マカロニえんぴつ『愛を知らずに魔法は使えない』EP感想&レビュー【生と愛をポップに歌う】 | とかげ日記

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●生と愛を正面からポップに鳴らす

「ヤングアダルト」と「ブルーベリー・ナイツ」という曲でマカロニえんぴつの音楽が好きになった僕。果たして、新譜でこれらの曲を超える曲が出てくるかが僕にとっての本作の聴きどころの一つだった。





結論からいうと、「恋人ごっこ」「レモンパイ」も含めたマカロニえんぴつ4強の曲を超える曲は個人的には無かった。

4強の曲はどれも天から降ってきたような自然なグッドメロディが特徴で、90年代のJ-POPの名曲とも引けを取らないスタンダード感と素晴らしさがある。しかし、本EP『愛を知らずに魔法は使えない』に収められた曲は力技でメロディを作っている感があり、メロディのポップ度と強さという点では4強には敵わないと思う。

ただ、本作の曲が音楽的に豊かな曲であることは分かる。本作を聴き、使われている音楽的語彙の幅広さを感じずにはいられない。僕はその音楽への愛に深く敬礼すると共に、彼らの曲を何度も聴かずにはいられない。

フロントマンのはっとりさんではなく、鍵盤の長谷川さんが作曲した#5「ルート16」という曲では、モータウン調の16ビートに挑戦していてオシャレで優しい良曲に仕上げている。一方で、#3「溶けない」ではプログレ的な曲展開をしてリスナーを驚かせる。#4「カーペット夜想曲」の低音のリフはクィーンの"Another One Bites the Dust"を僕に連想させた。この振れ幅もマカロニえんぴつの魅力だ。

#1「生きるをする」という曲名の"生きる"という言葉に何の形容詞もついていないのは、彼らが"生きる"ことを限定も形容も装飾もせずにまっすぐに向き合っていることの象徴だ。現在の不安の時代において、これほど生きたいというバイブスをダイレクトに鳴らせるミュージシャンは稀だと思う。だから、僕はマカえんが好きだ。

愛することと生きることをまっすぐ歌い、ビートルズ、オアシス、ウィーザー、ユニコーンの系譜にある輪郭の生き生きとしたポップネスを鳴らす彼ら。 「生きるをする」とは、僕が僕を愛し抜くことだと歌い、#6「mother」では「愛を知らずに魔法は使えない」だとも歌い、てらいもなく自他への愛を正面から歌うマカロニえんぴつ。自分への愛を歌ったことは革新的で、生きたさと死にたさの境目にあるリスナーに刺さるに違いない。生きるためには、自分を愛し抜く強さを持つべきというのは正論だ。

マカロニえんぴつの音楽のコード進行は、全盛期のミスチルに似ているという話をある方がしていた。僕はコード進行に詳しくなく(コード感に鋭敏なリスナーになりたい人生だった)、この話は正しいのかは分からないのだけど、ミスチルに似た音楽のフィーリングは僕も感じるところ。恋を歌うヒゲダンが今の時代のスピッツならば、エモーショナルなマカえんは今の時代のミスチルだと言えるのかもしれない。  

TVアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 』のオープニング曲(#1「生きるをする」)とエンディング曲(#6「mother」)に選ばれた彼ら。彼らがデビューしてから8年経ったが、音楽と生と愛を巡る彼らの冒険は終わりそうもない。メジャーシーンの大海原で舵を取る彼らに幸運がありますように。

Score 8.2/10.0

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