大保有国である。4月末の残高は1兆2649億ドルで外国保有全体(5兆6,078億ドル)の22%を保有している。 日本の保有額は1兆1,003億ドルと中国に次ぐ。国際協力銀行の渡辺博史副総裁は、6月28日の記者との懇談会で、「中国が不良債権処理のため、米国債を売るかもしれない。」と語った。2010年以降、不動産価格の上昇やインフレ懸念の高まりから、中国政府が金融引締めを実施した。中小企業や経営不振企業の資金需要に応える形で、シャドーバンキングが存在感を高めていった。中国内では、シャドーバンキングを通じた融資額が国内総生産の5割に達したとの試算もあるが、実態把握は極めて困難なようだ。 「影の銀行」規制強化急ぐ 地方不動産に資金 中国政府は膨張する理財商品の規制強化を急いでいる。29日の講演で銀行業監督管理委員会(銀監会)の尚福林主席は規制の必要性を強調しており、今後新たな規制策を打ち出すとみられる。ただ、理財商品の規模は当局発表を上回るとの見方もあり、どこまでリスクを管理できるかには不透明感も残る。 「監督強化によって理財商品のリスクの拡散を防がなければならない」。尚主席は同日の講演でこう強調した。銀監会は今年3月、理財商品の主要な販売者である銀行に対し理財商品の販売金額を銀行の総資産の一定割合に抑えるよう通知、購入者に対する商品内容の十分な説明などを義務付けた。銀監会は新たな監視強化策の検討を急ぐとみられる。理財商品を巡っては、中堅の華夏銀行が販売した理財商品の元利金が期日までに返済されず、昨年12月に購入者が銀行に対して返金を求める抗議活動を行った。口頭で「元本保証」をうたって販売する銀行が多く、債務不履行(デフォルト)が発生した際に、銀行と投資家のどちらが損失を負うのかトラブルになりやすい。 個人や企業が理財商品に投じた資金は、地方政府傘下の投資会社(融資平台)や不動産開発会社などを通じて、地方のインフラ不動産開発や資源投資などに充てられている。中国経済が減速するに従って、理財商品が将来デフォルトするリスクが無視できなくなっている。英米格付け会社フィッチ・レーティングスは今月、中国の理財商品の規模を約13兆元とする推計値を発表した。尚主席が29日に明らかにした8兆2000億元を大幅に上回っており、市場には「実際の規模は不透明」との不安も根強い。 2013/6/30 中国「影の銀行」の高利回り商品、残高130兆円に 中国の銀行業監督管理委員会の尚福林主席は29日、高利回りの資産運用商品である理財商品の2013年3月末の残高が8兆2000億元(約130兆円)に達したと明らかにした。理財商品を通じて企業や個人から集まった資金は主に地方政府の不動産・インフラ投資に流れており、個人や企業にリスクが広がっている。 上海市で同日閉幕した金融フォーラムの講演で明らかにした。理財商品の残高は中国の12年の名目国内総生産(GDP)の約16%、人民元預金残高(67兆元)の約12%に相当する。理財商品は銀行の通常の預金・融資とは別ルートで資金を集める中国の「シャドーバンキング(影の銀行)」の代表的な存在。信託会社などが組成し、主に銀行を窓口に販売する。利回りは約3%の1年物定期預金金利を上回る5~10%。低金利に不満を持つ預金者の需要を取り込み、数年前から急膨張してきた。集まった資金の運用先は地方政府傘下の投資会社(融資平台)の貸出債権や債券、短期金融市場など様々な種類がある。 規制のはざまで拡大してきた金融商品で、当局の監視の目が行き届いていない。デフォルト(債務不履行)時に投資家である個人や企業、販売者である銀行、インフラ開発の実質的な主体である地方政府など、誰が損失を負担するのかも曖昧なままだ。投資プロジェクトなどが行き詰まれば、幅広い関係者が損失リスクを負担しなければならない可能性がある。 尚氏は講演で「正確な対応措置さえ取れば、リスクは十分管理可能だ」とリスク管理の重要性を訴えたが、米著名投資家のジョージ・ソロス氏は「米サブプライムローン問題に似ている」と警告している。2013/6/30 中国 銀行理財商品の危うさ中国の中央銀行である中国人民銀行が先月、市場に潤沢な資金を供給しない引き締め気味の金融調節をした。残高が8兆人民元(125兆円)にも膨らんだウエルス・マネジメント・プロダクト(WMP=銀行理財商品)と呼ばれる投資商品をけん制したとみられている。 代表的なのは銀行が発行し、国債などで運用する商品。米MMF(マネー・マーケット・ファンド)に似ており、金利は年5%程度と1年物預金の3%強より高い。 信託会社が組成、運用にかかわり、銀行が売る商品もある。短期資金を調達し、不動産関連(インフラ融資を含む)などで高リスク運用し、金利は年10%になることもある。簿外扱いされているものも多く、米国で証券化運用のためのSIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)を小口化したような商品だ。 銀行は期末などにそうしたWMPの償還資金を手当てする。流動性管理がずさんで資金を取り上がることも多く、HSBCは「人民銀行は今回、銀行の安易な姿勢をけん制した」としている。 高リスクWMPでは華夏銀行が販売した商品で債務不履行の例がある。引き締めで償還資金が手当てできず債務不履行が増えれば、WMPの人気が低下する。 