ライブ映画『劇場版 優しいスピッツ』感想【観るべき3つの理由/ネタバレなし】 | とかげ日記

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●スピッツファンも初めての方もぜひ!



映画代としては高価な2,700円を払って観たけど、ライブ一本を観るとすれば安すぎるくらいのクオリティのライブ映画でした。

以下、未見の方が観るべき3つの理由を挙げていきます。そのあとは今作に限らずスピッツの魅力を書いていきます。

【理由①】ステージが独特
北海道帯広の旧双葉幼稚園園舎を舞台に演奏していますが、この建築物は大正11年に建築された国指定の重要文化財です。天井が八角形の建物で装飾も外観もとても素敵。聖地巡礼に行きたいファンの方が確実にわらわら出てくるでしょう。

そんな可憐な空間でありながら、アットホームであり、緊張感もある不思議なムードの中で演奏するスピッツとクジヒロコさん(サポートミュージシャン)の5人。彼らを身近な人にも憧れの理想の人にも見せるステージとカメラワークがイカしています。

【理由②】セットリストが貴重
ネタバレになるので曲目は言えませんが、セトリが貴重です。メンバーも認めていました。このステージだからか、アッパーな曲が少なく、しっとりと聴かせる曲が中心。大音響で「●●●●」をしみじみと聴けて本当に嬉しかったです!

【理由③】メンバーの素が観れる
さすが松居大悟監督! 曲間のMCや映画後半のドキュメンタリーでもそうですが、スピッツの素の魅力にあふれています!!(邦ロックファンにとっては、松居大悟監督はクリープハイプや大森靖子のMVの監督を務めていることでも知られています。)この半分プライベートで半分オフィシャルな感覚は、最新作のアルバム『ひみつスタジオ』でいうところの「ひみつ」のニュアンスに近い面があるのかも…。

【スピッツの魅力】
Adoのヒットソングに「新世界」という曲があるが、まさにスピッツの本作『劇場版 優しいスピッツ』は新世界を夢見させてくれる前向きで革新的なバイブスが輝いている。

草野マサムネさんの美しいボーカルはCDと比べても遜色ない素晴らしさ。必殺のアルペジオや、キャラクター性の豊かなギターフレーズを惜しみなく演奏する三輪テツヤさんのギター。田村明浩さんのグイグイ音程が動くベースと、崎山龍男さんの曲によって表情豊かな鉄壁で安定したドラミング。ウワモノの二人が創り出す光景とリズム隊の二人が産むグルーヴが演出する、これほどワクワクして楽しい音空間は洋邦問わずスピッツだけだ。

打ち込みが幅をきかすシーンの中で生ドラムの魅力にあふれる彼らのスタイルは大変貴重だ。ただ、打ち込みか生音かはスタイルの違いにすぎないので、打ち込みの曲を下に見たりはしない。しかし、やはり生音が自分のハートの型にぴったりフィットする。

アルバム『小さな生き物』において金魚が、そしてシングル「ホタル」では自転車が、両者共に空に浮かんでいる不思議なアートワーク。スピッツ作品のアートワークは繊細かつファンタジーであり、現実から少し位相をずらした浮遊感のあるものが多い。僕はそこに底知れぬ闇と光と魔法を感じる。そして、それらの要素はこの劇場版でも感じ取ることができる。

スピッツメンバーが自分たちのことを「優しい」と表現してきたことはおそらく無い(「優しくなりたいな」という曲名の曲はあったけど)。だから、映画のタイトルに驚いた。しかし、こんなに優しい旋律ってある?ってくらい良メロの楽曲たち。そして、花鳥風月と小さな生き物と「君」への温かな愛がある歌詞の視点。まさしく、『優しいスピッツ』というタイトルは的をいている。甘酸っぱい恋愛の季節を経て、優しくない戦争の季節の中、スピッツは僕らに優しく新しい魔法をかける。

Score 8.5/10.0

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