【Pscho】シリーズもフロイト再考フェーズに進み、前回は【Psycho】フロイトの描く「自我世界」をやりましたが、一般の方が「フロイト」に関して興味を持って接近する機会は矢張り
ではないでしょうか?そして(To be very honest and with no hesitatation to say)そのような方は「人の心理」や「(特に)ご自身の知らない部分(無意識)」に興味や関心があるといってまず間違いないと思います。
(フロイトの生涯には理論変遷がありますが)フロイトが「夢判断」を著したころの簡単な纏めとしては、
(1)夢は無意識(エス)の欲求の発露(夢という精神現象の目的は潜在的な願望の充足)
(2)但し、それは抑圧を受ける為、検閲された表現となっている
(3)従って、夢を記録し、自由連想を行って夢の中の事象に関連する意味を探り、本当の意味を判断する
というものです。しかし、これはフロイトが自分の夢を自己分析して得た結論であり、与件と問が結論となる「循環論法である(注)」という批判を容易に受けることになります。
注:この中で「ヨイショ」と書かれた中野信子さんの記事はこれ。精神現象を「外から観る(脳神経学)」方が「内から観る(精神心理学)」のを面白がる、ということの方が興味深いですね。
フロイト(精神分析学)とならぶ大家の一人であるユング(分析心理学)は異なる見方をしています。(注)まず彼は夢が心の状況を表現し、自我や意識に対して補償の役割を果たしていると考え、無意識のみならず意識も相互的に夢に作用し、更に(ここがユングのユングたらしめているところですが)無意識(集合的無意識あるいは元型)から意識に向けてのメッセージであると考えました。
注:Copilotなどは↓の様に対比させますが、これで「相違を表し」ているといえるのでしょうか?「自我に対する補償」とは「満たされない願望充足(の願望)」とどう違うのでしょうか?また、双方とも観念連合を自由連想や「語ってもらう(どう違うの?)」によって確認、解釈されるのは(寧ろ)極めて類似しているというべきでしょう。唯一の大きな違いが(フロイトが非科学的だとして忌避した)ユングの「集合的無意識」なのでしょうが、それも「鶏(集合的無意識があり、それが発露する)が先か、卵(個に誕生後共通文化的価値等が刷り込まれる)が先か」という感もあります。
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フロイト |
ユング |
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夢の解釈 |
願望充足、睡眠の守り手 |
心の状況をありのままに描き、自我や意識に対する補償 |
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夢分析の方法 |
自由連想法 |
夢を語ってもらい分析する |
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無意識の捉え方 |
個人の体験と経験によって形成される |
意識と無意識が相互的に作用する |
ここ迄で当時の精神分析学等が「(観察の対象である自我による)内省される現象を(観察の主体である自我により)解釈せざるを得ない(また他の方法で検証することもできない)」という本源的弱点をさらけ出してしまうことになります。(しかし、そのような批判を浴びながらも未だにフロイトや夢判断が支持される・・・人々に思い当たる節がある・・・ということも見逃せない事実です。)
ここでは精神分析や(分析)心理学という「(内側から観る)内省的現象記述アプローチ」からいったん離れて、
夢とは何か(現在どのように考えられているか)
を異なる観点(「外側から観る)神経生理学的アプローチ」等)から再考してみましょう。
↑の記事を見ると、夢は
(1)人間が睡眠中(除白昼夢)に観る(注)
注:必ずしも視覚だけではなく、夢で経験される知覚認知は「ヒトの場合、視覚の夢96%、聴覚の夢25%、動く夢19%、味覚の夢2%、触覚に関する夢1%、嗅覚の夢0%という結果...、先天性全盲者は視覚ではなく視覚以外の感覚を感じる夢を見る」だそうです。
(2)主としてレム睡眠の時に出現する
(3)「大脳が覚醒時と同様な活動状態を示す脳波になる。時にはその活動に刺激されて反射運動がみられる場合がある。この反射運動には、寝ている状態で手足を動かす、声を発する(つまりは寝言)などある。寝言の中には歌を歌いだす」(注)
注:私が米国に駐在していた時、寝言も英語だったと神様から聞いています。
(4)夢を見る理由については現在のところ不明
(5)身体状況の影響では「尿意が夢に反映されやすいのは良く知られ」(注)ていますが、飢えや渇き等の身体状況や、気温等の外的環境刺激がどのように夢に影響するかは分かりません。
注:私自身の経験では、幼児の時にトイレに行った夢を見ておねしょをしてしまったことを覚えています。
