キノコホテル『マリアンヌの密会』感想&レビュー【歌謡+モダンなグルーヴ=謎の中毒性】 | とかげ日記

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●歌謡+モダンなグルーヴ=謎の中毒性

2007年結成、女性四人組バンド"キノコホテル"の8thアルバム。8年間メンバーを務めたベーシストのジュリエッタ霧島にとっては実質最後のアルバムであり、昨年加入したナターシャ浦安(ドラムス)にとっては初めてとなるアルバムであることがアナウンスされている。

昭和歌謡を思わせる"歌”を聴かせるバンドだとは思うのだが、僕の個人的な受け止め方としては、歌にも力があるが、それ以上に演奏で魅せるバンドだと思う。その証拠にインスト曲の#1「海へ…」#10「麗しの醜聞」もボーカル無しで十分魅力的だ。

ガレージロックを思わせる演奏に勢いがあり、タイトさもあってめちゃくちゃカッコいい。そして、音程がグネグネ動くベースが脳の深部をマッサージするようで気持ち良い。また、サイケなエレピはドアーズのように心の深奥に触れてくる。

ガールズバンドと形容するのが憚(はばか)れるような大人の妖艶さがあるキノコホテル。彼女たちの演奏には昭和的な湿気を感じさせる匂いがあり、近未来のSFが匂いだつ"うみのて"とは、匂いの豊かさという点で双璧をなすバンドだと思う。

2007年に結成したキノコホテル。同じく2007年に結成したきのこ帝国よりも先に売れた。村上龍と角川春樹を併せたような名前だと言われた村上春樹のように、きのこ帝国は界隈でブレイクする前、キノコホテルとゆらゆら帝国を併せたような名前だと一部で言われていた。キノコホテルときのこ帝国は音楽性も知性のあり方も違うが、どちらも素晴らしいバンドであり、双方の活躍を僕は願っている。(できれば、きのこ帝国には活動再開してほしい。)

また、このバンドの魅力を伝える上では、マリアンヌ東雲のカリスマ性も触れておかなければいけないのだろう。キノコホテルは、メンバー四人がキノコヘアーのルックスで目を引く、コンセプチュアルなバンドなのだが、支配人のマリアンヌはそのコンセプトを自由に操り、また牽引する役割を担っている。

マリアンヌ東雲の声質と歌唱には椎名林檎との共通点がある。しかし、どちらも無二のものだ。マリアンヌさんほど、こんなにムーディーでロックンロールな歌を歌える人はいない。

また、マリアンヌさんは歌詞にも個性がある。

例えば…

私の毎日に「いいね」はいらない いいかどうかは自分で決めるから
(#7「わがままトリッパー」)

このラインがグッときた。フロントウーマンのマリアンヌさんの自我の強さとカリスマ性があらわになった歌詞だ。

コロナ禍による"不安"の時代には、彼女のようなカリスマによる強度のある表現が求められると思う。これからも2020年代の音楽シーンを盛り上げていってほしい。

Score 8.0/10.0



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平成のベストアルバム 30位~21位(邦楽)
平成のベストアルバム 20位~11位(邦楽)
平成のベストアルバム 10位~1位(邦楽)

【2010年代ベスト】
2010年代ベストアルバム(邦楽)30位→21位
2010年代ベストアルバム(邦楽)20位→11位
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【年間ベスト】
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