Awesome City Club『Grow apart』感想&レビュー【器用貧乏に聴こえる】 | とかげ日記

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●器用貧乏に聴こえる

メッセージよりはイメージの連鎖を大事にしたような歌詞。そこで伝えられるイメージとは、シティ・ポップやシンセポップのオシャレなイメージ。しかし、そのイメージに核となる中軸は感じられない。めまぐるしくイメージが移り変わり、ただ単にフワフワしているポップスに聴こえる。ceroは同じシティ・ポップでもアルバムごとに表現したいテーマがあり、都市の光景を通して人間の在り方を描いていた。

「器用に生きる術は 日に日について」(#5「バイタルサイン」)という歌詞があるが、僕にはAwesome City Clubの音楽は器用貧乏に聴こえる。演奏技術は巧みだが、表現している内容は薄っぺらい。僕は問いかけがある表現が好きだが、彼らの音楽には問いかけはない。歌詞の言葉に言葉以上の重みを感じられない軽薄なポップスだ。流し聴きするには、軽薄ゆえの楽しさがあるだろうが、じっくりと腰を据えて聴く音楽ではない。

僕には彼らの音楽にポップさやキャッチーさを感じられない。それは、僕のリスニング能力が彼らの音楽に適応していないからかもしれない。彼らの音楽を聴いてポップでキャッチーと思う人もいるだろう。しかし、僕は彼らの曲を何回聴いても、そのメロディーを覚えられない。セカオワの曲は一度聴いただけで覚えられるというのに。(本作収録曲では「Black and Blue」だけは良いメロディだと思ったが、何度も聴こうと思うような華や中毒性はサウンドに無かった。)

所属レコード会社はエイベックスだが、僕がエイベックスに対して抱いている"軽薄な音楽"というイメージに彼らの音楽は沿っている。(ただ、中村一義もエイベックスにいたことがあるし、軽薄な音楽ばかりではないけれども。)軽薄さが産む気持ち良さだけではなく、聴き応えや深みがもっと欲しい。ただ、何も考えずに聴く分には、オーソドックスの域を出ないシティ・ポップの音楽的な意匠に魅了される時もあるかもしれない。

Score 5.7/10.0

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