ということで、大脳の(REM - Rapid Eye Movement)睡眠時における「(なんらかの)精神活動の結果または産物である記憶」(注)であるという以上のことは(科学的には)言えないと思います。(その意味で夢判断や夢分析を「夢占い」と大同小異と批判する人もいますが、それはそれで誤っているとは言えません。「夢占い」も経験的な夢の象徴解釈の試みであることに変わりはないのですから。)
注:大体夢を観ている時、「視座という主体認知(「私が見ている」という「意識」)」が感じられますが、それは覚醒時の意識(見当識)とは全く違う「意識」であることは間違いありません。また、観た夢を忘れてしまう(夢の内容が記憶にない)ことは都度あることですが、その場合でも「夢を観たという記憶」があることを忘れてはなりません。
その意味で、フロイトの「願望充足説」は100%正しいわけではありませんが、同時に100%間違っているわけでもなく、「願望充足説に基づく解釈」が奏功することもあったでしょう。要すれば夢という現象の前で「夢が何なのか、夢を観ている時の意識がどのようなものか、何故夢を観るのか、何が夢の原因となり又は影響を与えるのか」まだ分からない、というのが「科学的な結論」なんでしょう。(フロイトの偉大さは、少なくとも彼以前にはなかった「夢には(無意識に関連している、何らかの)意味がある」という主張を社会に定着させたことでしょう。)
とはいえ、
これで終わっては身も蓋もないので、(願望充足説の)フロイトを悩ませた「悪夢や不安夢の解釈」はどうなのか?に移りましょう。フロイトは第一次大戦を経て(エロス・リビドーの対極にある)タナトスの概念を取り入れ、「例外」を認めたようです。(注)確かに自我防衛機構として外傷的な経験や不安(外傷的な経験の予想)を「予め経験する」ことは十分に考えられ、あり得ることです。
注:出典
| Freud considered that the experience of anxiety dreams and nightmares was the result of failures in the dream-work: rather than contradicting the "wish-fulfillment" theory, such phenomena demonstrated how the ego reacted to the awareness of repressed wishes that were too powerful and insufficiently disguised. Traumatic dreams (where the dream merely repeats the traumatic experience) were eventually admitted as exceptions to the theory. | フ ロイトは、不安夢や悪夢の体験は、ドリームワークの失敗の結果であると考えた。「願望充足」理論と矛盾するのではなく、そのような現象は、あまりにも強力 で十分に偽装されていない抑圧された願望の自覚に対して、自我がどのように反応するかを示しているのである。トラウマティックな夢(夢は単にトラウマ体験 を繰り返す)は、最終的には理論の例外として認められた。 |
不安夢の序に、最後に(余り夢は覚えていない質なんですが)私の経験する、繰り返し見る不安夢(既視感の有る夢ではなく、現実に何度も見る同様の夢)についてご紹介しましょう。
- 時空的にあり得ない組み合わせの背景や環境の夢です。(例えばエレベーターが数百階まであるとか、異なる時代の友人や同僚が同時に現れる等)
- 例えば私は巨大な(日本橋三越のような)旧い格式のある石造りのような建物の薄暗い回廊をウロウロとさ迷い歩いています。(他の例では広々としたモール建物の中にいます・・・眠っているのに「あー、これは昔行ったWhiteplains(NY州)のモールだな」という意識があったりします。)
- なんでそこにいるのか、何を求めて、何をしようとさ迷っているのか分かりません。しかし私は「解決」を求めてさ迷っている、という意識があります。
- その為に回廊のドアを開けて中に入ってみたり、旧い(日本橋三越にあるような金属格子付きの)エレベーターに乗ったりしますが、所謂"going nowhere"で(ぼんやり)目的地と感じる地点から却って離れてゆくことを認識し、不安になります。
- どうあがいても、どんなに歩いても「決して目的地に到達しない」という不安感が高まります。
- そして絶望感を感じながら覚醒します。
フロイトなら「それは貴方が子供の時に持った、禁断の性的欲望が満たされない為にその充足を求めてさ迷っていることを表しています。」と言うでしょうか?
意識の内省的観察を行うことを唯一の方法とする精神心理学では、そうであるという立証も、そうでないという反証もできない
ことを痛感します。(まぁ、大脳神経生理学でも無理だとは思いますが...)


