●この思いはハイキできない
2014年結成、スリーピースガールズロックバンド"リーガルリリー"のEP。
ギターサウンドやリズムの感触は、アジカンなどゼロ年代以降のギターロックバンドからの流れを感じさせる。そして、本作はライブハウスだったらこんなギターの轟音が鳴り響くんだろうなと想像をたくましくさせるようなライブ感あふれるアルバムだ。ホールで爆音で鳴らしても気持ちよさそうだし、場末のライブハウスでも空間を支配してキまりそう。
秀逸な曲は#2「ハイキ」だ。彼女達の曲の中にあって、スッキリした構成と強い歌メロで聴きやすい。イントロ含めギターのリバーブのかかり具合が絶妙な箇所は必聴だ。
⬆︎「ハイキ」MV
そんなギターのリバーブや少女のようなあどけない声色のボーカルが象徴する、彼女達の音楽の不思議で儚げで敬虔なバイブス。そのバイブスがいかんなく発露されたこの曲は「ハイキ(廃棄)」してはいけない。必要としている人が必ずいる。そして、このEPは、ジャケットのモチーフにゴミ箱の中にいる女の子を据えているが、このデザインも「ハイキ」という曲名に対してまさに示唆的だと思う。
以前、2022年発表のアルバム「Cとし生けるもの」のレビューのタイトルにも「●命を鳴らすロックバンド」と僕は名づけた。それはリーガルリリーが一貫して歌ってきたことだと思う。"生きている"というバイブスとエネルギーを彼女たちの音楽からは取り分け感じる。くるりの岸田繁さんは彼女たちの音楽を「等身大」と評したが、等身大で命を鳴らす彼女たちだからこそ、切実なエモーションを響かせることができ、アルバムタイトルのとおり、現実とファンタジーの間、または目に見えるものと見えないものの間という立ち位置(「where?」)にいることを伝えることができるのだと思う。
#1「若者たち」のイントロからしてゴリゴリのオルタナティブロックのサウンド。まず、このギターの歪みにエネルギーを感じる。
#3「ライナー」のサビのキャッチーな鋭さこそが生命力。曲中で彼女らの名曲「蛍狩り」のようなポエトリーリーディングがあるのが嬉しい。(ポエトリーリーディングは#2「ハイキ」にも少しあるし、#4「管制塔の退屈」にもある。ポエトリーリーディングのパートは詩人である"たかはしほのか"が本領発揮できる無二の磁場だ。)
最後の曲#5「キラーチューン」。ポカリスエットのCMのようなさわやかなサビの歌メロだけど、歌われているのは殺し屋と世界のこと。この天然なギャップこそがリーガルリリー!
アルバムや曲ごとに音楽性が変わるカメレオンバンドではないが、彼女たちの放つ曲はどの曲もリスナーの心臓の核をめがけて一直線(or一曲線)に飛んでくる。 それは、初期に発表された稀代の名曲「リッケンバッカー」の頃から変わらない。不思議で不可思議な歌詞とピュアであどけなく聴こえる歌声、そして無骨なオルタナティブのサウンドにより、バンドのオリジナリティの強度は本作でも世界で唯一無双だ。これからも陰日向で見守っていきます。
⬆︎過去の曲だが、『リッケンバッカー』が名曲であるという位置付けは今後も変わらないだろう。
⬆︎本EPトレーラー
Score 8.0/10.0
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