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太陽電池の覇者は今や中国である。再生可能新エネルギーの代表格といわれる太陽電池は、当初日本勢が強く、2005年には生産量トップ5のうち、4社を独占していた。

中国の太陽電池メーカーは、ほとんど赤字に

その後、ドイツのQセルズ社が世界チャンピオンになり同国が台頭してきたが、この2年間で中国勢は雨あられの設備投資を断行し、今や世界の太陽電池市場において63%の圧倒的なシェアを持つにいたった。ところが今年3月、世界首位のサンテック(中国)が経営破綻し、中国の太陽電池メーカーはほとんど大赤字であることが浮き彫りになってきた。
加えて、最大市場の欧州においては中国メーカーの安売りが大問題視され通商摩擦が激化し、中国の太陽電池各社は一気に苦境に陥ってきた。ここでまたもや中国お得意の公共投資による救済がアナウンスされた。何と中国政府は2015年末までに太陽光発電の導入量を従来計画より1400万キロワットも上方修正し3500万キロワットにするというのだ。政府主導で内需拡大を後押しし、新エネルギー産業の立て直しを狙うとみられるが、はてさていかがなものか。
これで、中国勢の太陽電池における世界シェアは80%以上になり、まさに太陽電池王国を築くことになるが、世界のエネルギー情勢の中でどれほどのインパクトがあるのかについては疑わしいばかりだ。
日本においても、メガソーラーブームでおそらくは450カ所以上の大型プロジェクトが持ち上がっており、買取価格が高いことからハゲタカの外国勢が日本荒らしに乗り出してきている。しかしながら、これらのメガソーラーがすべてフル稼働したとしても、日本国全体のエネルギー消費の1%もカバーできない。どだいが、太陽電池という世界は市場でいえば、せいぜい5兆円程度であり、石油400兆円、石炭200兆円という既存の化石燃料市場にとってはけし粒のような存在でしかないのだ。
こうした状況下で米国発のシェールガス革命の波が世界を覆い始めた。エネルギーのkWhあたりのコストは石油10円、太陽光25~30円に対し、シェールガスはたったの6円。しかも埋蔵量は既存の天然ガスと合わせ、アメリカだけで少なくとも150年はある。CO2も石炭と比較すると40%減、石油と比較すると10~15%減とあまり出さない。太陽光、風力をはじめとする再生可能エネルギーは、そのバラ色の夢が一気にトーンダウンしてきたのも無理はない。今も昔も、どんな領域においても「安くて使い勝手の良いもの」には決して勝てないのだ。
米国では現在1万本のシェールガス採掘を進めているが、来年にはこれが2万本になる。何しろ、石油と違ってピンポイントで見つけられるだけに、どんどん掘れるのだ。これがコストの安さにもつながっている。
加えてシェールガスからは、石油由来とほぼ同様の原料が安価に作れるので、太陽光と比べればその付加価値はとんでもなく高い。米国勢はシェールガスを原料とするエチレン工場建設に着手しており、ダウとエクソンが既に大型投資を実行、いずれも3500億円を投入する。加えてサソール、シェブロン、フォルモサなども次々とエチレンの新工場建設をアナウンスしており、これらの設備投資はトータルで1兆5000億円にもなる。
世界で最も安いエネルギー(電力)を堀り、世界で最も安い材料を手に入れ、製造業復活を宣言した米国は間違いなく、もう一度ブッチ切りの世界最強国に躍り出るだろう。そして、鉄、アルミ、炭素繊維をはじめとする素材力、建設機械・鉱山機械、LNGプラントなどで最先行する日本の技術力が米国発のシェールガス革命に大きく貢献していくことになるのだ。
BRICSは減速、欧州は低迷し世界を牽引する日米
エネルギーのほとんどを石炭に頼り、CO2をはじめとする公害問題に苦しむ中国は、太陽電池に全力投球という姿勢を見せるが、この米国発のシェールガスラッシュには到底太刀打ちできない。先ごろアジア開発銀行は中国のGDP成長率(2013年)を8.2%から7.7%に下げ、2014年についても7.5%と低く見積もる見通しを明らかにした。これに対し日本は当初予想の1.2%から1.8%に上昇、アベノミクス効果による内需拡大とシェールガス革命を要因とする円安効果が歴然とあらわれてきた。
インドの成長率も6.0%から5.8%にダウン、ブラジルも一気に経済が減速、ロシアも天然ガスが伸びず苦しい。この10年間をひっぱってきたBRICSがついにトーンダウンしてきたのだ。EUは2番底の景気低迷にあえぎ抜け出すことができない。
それでは、これからの数年間の世界経済をひっぱる国はどこか。いうまでもない。シェールガス革命で最強国にひた走る米国と、アベノミクスで復活鮮明な日本であり、再び日米主導の黄金時代がやってくるのだ。(東洋経済ONLINE 2013/7/29)

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