その場合WMPで資金調達をする割合の高い中小銀行の経営に響く恐れがある。米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)危機では、SIVが市場調達できなくなり金融システムが動揺した。 人民銀行は市場を落ち着かすための声明で「商業銀行は調達と運用のミスマッチを減らすべきだ」と指摘した。中国では銀行批判が強いだけに、人民銀行は簿外という不透明な形で高いリスクを取る業務をけん制せざるを得ない。 しかし簿外取引の規模を縮小すれば、運用している不動産や株式に売り圧力が強まる。中国の経済は不透明な金融取引に支えられていた面があるのも事実で、それを正常化しようとすると経済に強い調整圧力がかかることになる。 2013/7/1 銀行の理財商品、当局への登録義務付け 中国中国銀行業監督管理委員会は、高利回りの資産運用商品である理財商品の情報を当局に登録するよう銀行に義務付ける通知を交付した。2011年、12年に販売した理財商品も含め7月31日までに登録を完了するよう求める。対象は個人向けの理財商品。今後は未登録の理財商品を銀行は販売できなくなる。理財商品は3月末で残高が8兆2000億元(約130兆円)に拡大し、中国の金融システムのリスク要因と指摘されている。これまで銀行監督当局は理財商品の内容を把握できていなかった。2013/7/3 影の銀行、中国揺るがす 融資規制を背景に膨張 銀行融資とは別ルートで資金を融通する「影の銀行(シャドーバンキング)」が中国で急膨張し、世界で警戒感が高まっている。主な資金供給源である高利回りの「理財商品」だけでも、残高は8兆2000億元(約130兆円)。中国政府は実体経済とかけ離れたマネーの膨張を抑え始めたが、影の銀行は中国経済を揺るがす危うさをはらんでいる。 上海から150キロメートルほどの位置にある江蘇省常州市。中心部にある市政府庁舎の近くでは油圧ショベルがうなりを上げ、マンション「天誉都市花園」の建設が進む。 その事業費6億元を支えるのが理財商品。銀行の1年物定期預金の金利は約3%だが、天誉都市花園に投資する理財商品は年11%の予想利回りを掲げて資金を集めた。 「中国の五大鬼城(ゴーストタウン)」。マンション開発が相次ぐ常州市は、内モンゴル自治区オルドス市や遼寧省営口市などと並んでこう呼ばれることがある。天誉都市花園も投資計画がいったん狂えば、企業や個人、金融機関のリスクが一気に顕在化しかねない。 理財商品の残高は中国当局の公表数値でも今年3月末で8兆2000億元。3年余りで8倍強に増え、中国の名目国内総生産(GDP)の約16%に達した。企業が余剰資金を別の企業にまた貸しするケースなどを加えた「中国の影の銀行は36兆元、GDPの7割に上る」(JPモルガン・チェースの朱海斌氏)との指摘もある。 統計数字をみても膨張ぶりがうかがえる。債券発行や企業間のまた貸しなどを含めた広義の資金調達を示す「社会融資総量」は今年1~3月期に前年同期比58%増えた。人民元建ての銀行融資が同11%増だったのと比べても伸びが急だ。 問題はこうした資金の流れを十分に監視する法制度の整備が遅れていることだ。国際通貨基金(IMF)は昨年10月、「中国の金融システムの安定に試練を突きつけている」と指摘。複雑に絡み合う取引の不透明さが、中国リスクへの懸念に拍車をかける。 影の銀行が膨らんだ背景には、「失政」もあった。中国政府はリーマン・ショック後の2009~10年に銀行融資の拡大を促した。その後、一転してインフレ退治のために金融を引き締めたが、地方政府や企業には景気失速を防ぐために投資増を求めた。銀行融資の不足を埋めるように、貸し手と借り手を結びつける影の銀行が膨らんだ。 習近平指導部は実体経済とかけ離れた金融の膨張に神経をとがらす。中国人民銀行(中央銀行)が6月に資金供給を拡大せず、短期金利の急上昇を容認したのも、信用バブルをこれ以上拡大させないというシグナルだ。 人民銀の周小川総裁は「確実に効果が出た」と、胸を張ったが、金利上昇が株価の急落に跳ね返ると、慌てて「市場の安定を守る」と声明を出す場面もあった。ブレーキが利きすぎれば、資金の流れに目詰まりが起き、投資や消費が冷え込んで実体経済への下押し圧力が増す。政策の透明性を高め、世界に安心感を与えられるか。中国政府の綱渡りの政策運営が続く。2013/7/5 中国の財テク投資132兆円 高リスク問題視の声も 中国銀行業監督管理委員会の尚福林主席は29日、中国で「理財商品」と呼ばれている財テク商品関連の投資規模が、8兆2千億元(約132兆円)に上っていると明らかにした。リスクの高さが問題視されており、尚主席は「さらに監督を強め、リスクを厳格にコントロールする」と強調した。上海市で開催中の金融シンポジウムの講演で述べた。尚主席は、投資された資金の70%は実体経済に向けられていると説明した上で「われわれは既に総量規制や投資目的の管理などについて定めている」と強調した。理財商品は高利回りが特徴で、集めた資金は「影の銀行(シャドーバンキング)」と呼ばれるノンバンクを通じて、正規に銀行融資を受けられない不動産企業などへの融資に利用されている。融資が焦げ付けば「中国版サブプライムローン問題」に発展すると心配する声が出ている。